京都の街中を使って大規模に行われる写真イベント「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。2017年春に開催されたイベントに初めて行った。

2017年のテーマは「LOVE」。様々な写真家が思い思いの方法で「愛」を表現した作品が並んだ。

とにかくどの展示もクオリティが物凄く高く、京都の歴史ある建物などの空間を上手く活かした展示空間になっていてとても見応えあるものだった。

印象に残った展示を写真とともに紹介する。

「Falling Leaves」吉田亮人|Akihito Yoshida @元・新風館

チケットセンターなどがある「元・新風館」で開催されていた写真展の1つ。

写真家、吉田亮人さんの従兄弟と共に暮していた彼の祖母。年の差がかなり離れている2人。奇妙だが愛情溢れる2人の生活の風景、そして、突如失踪して自ら命を絶ってしまった従兄弟と後を追うようにして他界した祖母との物語を見ることができる。

とても素敵な写真。

従兄弟が最後に家を出て行く日のシーン。彼の存在が消えていくかのように、写真が段々薄くなっている。

元・新風館の風景。奥にはイベントに協賛しているNespressoのマシーンがあり、ベンチなどで飲んで休む事が出来た。

元・新風館では吉田さんの展示以外にも幾つかの展示が開催されていた。

上は沖縄国際写真祭との協賛イベントの作品。少年の目が印象的だった。

こちらは知的障害者施設の方とコラボレーションして作成されたファッションの展示。鉄パイプを展示台にする手法がカッコイイ。

障害を持った人たちが描いた絵をテキスタイルとして作成された服。

スーザン・バーネット|Susan Barnett @元・新風館 (姉小路壁面)

元・新風館の壁面に掲示された作品。「愛」にまつわる文字が書かれたTシャツを着た人々の後ろ姿を写した写真が並ぶ。

「The Eye of Love」ルネ・グローブリ|René Groebli @京都文化博物館 別館 2階

スイスの写真家、ルネ・グローブリが妻であるリタとの新婚旅行の際に撮った写真のシリーズ。

暗闇の中から浮かび上がる肌がモノクロフィルムの粒子によって、とても美しく描写されていて息を飲んだ。

鏡に写るルネ・グローブリさんが良い。妻への愛情がとても感じられる。

「Emmy’s World」ハンネ・ファン・デル・ワウデ|Hanne van der Woude @嶋臺(しまだい)ギャラリー

どの展示もとても力が入っていて素晴らしかったが、私が特に感動したのはこちらのハンネ・ファン・デル・ワウデによる嶋臺(しまだい)ギャラリーでの展示。

オランダ人女性写真家ハンネ・ファン・デル・ワウデによる個性豊かな老夫婦、絵ミーとベン、彼らの兄弟やその周囲の人の姿を捉えたドキュメンタリー。

半透明の用紙にテキストが印刷された垂れ幕。背景に置かれた植物の影が透けてとても美しい。

建物の構造と展示のデザインがマッチしていて光の入り方も完璧。

タイポグラフィも美しい。

愛情溢れるエミーとベンの写真。床には使い古されたシーツや肌着をイメージさせる布が雑然と敷かれていて、鑑賞者自身が写真に写っている寝室に入り込んだかのような錯覚をする。

ベンの兄弟(?)。雰囲気が似ていて気があっている感じだ。

こちらの部屋には床一面に枯れ葉が敷かれていました。枯れ葉を踏みしだきながら写真を鑑賞すると森の中にいるかのような気持ちになってくる。

 

「Love is More」TOILETPAPER Maurizio Cattelan & Pierpaolo Ferrari @ASPHODEL

アート雑誌「TOILETPAPER」を発刊している現代美術作家のマウリツィオ・カテランとファッション写真家のピエールパオロ・フェラーリによる作品。

建物全体が彼らの刺激的なイメージで埋め尽くされている様子は圧巻!

ガムを齧ったようなフォルムのクッション。

天井までビッシリとヴィジュアルが埋め尽くされている。

今回のKYOTOGRAPHIEのメインヴィジュアルにも彼らの作品が使われている。

「マスタークラス −ポートレートの巨匠−」アーノルド・ニューマン|Arnold Newman @二条城 二の丸御殿台所 東南隅櫓

今回の目玉ともいえる、二条城の重要文化財である台所と東南隅櫓を舞台にしたアーノルド・ニューマンの展示。

和風の建築の中にアメリカのポートレートフォトグラフィーが違和感無く展示されていた。

マリリン・モンローやパブロ・ピカソ、ジョン・F・ケネディ等、著名人のポートレートが並ぶ。

壁面用の什器の側面に配置されたキャプションも、主張しすぎること無く、空間に調和していた。

写真点数もとても多く、回顧展と言っても充分なボリューム。

展示だけでなく、重要文化財となっている建築も楽しむ事が出来る。

フォトモンタージュのような実験的な作品も。デザイナーとしてはこのような作風にも惹かれる。

「机上の愛」 荒木経惟|Nobuyoshi Araki @両足院(建仁寺内)

荒木経惟による、机の上のみで撮影された作品。

“The Yokohama Project 1867‐2016” ジャダ・リパ|Giada Ripa @ギャラリー素形

アーティストのジャダ・リパによる、西洋人の視点で捉えた日本の今昔の姿。

見慣れた日本の人や風景でも、西洋の方が撮ると全く違ったように見えることが面白い。

上記以外にも、写真撮影はできなかったのですが、良かった展示はたくさんあった。

「吉田寮」野村幹太|Kanta Nomura @京都大学吉田寮

現存する日本最古の学生寮、京都大学の吉田寮で暮らす学生達の肖像を捉えた作品。実際に寮の中に作品を展示していて、寮の中を歩きながら作品を鑑賞することが出来た。

吉田寮の正門。これを見るだけでも中の雰囲気を想像出来る。

展示だけでなく、建物も見どころ

展示されている写真だけでなく、展示空間となっている建物も見どころだ。

ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)やイサベル・ムニョス(Isabel Muñoz)の展示が行われていた誉田屋源兵衛。京都室町で創業280年を迎える老舗の帯匠だ。

こちらはヤン・カレン(Yan Kallen)の展示が行われていた京都の町家「無名舎」。職人の生活を想起させる台所の趣が素晴らしい。

まとめ:KYOTOGRAPHIEの見どころ

  1. 日本であまり展示を見る機会の無い海外作家も含めて膨大な作家の展示を一同に観る事ができる
  2. 1つ1つの展示が作品点数、展示のクオリティ共に、美術館での個展かと思うくらいに充実している
  3. 展示空間の使い方が斬新かつ大胆
  4. 展示を回ることによって、京都の歴史にも触れる事ができる

写真やアートが好きな人は行けば必ず収穫があるイベントだと感じた。1泊2日だと周りきれなかったので次回はもっと余裕を持って行こうと思う。

公式サイト
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2017 開催情報
http://www.kyotographie.jp/2017portal/outline

 

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