“無料でポートフォリオサイトに掲載してあげるよ”|駆け出しデザイナーの時に防げなかった搾取の記録

Freelance

独立して1〜2年目の頃のエピソードです。
知人の紹介で、ある会社の営業職・Tさんと知り合いました。当時、Tさんの勤め先からは何度か定期的にお仕事をいただいていました。
ある日、Tさんからこんな提案をされたのです。

「会社とは別に、副業でマッチングサイトを立ち上げようと思っています。デザイナーのポートフォリオを公開して、クライアントと繋ぐサイトです。あなたも掲載しませんか?」

当時はクラウドソーシングが浸透する前。営業が得意ではなかった私は、お世話になっている縁もあり、引き受けることにしました。

「先行投資」という言葉の罠

すると、Tさんはこう続けました。

「掲載料は無料ですが、クライアントに実力を示すため、『士業(弁護士など)』『建設業』『飲食業』の3業種で、ロゴと名刺の作例を作ってもらえませんか? デザイン料は出せませんが、サイトに掲載すれば依頼が来るはず。先行投資と考えてください」

若かった私は、その言葉を素直に受け取り、数日かけて3社分のロゴと名刺を制作して送りました。今思えば、企業のアイデンティティであるロゴを3件分も無償で作るなんて、本来なら相当なデザイン費が発生する案件です。それを「先行投資」という言葉で飲み込んでしまいました。

音信不通とサイトの消滅

数ヶ月後、サイトが公開されました。実際に私の作例も掲載されていましたが、数ヶ月待っても仕事の依頼が来ることはありませんでした。Tさんは「軌道に乗ったら今の会社を辞めてフルコミットする」と言っていましたが、結局そのまま会社勤めを続けていたようです。

その後、別の案件でTさんと意思疎通のトラブルがあり、それを機に関係は切れてしまいました。数年後、ふと思い出して当時のURLをクリックしてみましたが、サイトは跡形もなく消滅していました。

無償の搾取は、良い関係を生まない

この経験から学んだことは、「無償で搾取しようとする相手との関係は、結局長く続かない」ということです。

本業の片手間でマッチングサイトを運営するのは非常に困難ですし、反応がなければサイトを閉じる判断も理解はできます。ですが、作例を提供させたデザイナーに対し、閉鎖時の一言すら無いのは、パートナーとしての敬意に欠けていたと言わざるを得ません。

最近は大手サービスが主流なので、全く同じケースは少ないかもしれません。しかし、形を変えて新人デザイナーの技術を無償で利用しようとする話は、今もどこかに潜んでいるはずです。

真面目に考えすぎて「期待に応えなきゃ」と自分を追い込んでしまうこともあるかもしれません。でも、自分の技術を安売りせず、時には「それはおかしいな」と気楽に受け流す勇気も必要です。

経験の浅いフリーランスの方が、私と同じような遠回りをしないための参考になれば嬉しいです。

  • 「先行投資」という言葉での無償依頼には要注意
  • 制作費を払わない相手は、デザイナーの技術を軽視している可能性がある
  • 自分のクリエイティブを守ることは、長く仕事を続けるための第一歩

このエピソードは苦い思い出ですが、今の自分を作る大切な教訓になっています。もっと肩の力を抜いて、自分を大切にしながら活動していきましょう。

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