写真集に最適なマットコート紙とは? 印刷会社が提案する定番銘柄を紹介

写真集のデザインを手掛ける際、本文用紙としてマットコート紙を指定することが多いのですが、具体的な銘柄については印刷会社から提案されることがあります。

そこで、提案された印刷品質と価格のバランスが良い代表的な銘柄をご紹介します。

写真集印刷にオススメのマットコート紙の銘柄

ニューVマット / 四六判 110kg相当

三菱製紙のマットコート紙。落ち着いた風合いと優れた印刷適性を持つ代表的な用紙で、ボリューム感のある仕上がりが特徴です。

ユーライト / 四六判 110kg相当

日本製紙の定番銘柄ともいえるA2ランクのマットコート紙。ニューVマットに比べると、わずかに青みがあり、やわらかい印象を与えます。

シルバーダイヤS / 四六判 110kg相当

日本製紙の銘柄で、「西のユーライト」とも呼ばれ、関西以西の印刷会社でよく使われています。ユーライトと似た風合いを持ちます。

b7トラネクスト / 四六判 99kg相当

日本製紙のラフタイプの塗工紙。塗工量が少なく、優しい風合いが特徴です。デザイナーに人気の銘柄で、嵩高(かさだか:同じ重さでも厚みがある)があり、軽くて厚みのある本を作るのに適しています。

写真集よりも、レシピ本や展覧会カタログなど、写真とテキストが組み合わされた本でよく使用されています。

写真集に適した用紙の選び方

塗工量が多い紙は光沢感があり、写真の階調を豊かに表現できます。一方で、文字が多い本では光の反射によって読みづらくなることもあります。

そのため、写真集にはニューVマットやユーライトのような塗工量の多い紙が向いている一方で、b7トラネクストのようなラフタイプの紙は、写真とテキストが混在する本に適しています。

印刷は実際に刷ってみないと仕上がりがわからないことも多く、紙選びは難しいものです。

今回紹介した銘柄が、紙選びの参考になれば幸いです。

【写真集】印刷コストを下げるコツ!相見積もりのメリット・デメリット【デザイン】

現在進めている写真集デザインの案件では、見積もりの手配もデザイナーである私が担当しました。
当初は1社のみに見積もりを依頼していましたが、最終的に3社に相見積もりを取り、最も条件の良い会社に印刷をお願いすることになりました。

その流れをまとめると、以下のようになります。

今回の相見積もりの流れ

  1. A社にざっくりとした装丁仕様で見積もりを依頼
  2. 予算オーバーだったため、仕様を調整し、再度A社に見積もりを依頼
  3. A社での装丁仕様と見積もり金額が固まる
  4. 関係者から「相見積もりを取ってみては?」とアドバイスを受ける
  5. B社・C社にも同じ仕様で見積もりを依頼
  6. 金額やその他の条件を総合的に判断し、C社に決定

相見積もりを取る理由(メリット)

相見積もりを取ることで得られるメリット、または理由は以下のとおりです。

1. 印刷料金の相場を把握できる

ネット印刷ならすぐに価格が分かりますが、一般の印刷会社に依頼する場合は相場が不透明です。相見積もりを取ることで、市場価格を把握しやすくなります。

2. 価格交渉がしやすくなる

他社の見積もり金額を提示することで、値引き交渉がしやすくなる場合があります。

3. 装丁仕様の優先順位が明確になる

相見積もりに限りませんが、予算内に収めるために何度か見積もりを取ることで、「譲れない部分」と「妥協できる部分」が整理されるというメリットがあります。

相見積もりを取る際のデメリットや注意点

1. 印刷会社への配慮が必要

見積もりを出してもらって最終的に依頼しない場合、対応してくれた印刷会社には申し訳ない気持ちになります。
最低限の礼儀として、お願いしない場合も丁寧にお断りの連絡を入れることが大切です。

2. 時間がかかる

印刷会社によりますが、見積もりの回答には3日〜1週間ほどかかることが一般的です。
特に、1社ずつ順番に依頼する場合は、見積もりを取るだけで数週間〜1ヶ月かかることもあるので、スケジュールに余裕を持つ必要があります。

3. 印刷会社ごとに見積書の書式が異なる

見積書のフォーマットは各社で異なるため、比較する際には以下の点に注意が必要です。

  • 納品時の送料が含まれているかどうか
  • 税込み・税抜き金額の表示形式(どちらが大きく表示されているか)

こうした違いをしっかり確認しないと、金額の比較を誤る可能性があります。

問い合わせの方法について

今回は知人の紹介で直接連絡を取った会社もありましたが、印刷会社のWebサイトから問い合わせたケースもいくつかありました。
「Webの問い合わせフォームからの依頼は、返信が遅いのでは?」と少し心配していましたが、どの印刷会社も迅速に対応してくれ、スムーズに見積もりを進めることができました。


写真集印刷の見積もりを取ろうと考えている方の参考になれば幸いです。

写真集デザインの備忘録:印刷会社との打ち合わせで学んだこと

私が現在進めている写真集デザインの案件について、印刷会社の八紘美術さんと打ち合わせをした際に初めて知った内容を、備忘録としてメモしておきます。

1)ホローバック製本にも、さらに開きが良い方法がある

上製本で背と本体を接着しないことで、開きを良くするホローバック製本。
近年は写真集などで「さらに開きを良くしてほしい」というオーダーが増えており、その対応策として花布を省略することで背を柔らかくし、より開きを良くする方法があるそうです。

ただし、本の強度とはトレードオフになるため、その分、耐久性は下がります。
また、開きを良くするとノドの部分にのりの跡がついたり、隣の折の図版が見えてしまうといった現象も起こるそうです。
「開きが良ければ良い」というわけではない、というのは意外な発見でした。

2)見返しは4/6判の130kg相当が適している

当初、見返しの用紙をNTラシャ 4/6判 100kg相当で提案していましたが、前述の開きを良くする製本にする場合、100kg相当では耐久性に不安があるとのこと。
そのため、4/6判 130kg相当程度の厚さにするほうが適しているとアドバイスを受けました。

3)データ入稿から納品までの目安

いくつかの印刷会社にも確認したところ、共通するスケジュール感がありました。
写真集の印刷において、データ入稿から印刷・製本・納品までの期間は、概ね1ヶ月半かかるそうです。
スケジュールを組む際の参考にしてください。


やはり、印刷の専門家である印刷会社の方と話すことで、初めて分かることが多いですね。

【デザイン】活字と最新技術が融合!「市谷の杜 本と活字館」初訪問レポート【博物館】

市ヶ谷にあるDNP(大日本印刷)が運営する博物館「市谷の杜 本と活字館」へ初めて行ってきました。

市谷の杜 本と活字館
https://ichigaya-letterpress.jp/index.html

文字や紙、印刷に興味があるデザイナーさんに非常におすすめの素晴らしい施設でしたので、感想をご紹介します。

市谷の杜 本と活字館

行って良かった点

1. 文字や製本についても知れる点が面白かった

製本器具の実物を見たり、上製本の分解された展示を見ることで、本への知識が深まりました。

製本器具のコーナー

2. 本を読めるコーナーが充実

「デザインのひきだし」のバックナンバーが読めるのは非常に良かったです。興味はあっても手に取る機会が少ないので、貴重な体験でした。

3. 充実の企画展

企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」が、今の自分にとてもタイムリーな展示でした。
紙見本を無料でもらえたり、塗工紙や中質紙といった紙の種類を解説してくれるパネルが充実しており、全紙をそのまま展示するなど、頭で理解していたつもりの知識を体感として学べました。

企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」

4. 最新技術とレトロな雰囲気の融合

液晶パネルやタッチパネルなど、DNPの技術を活かした展示が素晴らしかったです。レトロな印刷文化と最新技術を同時に体験でき、充実感がありました。

タッチパネルで活字の「文選」を体験できるインタラクション

5. リーズナブルな喫茶コーナー

1階にはコーヒーや軽食を販売している喫茶コーナーがありました。コーヒーは160円からとリーズナブルで、飲食スペースも用意されているので、展示の後に一息つけます。

展示を見た後、コーヒーを買って休憩スペースで一息つきました

その他、感じたこと

駅からは少し歩く

市ヶ谷駅から徒歩15分ほどで、坂道もあるので少し歩く印象です。ただ、途中には地域ならではの飲食店が並んでいるので、ランチや軽食を楽しむつもりで訪れるのも良いかもしれません。

学生の団体が多かった

平日は社会科見学的な中高生(?)の団体がいくつか見学していました。学生のうちからこのような展示に触れられるのは羨ましいと感じる一方で、活版印刷などの体験系は学生の列ができていて、一人で訪れた私は少し参加しづらい雰囲気でした。次回は、もっとゆっくり見られるタイミングで訪れたいと思います。


「市谷の杜 本と活字館」で学んだこと

  1. ハードカバーの糸かがり製本
     機械を使う場合、糸を複数本使用して製本する。
  2. 微塗工中質紙の変色リスク
     スマッシュやHSハミングなどの微塗工中質紙は変色の可能性がある。
     → 中質紙は全般的に変色しやすいことが分かりました。
  3. 新宿の「フコクペーパーサロン」
     新宿にある「フコクペーパーサロン」という施設では、様々な紙見本が見られるらしい。
     → 今度訪れてみたいです。
  4. 「デザインのひきだし」50号付録「現代日本の印刷加工大全」がすごい!
     → 本誌より分厚い付録に印刷加工の見本が実物で綴じられており、ぜひ欲しくなりました。

気になった本

館内で見たり、販売されていた本の中で気になったものをまとめておきます。写真をクリックすると購入先に飛びます。

デザインのひきだし50 「現代日本の印刷加工大全」

毎回付録が豪華なデザインのひきだしですが、この号は特にすごかった!ぜひ欲しいです。

各種金銀&濃い墨編 オフセット印刷サンプルBOOK
油性・UVオフセット印刷での各種青金・赤金・銀、その上・下にCMYK印刷、 そこにグロスニス・マットニス・グロスPP・マットPPなどの表面加工テストや 各種濃い墨&マット墨の印刷見本をさまざまな紙に。

金インクや銀インクなどを印刷するとどう見えるか?用紙ごとに実物の印刷見本が収録されており、印刷仕上がりのイメージをつかみやすい!

図書館のための簡単な本の修理

ハンドメイドの本を販売していると、見本にしている本が壊れたり、傷んだりすることが良くあります。直せるなら直したいなぁ、と思う時もあるのでそんな時に役立ちそうな本だと思いました。

その他の館内写真

1F

棚に詰められた活字
活字が組版された状態

こちらのインタラクションが非常に面白かったです!文字や製本にまつわる道具がキューブ状になっており、気になる道具のキューブをディスプレイの横に置くと、その道具についての解説が表示されます。

キューブをセットするとこのように、道具ごとの解説が見られる

キューブも非常に美しいデザインでした。ただ、タッチパネルをタッチするだけでなく、「キューブを持ってセットする」という体験までデザインされていることを感じました。

非常に記憶に残るサービスです。

ピクトグラムや館内サインも活字風のデザイン
出版社ごとの道具の棚
巨大な印刷機
製本グッズのコーナー

こちらのコーナーは個人的に非常に興味を惹かれました!

バインディング器
製本された本
のりと刷毛、バットなど

プロの方が使うグッズを知れる点もいいですね。

上の段にはのりなど。瓶に入っているのはキューブ状ののりです。刷毛もいろいろなサイズを使い分けることがわかります。

金属のバットなども、私は持っていないので欲しくなりました。

こちらの商品が気になったので調べてみました。石塚産業のサクラノールというのりのようで、現在でも普通に買えるみたいです。

石塚産業 サクラノール V-4000L 18kg | 洗浄剤などケミカル製品の開発・販売【株式会社 東洋化学商会】 https://www.tksc.jp/shop/products/detail.php?product_id=385

本文と表紙を合体させる時に使うもののようです。

こちらのタブレット状ののりはホットメルトと呼ばれる種類のものだと思います。

熱で溶ける性質があり、背固めなどに使われます。

糸かがり製本をする機械。初めて見ました!自分はこの機械がやるような作業を手でやっているんだなぁ….。と手製本への感慨も深まります。

糸の送り方の解説。2本の糸で縫っていきます

文字デザインについての展示
古い雑誌など
レストスペースからの景色

2F

企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」

たくさんの書籍用紙が積み上げられています。一枚づつ貰うことができ、最後にまとめて製本してくれるというサービス。これはやるしか無いですね!

天井から幕の様に吊るされている用紙。大きいサイズで見ると柔らかさなどの違いが伝わります。

縦目と横目について
紙の重さについて
中質紙、上質紙、アート紙、紙ごとにまとめて製本された束見本。重さの違いがわかる
サイズについて
A版の全紙。実際に実物を見る機会は多くないので、印象に残りました
紙の種類について

2階には企画展のほか、印刷機の展示や実演、グッズのショップなどがありました。

休憩スペースにある活字のベンチ!
レタープレスキット

活版印刷機は体験もできます。

UV印刷機
リソグラフの印刷機
箔押し機
箔押しの見本
2階にも製本コーナーがありました
印刷DIYグッズ

写真映えもしそうな素敵な場所だったので、次回は一眼レフカメラを持参して再訪したいと思います。

マップと会場情報

市谷の杜 本と活字館

〒162-8001 東京都新宿区市谷加賀町1丁目1−1

ユーライトとシルバーダイヤSの違い|A2マットコート紙の比較

写真集のデザインを進める中で、本文用紙を検討しています。候補として挙がったのは以下の2種類の紙です:

どちらも日本製紙が提供するA2ランクのマットコート紙です。

ユーライトについては以前から知っていましたが、シルバーダイヤSは印刷会社から提案され、今回初めて知りました。

日本製紙の見本帳によると、シルバーダイヤSは関西以西限定の銘柄で、「西のユーライト」と呼ばれていたSライトを進化させたものとのことです。

ユーライトと同様の用途で使えそうな紙だと感じました。

印刷用紙に地域限定の銘柄があることを知り、とても勉強になりました。