私がブックデザインをする時に頻繁に見るデザイン参考書5選

私がブックデザインの仕事をする際に良く見るデザインの参考書を5冊、厳選してご紹介します。

1. 印刷用紙サンプルブック

印刷用紙サンプルブック

コート紙、微塗工紙、上質紙、など様々な印刷用紙の印刷サンプル集です。

主要な印刷用紙の現物が綴じられているので「この紙に印刷したらこう見える」ということが一目瞭然です。

用紙を指定する時に手元にあると大変参考になります。

印刷用紙サンプルBOOK 200種類以上の印刷用紙に、同絵柄・文字を刷って1冊に。

2. ブックデザイン365

ブックデザイン365

365冊(以上)の実際に販売されている本を例に使われている紙の仕様がデータとして記載されています。


本屋で販売されているものであれば、この本を参考に実物を見に行くこともできます。

また、様々なデザイン会社が手がけたものが一同に掲載されているので、よく使われる紙の傾向や流行をつかむことができます。

用紙だけでは無く、ニス引きや箔押しなど、印刷加工についてもデータが記載されています。

ブックデザイン365

3. 印刷発注のための紙の資料

印刷発注のための紙の資料

上記2冊に比べると地味な印象ですが、印刷発注に関する基本的な知識が載っています。

デザイナーとしては、この本に載っている内容は最低限把握しておかないと印刷会社や製本会社に失礼な指示を出してしまいそうです。そのくらい、大切な基本が載っています。

私も未だに悩むことの多い「紙取り」についても図版入りで書かれているのでわかりやすいです。

印刷発注のための紙の資料〈2018年版〉

4. デザイン解体新書

デザイン解体新書

この本は本当に良く読んだのでカバーを外した状態の写真となります。

装幀デザインやタイポグラフィで有名なグラフィックデザイナー・工藤強勝氏のデザインメソッドをまとめた本。

ブックデザインだけでなく、文字組みや色の話など、グラフィックデザイン全般のテクニックが紹介されているので、持っていて損の無い一冊と云えます。

ブックデザインとしては、工藤氏が使用するフォントや、実際の本の仕事でどのような紙を使ったか、加工などが詳細に紹介されています。

巻末付録に掲載されている、表紙や帯、カバーの基本的な版下サイズの計算方法が便利で、私もブックデザインの仕事で実際に活用しました。

デザイン解体新書

5. 文字組デザイン講座

文字組デザイン講座

こちらも工藤強勝氏によるデザイン本。より文字組(タイポグラフィ)にフォーカスした内容となっていますが、目次や索引など、ブックデザインで必ず発生する本文以外の付きものについて、デザインの考え方などが紹介されているのでとても役立ちました。

文字組デザイン講座

ブックデザインは実際に印刷してみるまで、紙の風合いやどのように印刷されるか、加工の仕上がりなどがなかなか想像がつきにくい部分があると思うので、今回ご紹介した本はそういった時に手助けをしてくれるものとなります。

Header: JayMantriによるPixabayからの画像

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『コンセプトが伝わるデザインのロジック』デザインの基礎を分かりやすく学べる本

『コンセプトが伝わるデザインのロジック』

こちらの本の編集をお手伝いさせていただきました!

私が講師をしているOCHABIから出版されたグラフィックデザインの基礎をまとめた本です。

表紙
裏表紙

誰に向けての本?

  • これからデザインを学ぼうとする人
  • デザイナー以外の職業の方でデザインを仕事に活かしたいという人
  • 業務でデザイナーとコミュニケーションを取る人(ディレクターや営業など)

上記の様な人に向けて、コンセプトを軸にビジュアルを考え、人に伝える方法を紹介しています!

本の内容

「デザイン」「コンセプト」「レイアウト」「構図」「バランス」「配色(カラーリング)」など、良く耳にするけどデザイナー以外の方には今ひとつ意味がわかりにくい言葉に対して、その意味や、活用されている場面を明確にして紹介しています。

特長

実際に世の中に出たデザインの事例を元に分析をしているので、リアリティがあります。

読むとどうなる?

本書を読むことで、新人デザイナーの方は先輩やクライアントとの打ち合わせやコミュニケーションが円滑になり、効果的にデザインに取り組むことができます。

デザイナー以外、例えばデザイナーに仕事を発注するお仕事の方であれば、デザイナーにより的確に指示を出すことが出来るようになるので、効率UPと、お客さんにとってより魅力的な商品・サービスを提案できるようになります。

なにより、デザインの見方が分かることで、毎日目にする広告やパッケージなど、身の回りの全てを新鮮な視点で見ることができ、ワクワクする日々を過ごす事ができます!

紙版(単行本)、Kindle版、両方の形式で販売されていますので、興味を持たれた方にはぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

コンセプトが伝わるデザインのロジック

コンセプトが伝わるデザインのロジック
ISBN:978-4-8025-1164-3
定価:本体2,000円+税
仕様:B5判変型/160ページ
発売日:2020年06月16日
著者:OCHABI Institute
デザイン:Happy and Happy

私がデザイン業務で「欧文組版」をする際に参考にしている本・Webサイトを紹介!

普段使用している日本語と違い、ルールや作法に馴染みがうすい欧文での組版。

どんなにカッコイイデザインを作っても、英語圏の方が見たらありえないような文字組をしてしまっては、良いデザインとは言えません。

「正しく美しい」欧文組版をするために、私が参考にしている本とWebサイトをご紹介します。

Contents

書籍

Webサイト

書籍

欧文組版: タイポグラフィの基礎とマナー

欧文組版: タイポグラフィの基礎とマナー

新宿にある活版印刷会社「嘉瑞工房」の髙岡昌生さんによる欧文組版の解説書。

書体の選び方、文字間、ワードスペース(単語間)、組版の種類とルール、イタリック体やハイフンなど約物の扱い方まで、「正しく」「美しい」欧文組版の作法について丁寧に分かりやすく書かれています。

全ページ大変役に立つのですが、欧文組版の組見本に赤字を入れて添削しているコーナーが特に勉強になりました。

やりがちなミスや、基本的な文字の設定などについて知ることが出来て業務に役立ちます。

欧文やアルファベットの文字組をする機会がある方は持っておいて損のない一冊です。

〔増補改訂版〕 欧文組版: タイポグラフィの基礎とマナー

欧文書体 その背景と使い方

欧文書体 その背景と使い方

ドイツのフォントベンダー「ライノタイプ社」でタイプディレクターを務める小林章さんの著書。

代表的な欧文書体の種類とその歴史、使用シーンなど、書体にフォーカスした内容になっています。

BodoniやGaramondなど、名前は有名なフォントもその背景にある歴史や開発の目的を知ることで使う時の意識が変わってきます。

スクリプト体の効果的な使い方や、見出しと本文における2種類の書体の組み合わせまで、欧文だけでなく文字好き、フォント好きの人にとって楽しく勉強になる内容になっています。

欧文書体―その背景と使い方(新デザインガイド)

タイポグラフィ・ハンドブック

タイポグラフィ・ハンドブック

当ブログで何度も取り上げている本ですが、欧文タイポグラフィについての教科書なので今回もご紹介します。

この本は他の本に比べて、より「レイアウト」についての内容が充実しています。

グリッドシステムや版面の作り方、ノンブル、柱などのページを構成する要素まで、欧文タイポグラフィを用いて高品質なデザインを作る際には大変参考になる本です。

タイポグラフィ・ハンドブック

アシンメトリック・タイポグラフィ

アシンメトリック・タイポグラフィ

ドイツ生まれ、スイス・バーゼルで活動した偉大なタイポグラファ・グラフィックデザイナー、ヤン・チヒョルト(Jan Tschichold )の著書「Typographische Gestaltung」を日本語訳した本。

書体の選択、組版の理論はもちろん、タイポグラフィを主体的に使用したポスターや本の表紙紹介・その構造の分析など、ニュー・タイポグラフィのムーブメントを代表するデザイナーであったチヒョルトさんならではの「グラフィック」な分析がふんだんになされている一冊。

文字だけでグラフィックを作りたいデザイナーの方には色やコンポジション(構成)の解説がとても役に立ちます。

アシンメトリック・タイポグラフィ

Webサイト

I Love Typesetting: InDesignによる欧文組版の基本操作その1

http://typesetterkon.blogspot.com/2011/05/indesign1.html

英文・和文・和欧混合の書籍デザイン・組版の仕事に、約25年以上たずさわられている Rose Toyoko Kon さんの欧文組版についてのブログ。

こちらのブログの「InDesignによる欧文組版の基本操作」の記事はハイフネーションやジャスティフィケーションの細かい設定まで書かれていてとてもわかりやすいです。

私が業務で欧文組版をおこなう時は、毎回こちらのブログ記事の内容を参考にして設定を作っています。

デザインの現場 小林章の「タイプディレクターの眼」

https://blog.excite.co.jp/t-director/

「欧文書体 その背景と使い方」の著者、小林章さんのブログ。

ドイツ在住の小林さんが街中やご自身の仕事などから印象に残った文字・書体を写真で紹介されているブログです。

欧文書体が実際にどのように使われているのかを、ライトな読み物として知る事ができます。

まとめ

日本にいるとなかなか馴染みの少ない欧文組版ですが、その分、しっかりとした文字組ができるようになるとクライアントからの信頼も厚くなると思います。

今回ご紹介した本やブログを参考に、皆様のお仕事に役立てて頂ければ嬉しく思います。

ヘッダー画像:Willi HeidelbachによるPixabayからの画像

2019年1月〜4月までに購入したオススメのデザイン本4冊

2019年に入ってから4月までの間に購入したデザイン本をご紹介します

+DESIGNINGや大貫卓也さんの広告作品集、展覧会のフライヤーデザインや描き文字デザインなどアイデアの参考になりそうな本を購入しました。

+DESIGNING VOLUME 47

デザインやDTPの情勢やTIPSを紹介する雑誌。

4/6に開催されたDTPの勉強会第30回に合わせて買いました。

Illustratorの2019年最新の使い方を紹介しています。

勉強会もこの本に掲載されている内容に沿った物だったのでとても分かりやすく、技術をアップデートすることが出来ました。

付録でオフセット900線の印刷サンプルが付いていたのですが、特色インクを使っているかの様な鮮やかさで、版の作り方を変えるだけでもこんなに変わるのか!と感動しました。この印刷サンプルを観るだけでも買う価値のある特集号です。

DTPの勉強会当日の様子はこちらのTogetterにまとめられています。

【DTPの勉強会 第30回】+DESIGNING VOLUME 47 発売記念「Back to CC Basics・Illustrator編」 – Togetter
https://togetter.com/li/1335314

大貫卓也 ggg Books 43

日本を代表する広告アートディレクター、大貫卓也さんの作品集。

ggg(ギンザグラフィックギャラリー)が発刊している小さいサイズのデザイン作品集シリーズです。

大貫卓也さんの他の作品集はどれも中古で価格が高騰しているので、本書は判型も小さく作品数もそれほど多くはありませんが、大貫さんの代表的な作品を知る入門用としては最適です。

デザインや広告に興味を持ち始めた学生さんなどにオススメです。

広がるフライヤー 展覧会、舞台・映画、イベントを表現するチラシのアイデアとテクニック

展覧会やイベントのフライヤーデザインをまとめた作例集。

自分でもそういった仕事が増えてきたのでデザインの参考にするために購入しました。

こういった作例集はどれだけ最新の事例が掲載されているか?が特に重要だと思うので2019年発売のこちらの本はとても参考になりました。

眺めているだけでも面白い一冊。

作字百景 ニュー日本もじデザイン

最近のグラフィックデザインの潮流としてブームになっている「描き文字」を集めた作品集。

可読性を保持したまま上手く崩している文字から、ほぼ「絵」の様になっている文字まで。若い気鋭のグラフィックデザイナーの作品を中心に多様な文字デザインが並びます。

最近の実力あるデザイナーを知るのにも役立つ本です。


オススメの関連記事

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ポスターやフライヤーなどの制作時に参考にしている7冊のグラフィックデザイン書

私がポスターやフライヤーなど、一枚物のグラフィックデザインを制作する際に良く見ている、オススメのデザイン参考書を7冊ご紹介します。

オランダ、東欧、イタリア、スイスなど、ヨーロッパで活躍したデザイナー達の作品集はシンプルでありながら強さとユーモアを兼ね備えていてとても印象に残ります。

CONTENTS

  1. シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン
  2. ZWARTE BEERTJES: Book Cover Designs by Dick Bruna
  3. チェコの映画ポスター
  4. チェコ ポーランド ハンガリーのポスター
  5. 構成的ポスターの研究—バウハウスからスイス派の巨匠へ
  6. Max Huber
  7. Otl Aicher

シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン

オランダのグラフィックデザイナー「ディック・ブルーナ(Dick Bruna)」さんのポスターや本のデザインを集めた展覧会のカタログ。

日本ではウサギのミッフィーちゃんのデザインでお馴染み、ディック・ブルーナさんについては当ブログでも以下の記事でご紹介しています。

オランダのミッフィーミュージアム(Nijntje Museum)へ行きました
http://watanabedesign511.info/2018/12/14/nijntje-museum/

一見するとただ可愛いデザインに見えますが、対象が対象らしく見える極限まで構成要素を絞り、この場所以外ありえない、と感じさせるほどの緊張感を持ったレイアウトでデザインされています。

使用している文字のタイポグラフィや、紙を破ってコラージュの様にレイアウトするなど、テクスチュアも効果的に使っています。

オールカラーで価格も安いのでオススメの一冊!

ZWARTE BEERTJES: Book Cover Designs by Dick Bruna

こちらもディック・ブルーナさんの作品集。

ブルーナが手がけたペーパーバックスタイルの書籍シリーズ「ZWARTE BEERTJES(ブラック・ベア)」。彼が手がけた2000冊のカバーデザインの中から選りすぐりのデザインが掲載されています。

2000冊全ては掲載されていませんが本書の444ページに渡り、ブルーナさんの平面デザインの宇宙が広がっています。

彼のデザインを気に入った人は持っておいて損の無い一冊です。

チェコの映画ポスター

東欧チェコの映画ポスターデザインを集めた本。

なぜチェコ?と思われるかもしれませんが、チェコの映画ポスターは独特の構図感覚やタイポグラフィでグラフィックデザイナーには人気があるのです。

『羅生門』や『ゴジラ』など日本の映画作品のポスターをチェコ版にリ・デザインしている物も掲載されていて、日本版との違いに驚きを受けました。

以下のURLから2013年に東京国立近代美術館フィルムセンターで開催された『チェコの映画ポスター テリー・ポスター・コレクションより』という展示で掲示されたポスターデザインを何点か見ることが出来ます。

独創的なチェコの映画ポスター82点を紹介、世界各国の名作を豊かな想像力で大胆に異化 – アート・デザインニュース : CINRA.NET
https://www.cinra.net/news/2013/08/06/184403

本書に掲載されている作品も見られるので参考にしてみてください。

チェコ ポーランド ハンガリーのポスター

こちらも東欧のデザインシリーズ。

前述のチェコに加えてポーランドやハンガリーのデザインも掲載されています。

表4の紹介文によると、チェコスロバキア、ポーランド、ハンガリーなどの社会主義体制下にあった国々では芸術家が自由に表現活動を行うことが出来ないという背景があったようです。

そのため、ポスターなどのグラフィックデザインが芸術性を発揮できる数少ない場所だったようです。

判型は小さく値段も手頃ですが、オールカラーで233点の作品が掲載されているのでかなり充実した内容になっています。

構成的ポスターの研究—バウハウスからスイス派の巨匠へ

私が十代の美術予備校生だった頃に購入し、未だに参考にし続けているポスターデザインのマスターピース!

バウハウスやスイス派と呼ばれるポスターについて、デザインの構造や社会的背景、印刷技法に至るまで分析している1冊。

エル・リシツキー、モホリ=ナギ、ハーバート・バイヤー、ヤン・チヒョルト….といったグラフィックデザインのレジェンド達の名前と代表作について、私はこの本を見て学びました。

判型も大きめで印刷もとても綺麗なので、グラフィックデザインが好きな全ての人にオススメしたい本です!

Max Huber

前述の『構成的ポスターの研究』を読んで私が一番自分の感性でカッコイイ!と感じたデザイナー、Max Huber(マックス・フーバー)さんの作品集。

インパクトのあるタイポグラフィと透明感を活かした色使いで、シンプルながらも見ていて明るい気持ちになれます。

flotsambooksさんによる本マニアへのインタビュー記事『book-go-around』に答えた際にも好きな本として紹介しています。良かったらこちらも合わせてご覧下さい。

book-go-around #010|flotsambooks|note
https://note.mu/flotsambooks/n/ne0d84a068d6e

私が持っているのはハードカバーの物ですが今はペーパーバック版も出ているようで、そちらは少し価格が安くなっていますね。

Otl Aicher

ドイツのデザイナー兼教育者、20世紀のグラフィックデザインのパイオニアとも呼ばれたオトル・アイヒャー(Otl Aicher)さんの作品集。

こちらも以前、当ブログで紹介しています。

私が2018年にデザイン業務で活用した実戦的なタイポグラフィ本5冊
http://watanabedesign511.info/2018/12/23/2018-typography-books/

ポスターやブックデザインなどの一般的なグラフィックデザインに加えて、ピクトグラムやサインシステムなどのインフォグラフィックス、さらには書体の開発まで。

グラフィックデザイン博士ともいえる彼の活動を総合的に知る事が出来る一冊です。

こちらもペーパーバック版は安く買えます。

まとめ

グラフィックデザインの中でもポスターやフライヤーといった平面の媒体は、本の形態になったときにとても見やすいので、仕事とは関係なく眺めているだけでも楽しめます。

デザインに興味を持ったばかりの方も、今回ご紹介した様な本を読むことで自分の好きなデザイナーが見つかるとデザインの世界がより楽しくなります。

気になった一冊があれば是非読んでみて下さい。