【手製本】私が使う製本用糊ボンド:フエキノリ×木工用ボンドの配合レシピ【のり】

私が手製本で制作しているアーティストブック「THE LAST SUMMIT」について、カバーの接着に使用している糊の配合をご紹介します。

木工用ボンドとフエキノリを混ぜて作るため、製本をする人からは「糊ボンド」と呼ばれることもあります。

50冊以上の製本を経験しており、その中で試行錯誤を繰り返し、現在は安定した配合が完成しました。


使用場所

「糊ボンド」は、以下の場面で使用しています:

  • カバーを板紙に貼る際
  • カバーと本体を接着する際

配合元の糊

以下の糊材を使用し、水と混ぜ合わせます:

木工用ボンド

小学校の図画工作などで使う一般的なものです。

ボンド 木工用 CH18 500g(ボトル) #40117

フエキノリ(でんぷんのり)

ヤマト糊と見た目が似ていますが、ヤマト糊は時間が経つと黄色く変色するため、製本にはフエキノリが適しています。

フエキ でんぷんのり FP10 100g ×5 セット


配合手順

1.フエキノリと水を1:1で混ぜる

フエキノリに少しずつ水を加え、ダマにならないようしっかり混ぜます。

例:フエキノリ40gに対して水40gを使用すると、約3〜5冊分の糊が作れます。

2.混ぜた糊に対して木工用ボンドを10〜20%加える

木工用ボンドを加え、さらに混ぜます。

例:1.で作った80gのフエキノリ+水に対し、木工用ボンドを8g〜16g加えます。

3.糊ボンドが固ければ水を少量ずつ加える

刷毛で塗る際にムラが出ないよう、糊ボンドは少し緩めに調整します。
糊ボンドを刷毛に付け、持ち上げた際に糸状に垂れるくらいが目安です。


製本後に余った糊ボンドはどうするか?

  • 数日内に使用する場合
    密閉容器に入れて保管すれば問題ありません。
  • 長期間使わない場合
    糊ボンドは水が混ざっているため腐敗しやすいので、使い切れない分は廃棄しましょう。

他の部分の糊について

背固めには以下の糊をそのまま使用しています。

フィルムルックス 製本のり ブックグルーミニ 01539 200g


参考図書

今回の糊ボンドの配合は以下の本を参考にアレンジしています。

素材を活かした手製本の教室―革装・布装・和装の作り方から本の直し方まで (HAND BOOKBINDING LESSON)

写真付きで解説があり、製本に使える他の糊の作り方も載っているため、製本に興味がある方にはおすすめです!

    THE LAST SUMMIT |手作り本の製本手順(2024年5月版)

    私のアーティストブック、「THE LAST SUMMIT」の製本手順を、以前本ブログに書いた時から更新したので、2024年版としてメモしておきます。

    かなり特殊な、斜めに折る製本の手順ですが、本作りしている方の参考になればと思います。

    主に本文ページの製本手順なので、カバーはできている前提です。

    I have updated the binding procedures for my artist book, “THE LAST SUMMIT”, since I previously wrote about it on this blog, so I am making a note of them here for the 2024 version.

    These are fairly unique binding procedures that involve folding diagonally, but I hope they will be helpful for anyone making a book.

    These are mainly binding procedures for the main text pages, so it is assumed that the cover is already in place.

    1. センタートンボで折り筋をつける

    折り筋入れを一番はじめにおこないます。折り筋を入れる際は丸鉄筆を使っています。

    丸鉄筆 小

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    丸鉄筆だと、厚めの紙にもしっかりと折り筋を入れることができ、先が丸いことから紙が切れたりすることも無いので使いやすいです。

    2.天地をトンボで切り落とす

    天地のトンボをカッターナイフで切り落とします。

    オルファ 大型カッター エックスハイパー L型 224BS

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    3.折り筋に沿って折る

    1.で入れた折り筋に沿って、ヘラを使って折っていきます。

    4.糸を通す穴を開ける

    千枚通しで穴を開けます。

    SK11 千枚通し ステンレス針 アルミ柄 小 針長:約40mm SGN-5N

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    5.扉と奥付を見返しに糊で接着する

    ここではスティックのりを使っています。

    トンボ鉛筆 スティックのり ピットハイパワー S 5個 HCA-511

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    表/裏の見返しを扉と奥付に接着します。接着した後でこの折にも穴を開けます。

    6.折丁の順番を整える

    順番を間違えないようにデータに通し番号を振って印刷しています。

    7.糸かがり綴じで折丁を縫っていく

    リンクステッチという縫い方で縫っています。

    針はカーブ針が使いやすいのでこれを使っています。絡まった糸をほどく時も使うので4本くらいあると便利です。

    森川製針 カーブ針 2本 [22] CG206

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    糸はこちらのダルマ糸を使用しています。

    横田 ダルマ 家庭糸 手縫い糸 30番手 細口 100m巻 col.白 0115

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    糸には蝋引き用のワックスをつけてから縫います。

    手縫いワックス 25g 手縫い糸用 蝋引きワックス

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    8.台紙を使い、小口をカッターで切り落とす

    私の本は、半折丁ごとに小口を切る必要があるので、この段階で小口をカッターで切ります。

    9.背を糊付けする(背固め)

    MDF板で束を挟み万力で固定。

    背を製本用の強力な糊で接着します。

    SAIFUKU 製本のり 150g(2660-0001)

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    10.カバーを接着する

    カバーは、フエキノリと木工ボンドを水で溶いたオリジナルの糊で接着します。

    その後、MDF版で挟んで1日ほど置いておきます。

    11.完成

    これで完成。

    【登山事故】父が両神山で亡くなった日の出来事|捜索願、警察とのやり取り、家族の行動など

    私の父は2017年の8月に埼玉県秩父の両神山で登山中の滑落事故により亡くなりました。

    その時の私の行動などを、できるだけ事実を客観的に書くことで、身内が登山事故にあった際に起きる出来事などの一例として参考になればと思います。

    ショッキングな内容もありますので、読む時はご注意ください。

    当時、私と両親は別々に暮らしていました。

    8月14日:父が登山にでかけた日

    朝、父が両神山の登山に出発。この日は一人での登山だった。

    夜、下山予定の時間になっても父から母へ連絡なし。夜になっても父が帰ってこない。
    母はなにかあったかと思ったが、雨でも降って帰りが遅くなっているのかと思い、一晩待つ。

    8月15日:遭難から死亡へ。事故の対応

    朝、母から電話があり「父が登山に出かけたきり帰ってこない」との内容。

    昼前、父と母の住む実家の地域に向かい、その地域の警察署で母と合流。

    捜索願を出す

    母が捜索願を出し、両神山近くの小鹿野町の山岳救助隊による捜索が始まる。

    父のものと思われる車が両神山の駐車場で見つかる。
    この車は、身内が運転して持って帰らないといけないため、母は実家に戻り警察と連絡を取りつつ、私が秩父へ向かう。

    車の回収と遺体の発見

    秩父へ向かう途中、登山道から逸れた場所で父と思われる男性が倒れているのが発見されたとの連絡が、秩父の警察署から私に入る。

    倒れていた男性は亡くなっていたとのこと。

    父である可能性が高いため、遺体が運ばれる予定である、秩父の小鹿野警察署へ向かう。
    この時、両神山の駐車場にあった父の車は、警察の方が小鹿野警察署へ運んでくれた。

    警察署での出来事

    夕方、小鹿野警察署に到着。数分後に父と思われる男性の遺体が署内に到着。

    身元確認をする。まず、持ち物、遺体の近くに免許などが散らばっており、警察の方が集めて見せてくれた。
    間違いなく父の免許だった。

    次に遺体の顔写真を確認。

    父であることが確認できたので、警察の方にその旨を伝える。

    葬儀社の手配

    遺体が父であることは確認できたが、警察署にある遺体は基本、遺族が持ち帰ることになる。
    とはいえ、私自身が持って帰ることは難しいため、父の死亡が確認された後、すぐに実家の母に連絡をして火葬をする葬儀社を手配してもらう。

    葬儀社の人に来てもらい、遺体を持ち帰ってもらうのだが、病院ではなく事故で亡くなった人を引き渡す場合、死体検案書という書類が必要になるとのこと。

    死体検案書

    死体検案書は検死や司法解剖をした医師に書いてもらう必要があり、今回の場合は埼玉県小鹿野町の病院の医師だった。

    警察署にいる間に夜遅くなったため、病院には明日行くことに。この日は、遺体を警察署に置いてもらったまま、秩父の近くに宿泊した。

    8月16日:手続きと帰京

    朝、病院へ向かい、死体検案書をもらう。

    小鹿野警察署へ向かうと、ちょうど、東京の葬儀社の方も署に到着していた。
    父の遺体は葬儀社の方が、私は父の車に乗って東京へ戻った。
    翌日には火葬を行うことができた。


    以上が、私の父が山岳遭難、事故で亡くなった際の出来事です。
    家族が遭難、そして亡くなるという出来事だけでも大変でしたが、遺体や車を運ぶことまで考えないといけない、という点もかなりハードでした。

    この様な事故が起こらないことが一番ですが、もし同じ様なことが起きた場合の何らかの参考になればと思います。

    関連書籍

    ドキュメント 単独行遭難 (ヤマケイ文庫) 

    THE LAST SUMMIT 手製本のプロセス改善メモ(2023.04.04)

    5冊製本しています。改善点のメモ

    天地を切る前に斜めのスジ入れする

    折トンボを入れているので、斜め線のスジ入れをしてから天地をカットするようにする。


    外側になる折り(背の文字が見える箇所)だけ、山折側に入れる。

    折って穴開けたら、張り込むページを糊づけ

    張り込みページの糊づけはこのタイミングで。

    小口カットは、鉛筆で点を打ち、目打ちで穴開けてから切る

    穴に引っ掛けるようにしてカッターを入れるとズレにくい。

    カバーの糊づけ

    糊はゆるめにつくる

    硬いほうが接着しやすいと思いがちだが、糊が伸びないと結局ムラになるなど、貼りづらくなる。

    板紙の四辺、外側ほどしっかり糊を塗る

    紙を巻き込んでいるので、板紙よりも糊が浸透しづらい。

    また、貼った時に糊が弱いと剥がれが目立つので、四辺ほどしっかりと糊を塗る。

    準備を完璧にしてから作業に取り掛かる

    作業に関係のないものをしまう。

    動線に何も置かない。

    など、作業の準備を完璧にしてから、糊づけや製本の作業に取り掛かるようにする。作業が長くなるほど集中力が落ちるので不要なものなどが出ているとミスにつながりがち。

    “THE LAST SUMMIT” Shu Watanabe’s Artistbook|渡部周写真集『THE LAST SUMMIT』

    私がこれまで最も意欲的に行ったDIYプロジェクト|写真集「THE LAST SUMMIT」

    これまで最も意欲的に行った DIY プロジェクトについてお聞かせください。

    私がこれまで最も意欲的に行ったDIYプロジェクトは、現在も販売中のこちらのアーティストブックです。

    渡部周 写真集「THE LAST SUMMIT」です。

    この本はプリントアウトをした後、折り、断裁、糸によるかがり綴じ、背の糊付け、表紙の作成と接着、の工程を全て私の手作業でおこなっています。

    限定69部の本ですが、現在もこちらのサイトからご注文いただけます。

    制作風景の動画もありますので、興味を持たれた方はご覧ください。