Emigre(エミグレ)|デジタルタイポグラフィーにおける伝説的なデザインスタジオ!その書体と文化についてご紹介します

アメリカの歴史的に有名な書体制作会社「Emigre(エミグレ)」についてご紹介します。

https://www.emigre.com/

Emigreとは

Emigreは、アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレーに拠点を置く、デジタル タイポグラフィーとグラフィック デザインの分野で重要な役割を果たした、有名な独立系活字鋳造所およびデザイン スタジオです。

1984年にRudy VanderLans(ルディ・バンダーランス)とZuzana Licko(ズザーナ・リッコ)によって設立された Emigre は、従来の写植からデジタル テクノロジーへの移行が起こっていたデスクトップ パブリッシング(DTP)の初期に登場しました。

Emigreは、書体デザインとデジタル フォントの作成に対する革新的なアプローチで有名になりました。 共同創設者で書体デザイナーのZuzana Lickoは、エミグレの最も有名な書体のいくつかの開発に貢献しました。

画期的な書体「Lo-Res」

彼らの初期の成功の 1 つは、Licko がデザインした「Lo-Res」書体を 1985 年にリリースしたことです。 これは、伝統的なタイポグラフィーの限界を押し広げる、一連の画期的な活字デザインの始まりとなりました。

Lo-Res

Lo-Res(Emigre 公式サイトより)

コンピューターが誕生した当初、今のような高解像度での出力は難しかった。

Lo-Resはそれを逆手に取り、あえて低解像度のビットマップのような書体をデザインすることで、従来の伝統的な書体と差別化を測り、新しい時代を象徴する書体デザインとなりました。

同社は、しばしば従来のデザイン基準に挑戦する、実験的かつ前衛的な書体で知られるようになりました。

Emigre フォントはグラフィック デザイン コミュニティで広く使用され、1980 年代と 1990 年代の視覚美を形作る役割を果たしました。

Emigreの有名な書体

Emigreの有名な書体をいくつかご紹介します。

Template Gothic

Template Gothic(Emigre 公式サイトより)

Senator

Senator(Emigre 公式サイトより)

Mr Eaves

Mr Eaves(Emigre 公式サイトより)

Triplex

Triprex(Emigre 公式サイトより)

Hypnopaedia

Hypnopaedia(Emigre 公式サイトより)

このようなパターンや記号を組み込んだ書体も開発している。

雑誌「Emigre」

Emigre は、タイプ デザインに加えて、1984 年から 2005 年まで「Emigre」というタイトルのデザイン雑誌も発行しました。(Emigre Magazineと呼ばれることも多いです。)

https://www.emigre.com/Magazine

この雑誌は、記事、インタビュー、さまざまなデザイナーの作品を特集し、デザインの問題について議論するための影響力のあるプラットフォームでした。

毎号ガラッと異なる表紙デザイン、紙面のエディトリアルデザインや使用されているEmigreの書体など、斬新なデザインの手法が詰まっていました。

本誌は、業界の変革期におけるテクノロジーとデザインの交差点に関する議論に貢献しました。

まとめ

Emigre がデザイン界に与えた影響は、単なる書体デザインにとどまりません。

同社の影響力は、デザイン思考、テクノロジー、従来のメディアとデジタル メディアの関係といった幅広い文脈で見ることができます。

Emigre は現在積極的にフォントを制作していませんが、その遺産はデジタル タイポグラフィーとデザインの歴史の不可欠な部分として残っています。

Emigreの書体や思想に触れる方法

Adobe Fonts

Emigre | Adobe Fonts
https://fonts.adobe.com/foundries/emigre

Adobeのサブスクリプションサービスを契約していれば、追加料金無しでEmigreの代表的な書体をデジタルフォントとして利用することができます。

Emigre Magazine

Search Online Archive at Letterform Archive
https://oa.letterformarchive.org/?dims=Periodical&vals0=Emigre%20magazine

こちらのオンラインアーカイブサイトで、かなりの冊数(網羅しているかはわかりませんが)を中身まで読むことができます。

また、以下のiPhone用アプリでも雑誌を読むことができます。

Emigre Fonts
Emigre Fonts
開発元:Emigre Inc.
無料
posted withアプリーチ

Emigreの書体が気になった方はぜひ、フォントを使ったり雑誌を読んでみてください!

私の“推しフォント”3選(2023年6月16日版)

グラフィックデザイナーの最近の私が最近、仕事やプライベートワークで良く使っている推しのフォント3選をご紹介します。

Avenir next

欧文サンセリフ体の推しはこちら、Avenir nextです!迷ったらこれを使っています。

Helveticaより特徴を出したくて、Universよりも親しみやすさや新しさを感じるデザインだと個人的には感じています。

Macにデフォルトで入っているフォントという点もデータの受け渡しに気を使わなくて良いのでかなりポイントが高いです。

あおとゴシック

以前本ブログでも、気になるフォントとして取り上げたモリサワの新しいゴシック体。

2020年に登場したフォントですが、良い意味で「透明」といえるニュートラルさ、そして、豊富にウェイトを展開しているので本文から見出しまでデザイントーンを揃える事ができます。

モリサワのゴシック体でウェイト展開が多いフォントは、これまで、新ゴ(UD含む)やMB101くらいでした。

これらのフォントは悪くないのですが、昔からあるフォントなのでさすがに、古さを感じていました。

そんな中、登場したこちらのあおとゴシック。

モリサワ純正のフォントなので、字形の追加や、バージョンアップなど、将来への安心度も高いです。

今後もガンガン使っていきたいと思います。

ヒラギノUD角ゴシック

UDのゴシック体ではこちらが推しです。

あおとゴシックが出る前は汎用性の高いフォントとして、本文や小見出しなどに使っていました。

和文はヒラギノベースなのでMacユーザーには見慣れた字形。それに加えて、このフォントは欧文が良いと思っています。

FrutigerやMyriad系列のデザインなので、洗練された印象が出ます。

合成フォントをしなくても和文と欧文の組み合わせが美しいので、プレゼンテーションボードや、デザインの解説文などに使用しています。


今回ご紹介する推しフォントは以上です。

もちろん案件に応じて非常にたくさんのフォントを使い分けするのですが、今回紹介した3つは、私が良く使うフォントといえば、、すぐに名前があがる3書体です。

フォント選びの参考になれば幸いです。

最新のタイポグラフィが集う「TDC 2023」展で、とあるブックデザインに心を鷲掴みにされた

ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されたタイポグラフィデザインの展覧会「TDC 2023」展を観に行きました。会場の様子を写真でご紹介します。

今年は特に、とある本のブックデザインに非常に心を掴まれました。

「TDC 2023」展

Kent / Nanjing Han Qing Tang Design

この本のブックデザインが素晴らしすぎました。

20世紀のアメリカの画家、作家、冒険家、Kentの作品集。
版画の作品が主に収録されています。

セクションごとに異なる用紙を使っているのですが、その紙のチョイスが非常に繊細でハッとさせられました。

デザイナー自身が編集に関わっているとのこと。

自分もこのような素敵な本を作ってみたい、と強く感じました。

黄色いページに手書き文字が白で入る様が美しい

The Archive of Dark / OK-RM

こちらの本も良かったです。

アーカイブ的なイメージを多層的に組み合わせた表現。

リソグラフ印刷がモチーフと非常に合っていました。

TD. 3% Design Studio

ポスター作品では、こちらが目を惹きました。

様々な紙が貼られている立体的なポスター!

とてもインパクトがあります。

TDC展はポスターだけでなく、パッケージなど、立体作品も直接見られるのが良いですね。

海外のデザイナーも多くて、印刷やタイポグラフィの勉強になります。

来年もぜひ見に来たいと思います。

展覧会データ

ギンザ・グラフィック・ギャラリー第394回企画展
TDC 2023

会期:2023年3月31日(金)~2023年4月28日(金)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー

ポスターデザイナー、A.M.カッサンドルがデザインした書体やブランドロゴデザイン

アール・デコ時代のポスターデザイナーとして有名なA.M.カッサンドル。

これまで、彼がデザインしたポスターはよく知っていたのですが、書体やロゴデザインまで手がけていた事は知りませんでした。

今回の記事でご紹介したいと思います。

カッサンドルとは?

アドルフ・ムーロン・カッサンドル (Adolphe Mouron Cassandre、1901年1月24日 – 1968年6月17日)は、フランスのグラフィックデザイナー、舞台芸術家、版画家、タイポグラファーです。

1920年代から1930年代にかけて、キュビズムの影響を受けた多くのポスター作品を生み出しました。
彼の作品は、直線や立体感など幾何学的構成・エアブラシを使った点描的画法により構成されています。

アール・デコの時代を代表するデザイナーです。

カッサンドルによるポスターの代表作

  • 北方急行 (NORD EXPRESS) – 1927年
  • アトランティック号 (L’ATLANTIQUE) – 1931年
  • DUBO / DUBON / DUBONNET – 1932年
  • BONAL – 1933年
  • ノルマンディ号 (NORMANDIE) – 1935年
CASSANDRE (1901 – 1968), Etoile du Nord Pullmann, 1927, Pierre noire sur papier, 39,5 × 24 cm, collection privée, Paris, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:CASSANDRE_Etoile_du_Nord_Pullmann.jpg

カッサンドルがデザインした書体

Acier Noir (1936)

Acier Noir

Acier BAT/Adobe Fontsにある類似フォント
https://fonts.adobe.com/fonts/acier-bat

Acier BAT

Bifur (1929)

Bifur

P22 Bifur/Adobe Fontsにある類似フォント
https://fonts.adobe.com/fonts/p22-bifur

P22 Bifur

Peignot (1937)

Peignot

Pinot Grigio Modern/Adobe Fontsにある類似フォント
https://fonts.adobe.com/fonts/pinot-grigio-modern

Touraine (1947)

カッサンドルがデザインしたブランドロゴ

ファッションブランドのイヴ・サンローラン(Yves Saint-Laurent)のロゴ、モノグラムとロゴタイプをカッサンドルがデザインしています。

ブランドのアイデンティティとしてこれだけ長い間使用されるデザインをしているのは凄いですね。

SVG erzeugt mit AI, Public domain, via Wikimedia Commons

グラフィックデザイナーの私がオススメする「サンセリフ書体」10選

はじめに

タイポグラフィは、グラフィックデザインにおいて重要な役割を担っており、デザイントーンを設定し、メッセージを伝え、視覚的な魅力を高めます。

様々なフォントの中でも、サンセリフ書体はそのクリーンで現代的な印象から人気を誇っています。

今回は、グラフィックデザイナーである私がオススメするサンセリフ書体10書体を厳選してご紹介します。

これらの書体は汎用性が高いだけでなく、あらゆるデザインプロジェクトにおいてモダンさとエレガントさを与えてくれます。

それでは、珠玉の書体をご紹介します!

1. Helvetica(ヘルベチカ)

不朽の名作として知られるHelveticaは、多くのデザイナーに愛用されている書体です。

読みやすさとニュートラルさで知られるこの万能な書体は、ブランディングからウェブデザインまで、さまざまなデザイン分野で広く使用されています。

2. Gotham(ゴッサム)

大胆でありながら親しみやすい印象のGothamは、近年ますます人気が高まっています。

モダンな美意識を感じさせるこの書体は、印刷デザイン、パッケージ、デジタルインターフェースなど幅広い用途に適しています。

3. Avenir(アベニール)

Adrian FrutigerがデザインしたAvenirは、エレガントさと読みやすさのバランスが絶妙な、幾何学的なサンセリフ書体です。

すっきりとしたラインと均整のとれた字形で、見出しにも本文にも使える信頼性の高い書体です。

4. Futura(フーツラ)

Futuraは、シンプルさとモダンさを体現する幾何学的なサンセリフ書体です。

幾何学的な形と円形のストロークで知られるこの万能なフォントは、ロゴからポスターまで、さまざまなデザインの文脈で活躍します。

5. Proxima Nova(プロキシマ・ノヴァ)

Proxima Novaは、現代的なサンセリフ書体で、その多用途性と読みやすさで広く評価されています。

バランスのとれた字形と豊富なウェイトとスタイルで、印刷物にもデジタルプロジェクトにもシームレスに適応します。

6. Montserrat(モンセラート)

Montserratは、ブエノスアイレスの伝統的なMontserrat地区の看板からインスピレーションを得たオープンソースの書体です。

そのクリーンで幾何学的なデザインは、多数のウェイトとスタイルと相まって、見出しと本文の両方に優れた選択肢となります。

7. Roboto(ロボト)

元々Androidオペレーティングシステム用にデザインされたRobotoは、そのクリーンでモダンな外観から、多くのデザイナーに人気のある選択肢となっています。

このサンセリフ書体は可読性が高いため、ウェブデザインやモバイルインターフェースなど、さまざまな用途に適しています。

8. Gilroy(ギルロイ)

Gilroyは、独特の個性を持つ現代的なサンセリフ書体です。

洗練されたミニマルなデザインに加え、さまざまなウェイトと幅を備えているため、インパクトのある見出しやロゴの作成に多用途に使用できます。

9. Univers(ユニヴァース)

Adrian Frutigerによって作られたUniversは、汎用性と読みやすさで知られるクラシックなサンセリフ書体です。

ウェイトと幅のバリエーションが豊富で、さまざまなデザインプロジェクトに柔軟に対応することができます。

10. Lato(ラト)

Latoは、ヒューマニズムのサンセリフ書体で、その暖かく親しみやすい外観で人気を博しています。

印刷物でもデジタルメディアでも使えるので、ウェブデザイン、ブランディング、エディトリアルレイアウトなど、幅広いデザイン用途に適しています。

まとめ

サンセリフ書体の選択は、視覚的に説得力のある効果的なデザインを作るために不可欠です。

今回取り上げた10種類の書体は、汎用性、読みやすさ、モダンな美しさにおいて、グラフィックデザイナーに高く評価されています。

時代を超えたエレガンスさを持つHelveticaから、現代的な魅力を持つGilroyまで、これらのフォントは、デザイナーに幅広い選択肢を提供し、インパクトのあるデザインを生み出します。

ブランディング、ウェブデザイン、印刷物のいずれにおいても、これらの書体をデザインに取り入れることで、全体のビジュアルアピールを高め、印象に残るものにすることができます。

欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)

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