舞台『成瀬は天下を取りにいく』レポート|初めての演劇鑑賞で圧倒された空間演出と、観劇後に大津へ旅したくなった理由

Book

こんにちは。

本や本屋さんが大好きな私にとって、ずっと心に残っていた小説があります。それが、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』

成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈

主人公・成瀬あかりのどこまでも真っ直ぐで我が道を突き進む姿に、元気をもらった方も多いのではないでしょうか。

そんな大好きな作品が舞台化されるということで、先日、意を決して池袋のサンシャイン劇場へ足を運んできました。

舞台|成瀬は天下を取りにいく【公式サイト】

ポスター

実を言うと、私はこれまでの人生で「演劇作品」を観たことがなく、今回が記念すべき人生初の観劇。

サンシャイン劇場に入るまでは「どんな雰囲気なんだろう」と少し緊張していたのですが、一歩足を踏み入れた瞬間、その不安は一気に吹き飛び、目の前に広がる世界に圧倒されてしまいました。

サンシャイン劇場入口

今回は、グラフィックデザイナーとしての視点も交えながら、初めての舞台鑑賞で震えた「空間演出の凄さ」や、胸を打たれた人間ドラマの見どころについて、忘れないうちにレポートとして残しておきたいと思います。

読み終わる頃には、きっとあなたも滋賀県・大津へ旅したくなっているはずです。

入ってすぐの撮影スポット

AI時代だからこそ響く、手仕事の「舞台美術」が持つ芸術の力

劇場に入って、まず何よりも先に目を奪われたのが舞台セットでした。

そこには、西武大津店や客船ミシガン号、そして成瀬がアルバイトをしているスーパー(フレンドマート)など、原作小説でとても印象深かったあの場所たちが、すべて精巧な「模型」として再現されていたのです。

開演前に撮影ができた舞台セット

ただの背景としてのセットではなく、それ自体が独立したひとつの「半立体の立体造形作品」のようなクオリティ。その職人技とも言える美しさに、デザイナーとしての視点が刺激され、開演前からじっと見入ってしまいました。

さらに感動したのが、背景に大きく映し出された金沢駅などのイラストです。

昨今は生成AIによるイラストやデジタル背景に触れる機会がとても増えましたが、この舞台で目にしたのは、人の手によってしっかりと描き込まれた、紛れもない「舞台美術としての芸術」でした。

手仕事だからこそ宿る筆致や、空間の奥行き、そしてそこに込められた制作者の意図。人間の手が生み出す表現の圧倒的な説得力と「絵の力」を、改めて突きつけられた気がします。

また、劇中のBGMがすべてピアノの生演奏だったことにも驚かされました。

録音された音ではなく、その場の役者さんの呼吸や空気感に合わせて都度奏でられる生の音。視覚的な美術の力と、聴覚を優しく満たすピアノの音が融け合う空間は、本当に贅沢な時間でした。

まさに原作越えの再現度!座長・山下美月が魅せた「成瀬あかり」

もちろん、ステージの上で躍動するキャスト陣のパワーも凄まじいものでした。

中でも主役の成瀬あかりを演じた山下美月さんは、まるで小説からそのまま飛び出してきたかのような再現度! 芯のある話し方や振る舞いがまさにイメージ通りで、思わず見入ってしまいました。

島崎との友情や、ふと見せる気弱な場面の演じ分けも秀逸で、山下さんがいかに深く役に向き合ってきたかがしっかりと伝わってきます。

パンフレットには「人気の小説だからプレッシャーもあった」という旨のコメントがありましたが、本番ではその重圧を見事にエネルギーに変え、圧倒的な演技を披露してくれました。

終演後のカーテンコールで何度も観客に頭を下げたり、“成瀬ポーズ”を決めてくれたりする姿も実に爽やか。座長として最高の仕事ぶりでした!

成瀬あかり三部作の感想 👉️ 小説感想|シリーズ完結記念!成瀬あかり3部作を振り返る

主役だけじゃない。不器用な脇役たちが光る、胸を打つ人間ドラマ

また、脇を固める藤野涼子(島崎みゆき役)やしずちゃん(呉間言実役 ※南海キャンディーズ)の演技も圧倒的な迫力と存在感があり、物語の世界観をグッと引き締めていました。

そんな魅力的なキャラクターばかりの本作ですが、私が今回、一番心にグッときたのはある「脇役」のシーンです。

それは、大津観光大使として成瀬の相方となる、青山美郷演じる篠原かれんの葛藤と決意の場面。

親の敷いたレールや周囲の想いを振り切り、初めて自分の意志で「これからの人生を歩んでいこう」と決意する姿に、胸が熱くなりました。

天才肌の成瀬の影で、泥臭く悩み、不器用ながらも一歩を踏み出す彼女のようなキャラクターが光る瞬間が、私はとても好きです。完璧ではない人間が葛藤する姿にこそ、リアルな人間ドラマとしての美しさを感じます。

観劇後の余韻を深める、大満足のパンフレット

興奮冷めやらぬまま、劇場でパンフレットも購入しました。

このパンフレットがまた素晴らしく、役者さんたちのインタビューがたっぷりと掲載されていて、非常に読み応えのあるお得な一冊でした。

パンフレットは2,000円

なかでも、成瀬にほのかな恋心を抱く西浦航一郎を演じたISSEIさんのインタビューが印象的。

「女性慣れしていない男子の役を演じるのが難しかった」という趣旨の役づくりへの苦悩が語られていました。2階席だったのではっきりとは見えなかったのですが、パンフレットを見るとISSEIさんはものすごくイケメンで「たしかに、このビジュなら女性慣れしていない男子の役は難しいだろうなぁ」と妙に納得。

舞台を観終わった後、こうしてパンフレットの文字を追いながら答え合わせをする時間もまた、観劇という体験の贅沢な余韻ですね。

まとめ:そして舞台の街、滋賀・大津へ

初めての演劇鑑賞は、私にとって新しい表現の世界を知る素晴らしい勉強の機会となりました。普段、2次元のグラフィックデザインを扱っているからこそ、3次元の空間演出、光、生演奏、そして人間の肉体を使った表現のエネルギーに、たくさんの刺激をもらいました。

そして何より、この劇を観終えた今、成瀬たちの愛した舞台——滋賀県大津市へ旅行してみたくて仕方がありません。

作中にも登場した客船ミシガン号に乗って、心地いい風を感じながら琵琶湖をぐるりとクルーズしたり、本場の美味しい近江牛グルメを堪能したり……。そんな「聖地巡礼」の旅を妄想するだけで、今からワクワクが止まりません。

琵琶湖大橋

近いうちに、デジタルデトックスを兼ねて大津行きの切符を手配してしまおうか、と本気で考えているところです。

みなさんもぜひ、機会があればこの素晴らしい舞台の世界、そして成瀬のいる大津の空気に触れてみてくださいね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました