OCHABI CE:DESIGN WEEK レポート:「守る」から「プラス」へ変える。グラフィックデザイナーが考え直すリジェネラティブな視点

Diary

8月22日、まだまだ厳しい残暑が続く中、OCHABIで開催された「CE:DESIGN WEEK」のカンファレンス(14:00〜17:00)に参加してきました。

今回のテーマは「過疎化」と、デザインを融合させた「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」です。

普段グラフィックデザインの仕事をしていて、一日中Macの画面と睨めっこしていると、ふと「自分の作っているものは、消費されて終わる『作って捨てる』サイクル(リニアエコノミー)に加担しているのではないか」とモヤモヤすることがあります。

マイナスをゼロにとどめる「サステイナブル(守る)」から、一歩進んで、デザインの力で今よりずっと良くする「リジェネラティブ(プラスに変える・再生する)」へ。

そんな新しい価値観のヒントを探しに、頭を切り替えるつもりでお話を伺ってきました。

カンファレンスを通して、いちデザイナーとして深く考えさせられた3つの気づきを、備忘録として残しておきます。

廃材を利用して作られたチェア

気づき1.「過疎化」は自然現象ではなく、作られた構造だった

今回、島根県江津市などで古くから過疎問題に向き合い、空き家再生やローカルでのものづくりを実践されているGO KENSUKIMONOの平下さんのお話などを伺う中で、個人的に一番ハッとした瞬間がありました。

それは、「過疎化は単なる自然減少ではなく、国として工業化を進めたために、町の人が郊外に働きに出てしまった」という歴史的背景です。

私たちは「若者が都会に出ていってしまった」と結果だけで捉えがちですが、実はこれまでの社会システムや「効率化」を求めた経済構造そのものが生み出したものなのですよね。

グラフィックデザインの世界も同じで、効率よく大量に作り、大量に消費する仕組みの上に成り立っている部分があります。

「つくる責任」という言葉がありますが、ものづくりの根底にある社会構造から目を背けてはいけないのだと、背筋が伸びる思いでした。

また、講義の中で解説された「バタフライダイアグラム(資源をどう循環させるかの図)」も非常に興味深く、ただリサイクルするだけでなく、最も価値の高いまま循環させる仕組みづくりが、これからのデザインには求められているのだと痛感しました。

バタフライダイアグラム:イギリスのエレン・マッカーサー財団が提唱した、サーキュラーエコノミーの根幹をなす概念図のこと。ヒトや技術、自然、産業などあらゆるモノの、寿命に至るまでのサイクルを技術的サイクルと生物的サイクルの2種類で表現している。

引用元)用語集 | 電通総研

ネーム立て

気づき2. 偉そうなことを言う前に、まずは「足を運ぶ」こと

地方創生や過疎化対策といった言葉は、今やメディアで毎日のように耳にします。しかし、今回のカンファレンスで現場のリアルな声を聞き、自分の中にある種の恥ずかしさを覚えました。

特に当日のメモにも残した「アイデアを出す人は来るけれど、実際に作れる人がいない」という言葉。ホワイトカラー(企画者)ばかりが集まり、ブルーカラー(職人や技術者)が不足しているという地方のリアルな課題です。

東京の郊外(八王子)でPCの画面に向かいながら、頭の中だけで「地方再生」「エコ」などと偉そうなことを言う前に、まずは実際にその土地へ足を運んでみたい。

「フィールドワークの思想」という言葉もありましたが、現場の空気や手触りを自分の五感で感じることが、すべてのデザインの第一歩なのだと強く感じました。

いつか、江津市のゲストハウスなどにも実際に訪れてみたいです。

江津市で行われている様々な施策を紹介するパネル

気づき3. ガラクタが「癒やし」に変わる? 手触りのあるワークショップ

イベントの後半では、使われなくなった木端(きばた)や端材といった本物の素材を使ったデザインワークショップの紹介もありました。

「これってどう遊ぶの?」という教科書通りの正解がない、発想を自由にする試みです。

私は、用意された木材のユニークな形状と手触りを活かして、「足裏リフレクソロジーの棒」をデザインする提案をしました。

日頃、デジタル環境での作業が中心で、目や肩、全身の疲れが溜まりがちな自分自身が「これ、デスクの下にあったら絶対癒やされるな……」と素直に思えるアイデアだったのですが、なんと会場でもこの提案を取り上げて紹介していただくことができました!

捨てられるはずだった「ガラクタ(=お宝!)」も、視点を変えてデザインの手を加えることで、誰かの疲れを癒やす身近な道具へとリジェネレート(再生)できる。

PCのマウスを握る手を休めて、木材という自然の素材の可能性に思考を巡らせる時間は、良いデジタルデトックスにもなりました。

ここから、好きな素材を選んでデザインを提案するワークショップ

終わりに:小さな「プラス」をデザインに落とし込む

「リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ」。 言葉にすると壮大で、個人の力ではどうにもならないテーマに聞こえるかもしれません。

でも、私たち一人ひとりのクリエイターが「この素材はどこから来て、どう使われ、どこへ還るのか」を少し想像するだけでも、社会は少しずつプラスの方向(リジェネラティブ)へ変わっていくのだと思います。

完璧を目指して息切れするのではなく、まずは自分の足元から。身近なものづくりや日々の生活の中で、自分なりの「リジェネラティブ」を探求していきたいと思える、とても有意義な一日でした。

会場の写真

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