先日のInDesignワークショップで講師をしていた際、受講生の方からこんなSOSをいただきました。
「作成中のファイルが右綴じになってしまって、左綴じに直せないんです……」
一見すると「ドキュメント設定から綴じ方向を変えれば解決」と思えるトラブルですが、画面を見せてもらうと確かに設定変更の選択肢すら見当たりません。
試行錯誤の末に原因が判明したのですが、「InDesignの言語版の違い」が引き起こしたなかなか根深いトラブルでした。今回はその原因と、そこから学んだ教訓をシェアします。
原因は「英語版」のUIと「日本語版」での編集
まず、その受講生がワークショップで使っていたノートPCの環境はInDesign 英語版でした。
英語版のInDesignは、基本的に左開き(左綴じ)の文化圏向けに作られているため、ドキュメント設定に「右綴じ/左綴じ」を切り替えるオプション(Bindingの設定)がそもそも表示されません。
では、なぜ英語版を使っているのに「右綴じ」になってしまったのでしょうか? 詳しく経緯を聞いてみると、データが以下のような旅をしていました。
- ノートPC(英語版)で新規ファイルを作成・作業
- 自宅のデスクトップPC(日本語版)でデータを開き、少し編集して保存
- 再びノートPC(英語版)でファイルを開く
日本語版InDesignには、和書や縦書きに対応するため「右綴じ/左綴じ」の設定機能が存在します。
どうやら自宅の日本語版環境で開いた際、アプリケーションのデフォルト設定や環境の違いによって、データが自動的に「右綴じ」に変換・保持されて保存されてしまったようです。
なぜ英語版でドキュメントを直せなくなったのか?
このトラブルの恐ろしいところは、「一度日本語版で右綴じに保存されたデータを英語版で開くと、修正する手段が消える」という点にあります。
- 日本語版:右綴じ・左綴じの概念があり、UIで自由に切り替え可能。
- 英語版:右綴じの概念がUI上に存在しないため、「右綴じを左綴じに戻すためのスイッチ」画面が表示されない。
つまり、データ内部のパラメータは「右綴じ」に上書きされているにもかかわらず、英語版のUIからはそれを操作する画面が存在しないため、詰んでしまったというわけです。
言語をまたぐデータ運用はトラブルの元
今回の件を通して、改めて「同一ソフトであっても言語版をまたいだデータのやり取りはリスクが高い」ことを実感しました。
OSやアプリケーションのバージョンを揃えることは普段から意識しやすいですが、使用している「言語環境(言語パッチや多言語版)」の違いによる仕様差までは見落としがちです。特に多言語で作業するクリエイターや、チームで異なる言語環境のメンバーがいる場合は注意が必要です。
環境を統一するか、あるいはスクリプト等を使って無理やりパラメータを書き換えるなどの回避策が必要になります。
「なんか設定がおかしいな?」と感じたら、単なる操作ミスだけでなく使用している環境や言語の違いを疑ってみると、隠れた原因が見えてくるかもしれません。


コメント