2019年04月14日~06月02日まで、宇都宮美術館で開催されたグラフィックデザイナー勝井三雄さんの作品展、「視覚の共振」を観に行きました。

ポスター、書籍、雑誌、VI/CIなど、1000点を越えるデザイン制作物が展示されており、グラフィックデザインのシャワーをあびているような体験ができました。

写真と共に展覧会の雰囲気をご紹介します。

Contents

展示を観に行った動機

日本を代表するグラフィックデザイナーである勝井三雄さん。

美術予備校に通っていたときに先生に教えてもらい、その美しい色使いや緊張感のあるタイポグラフィ・デザインにとても衝撃を受けました。

勝井さんは美術教育にもとても熱心で、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科(視デ)で長年教授を務めていました。

私も受験生時代、勝井さんの教えを受けたい思いから視デを目指したのですが力及ばず不合格に…‥

大学卒業後、デザイナーとして働きはじめてからも勝井さんのグラフィックデザインが好きで製作の時の資料として何度も見ていました。

そんな勝井さんが美術館で個展をするとなれば行かないわけには行きません。

会場となる宇都宮美術館は今回初めて訪問したのですが、こちらの美術館のVI・CI設計を勝井さんが手がけているそうです。

また、展示のアートディレクションとデザインを勝井さんの事務所出身で大活躍されているグラフィックデザイナー・中野豪雄さんが手がけられています。

私は中野さんの、インフォグラフィックスや情報を積層化したようなグラフィックデザインもとても好きなので、展示ディレクションを見られるのもとても楽しみでした。

展示の内容

会場は撮影オーケーでしたので展示の様子を写真でご紹介します。

1.宇都宮美術館

当日は快晴

宇都宮美術館はJR宇都宮駅からバスで25分。「うつのみや文化の森」という広い公園の中にあります。

当日は快晴でとても気持ち良かったです。

入り口
蛍光色の告知ポスターが目を引きます
中庭にある常設作品

2.通路

メインビジュアル

入り口から展示室に至る30mの通路に、勝井さんとデザインの歴史にまつわる年表が展示されています。

勝井三雄 デザインのあゆみ
ものすごい情報量の年表が並びます
Neue Grafik

年表の反対側にはデザイン史における重要な書籍が。

1964年の東京オリンピックのパンフレット。これはレア!

3.中央ホール

中央ホール

中央のホールには色のスペクトルを連想させる七色の布が展示されていました。

周囲には立体物が展示されている
ISSEY MIYAKEのPLEATS PLEASEとのコラボレーション作品
光を透過して本物の虹のように見えます

4.展示室その1:「色光の部屋」

2つの展示室を使って展示がおこなわれていました。

展示室の呼称は、展覧会ディレクターである中野豪雄さんの以下のツイートから引用させていただきました。

こちらの展示室には膨大な数のポスターが並んでいました。

グラデーションが美しい
様々な色に圧倒されます
CGを使った初期時代の作品
有機的なグラデーション作品
手前はPLEATS PLEASEのポスター
色とりどりの錯視作品
印刷物なのに絵が動いている様に見えます

5.展示室その2:「情報の部屋」

もう片方の「情報の部屋」と呼ばれる展示室では、勝井さんが手がけた書籍やロゴデザイン、インフォグラフィックス作品など膨大な点数が展示されていました。

図画工作の教科書。動物のグラフィックがかわいいですね
「日本事典」のような事典、辞典も多く手がけられています
展示のレイアウトもとても凝っています
色と形の習作
「日本のしるし」
家紋の様なマークを使った表紙デザインがとても素敵です
 アナログ時代のデザイン原稿である版下指定紙も!
このようなドットのグラフィックも手書きで作られています….!
このイメージを作るのにどのくらいの時間がかかるのでしょうか
雑誌「デザイン」
「原題の理論」
 フォント会社「モリサワ」の冊子「101」
様々なポスターも
とても素敵なデザインです
広告雑誌「ブレーン」の表紙デザイン
様々なイベントポスター
「VISUAL DESIGN」グラフィックデザインの教科書的な本です
こちらも教科書
写真を用いた表現手法
人の顔を様々なアングルから撮影し、組み合わせた研究
「ニューヨークの人々」ポスター
料理の本
「林光」
「トランソニック」
ものすごい仕事量です
奈良原一高さんの写真集「IKKO」

勝井さんは写真集のブックデザインも数多く手がけられていました。

奈良原一高さんの有名な写真集「空気遠近法」。ページが蛇腹になっています
カレンダーのデザイン
様々な図像をコラージュしています
「音楽現代」
カレンダー
雑誌「みづえ」の表紙デザイン
横須賀功光さんの写真集「光と鬼」など、名作写真集が並ぶ
奈良原一高「太陽の肖像」
川田喜久治「世界劇場 The Globe Theater」。私家版の写真集です
野田弘志さんの画集「HIROSHI NODA:MASTER WORKS」
左上は今回の展示メインビジュアルのイメージソースとなったグラフィックでしょうか
水野克比古さんの写真集「庭園の京都―日本の美」
CI/VIコーナー

武蔵野美術大学、宇都宮美術館、花の万博など、様々な企業・イベントのロゴデザインやCI/VI計画を手がけられています。

宇都宮美術館のVIデザイン展開

ロゴマークのデザインと紙袋、レターセットなどの有機的な図形が響き合っていてとてもカッコいいです。

「武蔵野美術大学」ロゴデザイン。下部にはカラーパレットも記載されています
「工学院大学」のロゴデザイン
「みんぱく」
「東京造形大学」のシンボルマーク。黄金比の螺旋を元にデザインされているようです
「文部科学省」ロゴマーク
インフォグラフィックス
雑誌などに掲載されたインフォグラフィックス
「交感スルデザイン」
「DICカラーガイド」

印刷に携わるデザイナーは必ず持っているであろう「DICカラーガイド」のデザインも勝井三雄さんだったとは!今回の展示で初めて知りました。

「トリミング|スケール」ポスター
「TAKEO PAPER SHOW 2001:白い紙」ポスター
講談社「現代百科事典」のデザインシステム
書体や矢印、アイソタイプ(ピクトグラム的な視覚言語)の指示まで
様々なマップ、グラフのパターン
カラーシステム
手前の台に百科事典の実物が置かれていました
ぶ厚い!
実際の百科事典のレイアウト
表のデザインまで美しい
「Energy」
地図のデザインも美しいです
雑誌「CAST」
「体育科教育」表紙デザイン

こちらの冊子は毎回異なるテーマでインフォグラフィックスを作成し、表紙デザインに使用しています。

情報を視覚化したものですが、バリエーションが豊富でインパクトも強い!
身体の柔軟性についてのグラフィック。かわいさもあります
手前のカラフルな本は草間彌生さんの作品集
「SONY」のカレンダー。シンプルなタイポグラフィで企業のテイストに合っています
「ゆらぎとゆらぎてん」ポスター
カラーバリエーション
蛇腹の本
土をテーマにした本のコーナー
こちらは水をテーマにした本のコーナー
巨大な蛇腹の本です
レイヤーが複雑に入り組んだ誌面デザイン
雑誌「婦人公論」表紙デザイン。このような仕事も!
雑誌「奥様手帖」表紙デザイン
色の錯視効果を感じるグラフィック作品
よく見ると分かるのですが、手描きの作品です!
こちらも手描き
これも手描き
「TOKYO INTERNATIONAL TRADE FAIR」第12回のポスター
「国際タイプフェイスコンテスト モリサワ賞 入賞作品展」ポスター

まとめ

ものすごい量の色・情報・グラフィックをシャワーの様に浴びられる展覧会でした。

基本的には印刷物の作品が多いのですが、これだけの量の作品が集まるとこちらが近づいて見なくてもグラフィックが呼びかけてくるようなインタラクション的な効果も感じます。

勝井三雄さんが生み出したグラフィックデザインと鑑賞者が共振・共鳴できるような素晴らしい展覧会でした。

展覧会図録

今回の展覧会のカタログはこちら。展覧会のアートディレクションを手がけた中野豪雄さんによるデザイン。

解説もしっかり入っていて、勝井三雄さんの作品集としても素晴らしい内容の本になっています。

視覚の共振


宇都宮美術館のレストランについて

お昼の時間帯に着いてたので展示を観る前に美術館内のレストラン「ジョワ・デ・サンス」でランチをとりました。

光の入る開放的なレストラン
木を使った周囲の環境に調和するインテリアデザイン

カレーセットを注文しました。

前菜

前菜のサラダ、冷製ポタージュスープ、洋風のチヂミ。これほど立派な前菜が出てくるとは思わなかったので驚きました。

お店の方が丁寧に料理の説明をしてくださり、接客もとても丁寧です。

洋風のチヂミがこれまで食べたことの無い食感で印象に残りました。

カレー&ライス

カレーも野菜ベースでサッパリして美味しかったです。

食後のコーヒーもいただいて、ゆっくりできました。

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