RPSアーティストブックフェア2021というイベントのオンラインアーティストトークに登壇して、現在制作中の写真集についてお話をさせていただきました。

トークで使用したスライドの内容をこのブログにアーカイブしておこうと思います。

以下、スライド内容の転載です。


父が最期の登山で見た景色と、そこに至る過程を視覚化するプロジェクト

◎制作者プロフィール

渡部 周(Shu Watanabe)

職業:グラフィックデザイナー、専門学校講師
RPSでは、InDesignワークショップの講師や、企画展のフライヤーデザインを手がける。
実験的ワークショップアトラスラボ「AKINA BOOKSワークショップ」(講師:アレックス・ボチェット)〈2018年3月〉「過去の事象検証と再構築」(講師:千賀健史)〈2018年11月〉を受講。

◎制作の背景

2017年7月、父が埼玉県秩父郡の両神山で単独登山中の滑落事故によって亡くなった。父は2017年の年明けから肝臓がんの手術で入院しており、退院して数ヶ月後の出来事だった。

◎動機

父を失ったという悲しみと同じくらい、
「病み上がりの身体を押してまで父はなぜ一人で登山に向かったのか?」
という憤りの気持ちが強かった。
父にとって登山とは何だったのか?家族とは何だったのか?を理解したいと考え、本作りを始めた。

©️Shu Watanabe

◎伝えたいこと

大切な人が予期せず亡くなった時、たとえ後からでもその人について知ろうと行動を起こすことで、死別からの「喪失感」をやわらげられるのではないか。

◎視覚化の方針

  1. 父の若い頃からの登山、そして家族との関係性をアーカイブ写真を用いて表現。
  2. 病気〜退院〜最期の登山〜事故、とそれぞれの過程で父が見た世界を視覚化したビジュアルを新規に作成。

上記を複合させ、一冊の本の中でストーリーを展開する。

◎具体的なビジュアル

◆2018年3月のワークショップ参加時に手元にあった素材

父の登山写真

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

家族との写真

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

父の遺品の写真

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

◆ワークショップ期間中に撮影した素材

両神山の滑落事故現場へ行き、足を滑らせて落下するときの視界を再現したイメージを撮影。

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

◆ワークショップ後〜現在にかけて撮影した素材や試み

父の遺した登山メモを頼りに、父が登った山を自分でも登山をした。

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

父が登頂できなかった両神山にも登山をし、山頂からの景色を撮影。

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

登山と対になる出来事として、父の病気(肝臓がん)にまつわるイメージを集める。(レントゲンや病院の写真など)

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

登山や病気の写真を、そのまま使うのではなく、より深く心情を感じられるように演出を加える。

©️Shu Watanabe
©️Shu Watanabe

◆編集について

読者に伝わりやすい構成になるよう、ストーリーラインを図にまとめて、意識しながら編集作業を行った。

©️Shu Watanabe

◎ダミーブックの現状

登山と人生に共通する不安定さやスリル、そこからくる爽快感を体験してもらうように、ページをずらした本文デザインをテスト中。

表紙を含めたブックデザインについても引き続き、試行錯誤を続けている。

ダミーブックの変遷|photo by Natsumi Hisamitsu

と、このような内容でお話をしました。ギャラリーのfacebookに配信アーカイブが残っているので(いずれ消えるかもしれませんが)そちらのリンクも貼っておきます。

私は 2:33:33 あたりから20分くらい話していますので興味を持たれた方はご覧下さい。

https://www.facebook.com/Reminders.Photography.Stronghold/videos/3843745502407139

写真集は引き続き制作を続けています!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA