2025年春、Adobe fontsのラインナップに人気の欧文サンセリフフォント「Gotham(ゴッサム)」が追加されて、Adobe CC契約者なら追加料金無しで使用できるようになりました。
Gothamフォントの成り立ちや使用例について解説してまいります。

Gothamフォントとは
Gotham(ゴッサム)は、2000年にTobias Frere-Jones(トビアス・フレア=ジョーンズ)によってデザインされたジオメトリック・サンセリフ(幾何学的なサンセリフ)体のフォントファミリーです。
ニューヨークのストリートサインなど、街の景観に見られる素朴なサンセリフ書体を再解釈したデザインで、そのシャープさと親しみやすさを両立させています。
1. 成り立ち
- 着想の源
- ニューヨークの公共サイン(特に地下鉄やビルの案内標識)
- 1950~60年代のモダンな建築サインに見られる簡潔さ
- デザイン開発の背景
- Tobias Frere-Jonesはロードアイランド・スクール・オブ・デザインでデザインを学んだ後、Font Bureau, Inc.(フォントビューロー)社を経て、Hoefler & Frere-Jonesで書体デザイナーを務める。
- 雑誌GQ誌の専用書体として依頼を受けたことがきっかけで制作された。
- リリースと進化
- 2000年にHoefler & Frere-Jones社(現:Hoefler & Co.)から「Gotham」として商用公開
- 今ではウエイト(太さ)や傾斜(イタリック)を含む多彩なバリエーションを展開

↑1995年のニューヨークのガス会社の看板。「G」のアルファベットがGothamの「G」に良く似ている。

↑GQ誌。書名ロゴがGothamで組まれている。Gothamは元々はGQ誌の専用書体だったが、後に一般販売された。

2. 特徴
- ジオメトリックな構造
円弧や直線を多用し、幾何学的な美しさを追求。視認性が高く、モダンかつエレガントな印象を与える。 - 字間(カーニング)の最適化
よく練られた字間設定により、長文でも読みやすい。 - 多彩なウエイト展開
太さや傾きなど、My fontsでは66種類ものGothamが販売されている。これにより、見出しから本文まで統一感を保てる。
3. 使用例
- 企業ブランディング
多くの先端企業やスタートアップのロゴ・CIに採用。特に、テック系やライフスタイルブランドで人気。 - ウェブサイト・UIデザイン
見出しやナビゲーションに使用すると、モダンでクリーンな印象に。 - 政治キャンペーン
2008年の米国大統領選挙でバラク・オバマ陣営がロゴに採用し、一躍有名に。 - 出版物・雑誌
見出しやキャプションなど、強いアイキャッチ性を求められる場面で活躍。 - イベントサイン・ポスター
展示会やコンサートのサイン、ポスターのタイトルに使うと遠くからでも視認性が高い。

↑2008年の米大統領選挙の写真。”CHANGE WE CAN BELIEVE IN”というキャッチフレーズがGothamで組まれている。

↑ファーストフードチェーン「TACO BELL」のロゴタイプ。

↑三菱UFJフィナンシャル・グループのロゴタイプもGothamをベースにしたと思われるデザイン。

↑アメリカのアニメ専門チャンネル「Cartoon Network」のロゴマーク。
Gothamをベースにしたフォントを使っている企業は他にもあります。

↑音楽配信サービス「Spotify」のロゴタイプはGothamをベースに、カスタマイズしたもののようです。

4. 入手方法
Gothamフォントを利用するには以下の経路があります。
- 公式ライセンス購入
- Hoefler & Co.(現:Monotype傘下)公式サイト
https://typography.com/fonts/gotham/overview - My fonts
https://www.myfonts.com/collections/gotham-font-hoefler-and-co
- Hoefler & Co.(現:Monotype傘下)公式サイト
- Adobe Fonts経由(サブスクリプション)
- Adobe Creative Cloudの契約があれば、Gothamを追加費用なしでWeb/デスクトップで利用可能です。
https://fonts.adobe.com/fonts/gotham
- Adobe Creative Cloudの契約があれば、Gothamを追加費用なしでWeb/デスクトップで利用可能です。
- 代替フォント
- Gothamフォントは無料ではありませんが、Google Fontsの「Montserrat」「Poppins」などがジオメトリック寄りの近いデザインのフリーフォントとなっています。
Montserrat(https://fonts.google.com/specimen/Montserrat?query=Montserrat)
Poppins(https://fonts.google.com/specimen/Poppins?preview.text=The%20quick%20brown%20fox%20jumps%20over%20the%20lazy%20dog.&query=Poppins)※見本がアラビア語で表示されることがありますが、英数字使えます。
- Gothamフォントは無料ではありませんが、Google Fontsの「Montserrat」「Poppins」などがジオメトリック寄りの近いデザインのフリーフォントとなっています。
Gothamと代替フォントの比較



パット見の雰囲気は3つとも似ていますが、この様に並べて比較すると違いが分かりやすいです。
Montserratは「G」や数字の字形はかなり異なりますが、それ以外のアルファベットは似ています。
Poppinsは丸さが強調されており、より可愛らしい雰囲気。どちらかというとGill Sansに似ている印象です。
5. まとめ
Gothamは「街で見かけるサンセリフ」を原点に、モダン×親しみやすさを両立させた秀逸なジオメトリック・サンセリフ体です。
強い視認性と多彩なウエイト展開は、ブランドやUI、ポスターなど多岐にわたるデザイン領域で力を発揮します。
もしあなたのプロジェクトに「クリーンなのに温かみも感じる」印象をプラスしたいなら、ぜひGothamを検討してみてください。