[映画感想]「流浪の月」|“普通”では無いことは悪なのか? 女児誘拐事件の加害者と被害者がたどる人生の困難さを描いた考えさせる作品ーあらすじ、登場人物、感想など

広瀬すずと松坂桃李が主演をつとめる映画「流浪の月」。

凪良ゆうによる原作小説が好きだったので映画も見てみました。感想をご紹介します。

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映画「流浪の月」のあらすじ

帰れない事情を抱えた少女・更紗(さらさ)と、彼女を家に招き入れた孤独な大学生・文(ふみ)。
居場所を見つけた幸せを噛みしめたその夏の終わり、文は「誘拐犯」、更紗は「被害女児」となった。
15年後。偶然の再会を遂げたふたり。それぞれの隣には現在の恋人、亮と谷がいた。

ABOUT THE MOVIE – 映画『流浪の月』 公式サイト https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/about/

映画「流浪の月」の登場人物

家内更紗(広瀬すず/幼少期(白鳥玉季))

本作の主人公。現在はファミリーレストランで働いている。

幼少期、家に居場所が無かったことから、佐伯文の家で数日間暮らしていたが、警察に見つかり女児誘拐事件として大々的にメディア掲載された。

佐伯文(松坂桃李/中学生時(中田昊成))

本作のもう一人の主人公。現在はカフェを経営している。

学生時代、公園で居場所が無く佇む家内更紗に声をかけ、自らの家で共同生活を始める。

警察に発見され、女児誘拐事件の加害者として報道される。

中瀬亮(横浜流星)

現在の更紗と同棲をしている彼氏。DVの気がある。

谷あゆみ(多部未華子)

現在の文と付き合っている彼女。編集者。

安西梨花(増田光桜)

更紗が勤めるファミリーレストランの同僚である佳菜子の娘。

安西佳菜子(趣里)

更紗が勤めるファミリーレストランの同僚。シングルマザー。

彼氏と旅行に行くために娘の梨花を更紗に預ける。

湯村店長(三浦貴大)

更紗が勤めるファミリーレストランの店長。

更紗の立場を理解することは難しいですが、スキャンダルによって本部から退職を迫られても、思いやる言葉をかけたりと、実は結構優しいキャラです。

映画「流浪の月」の面白かった点

凪良ゆう作品ならではの苦難に満ちた人生がしっかりと映像化されている

小説もそうなのですが、映画も観ていて胸が詰まるシーンが多く苦しくなりました。

物語のクライマックスで文の秘密が明かされるシーン

これまで積み重ねてきたエピソードが全て辻褄が合い、オセロが一気に裏返るような感覚を覚えました。

白鳥玉季による子供時代の更紗の演技

子供なのですが、どこか大人にも見えるような絶妙な演技で引き込まれました。

文と子供時代の更紗が一緒に暮らすシーンは、どこか非現実的な印象もあり、大人になることが無い、ピーターパンのネバーランドの様な世界に見えました。

白鳥玉季は堂に入った演技でしたが、調べてみたらこの間見た映画「正欲」にも、人気小学生YouTuber役として少しだけ出演していました。

横浜流星による亮の演技

This is DV!とも言えるようなDV彼氏の演技が凄かったです。原作でも衝撃的でしたが、映像になるとさらにインパクトがありました。

個人的に、良い物語には良い悪役が必要だと思っています。横浜流星演じる亮のDVっぷりは観る者のヘイトをしっかり集め主人公を応援したくなりました。

逆に、小説もそうなのですが、物語の後半になると亮があまり出てこなくなるのでちょっと物足りなさすら感じます。

映画「流浪の月」の惜しかった点

上映時間2時間半は長く感じた

原作もすごいボリュームなのですが、映画も2時間半の大作!途中、やや緩慢さを感じる部分もあったので、もう少しコンパクトにまとまったら良かったと思いました。

谷あゆみの掘り下げが少なかった

現在の文の彼女、谷あゆみは、原作では結構深いエピソードがあったのですが、映画ではバッサリカットされており、いわゆる“普通の彼女”のように描写されてしまっていたので、その点は残念でした。

映画「流浪の月」の感想まとめ

小説もそうでしたが、この映画を観ても、「普通とは異なる特性を持って生まれただけで、これほどの苦難の道を歩むのか」と非常に考えさせられる物語です。

後半になるにつれて文の感情があらわになってくる点も非常に見応えがありました。

難しい小説を丁寧に映像化してくれた作品だと思います。

あと、映画では結末が描かれておりませんでしたが、更紗に子供を預け、失踪したかと思われた安西佳菜子は最終的には帰ってきて、ちゃんと子供を迎えに来ます。

映画「流浪の月」の満足度

85点/100点満点中

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原作小説「流浪の月」凪良ゆう(著)

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[読書感想]「汝、星のごとく」凪良 ゆう|閉鎖的な人生を打破しようと足掻く、二人の創作者の物語

凪良 ゆうさんの小説「汝、星のごとく」をAudibleで読みました。
感想をご紹介します。

あらすじ

その愛は、あまりにも切ない。
正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。
本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作。
ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。

Amazon.co.jp: 汝、星のごとく 電子書籍: 凪良ゆう: Kindleストア

エグいバクマン

主人公の一人、櫂は漫画原作者として成功して島を出て東京で暮らします。
その過程で都会やビジネス、出会う人やお金によって変わっていきます。
昔人気だった、漫画家を描いた少年漫画「バクマン」をよりリアルに、救いようがない感じにした作品だと思いました。

バクマン。 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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大場つぐみ, 小畑健
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暗い描写が長く続く

二人の主人公、特に暁海の方にはひたすら悲惨な展開が訪れます。
その展開が長いので、真綿でじわじわと首を絞められる感じで、途中は読んでいてかなり重い気持ちになりました

登場人物にヘイトが集まったところでバチが当たる展開

本作はどんな登場人物をも、善としても悪としても描いていないので、良いことが続き、調子に乗っていたキャラクターに対して読者がだんだん嫌な印象になってきたところで天罰のように落とす展開が入ります。

サブキャラに共感

主人公2人と先生は物語上バフがかかってる印象があり、結構ファンタジック(ご都合主義?)とも言える出来事が起こります。
それよりも、暁海と櫂の親や、櫂の相棒の漫画家、編集の人や暁海の刺繍の先生(瞳子さん)などには、わりとリアリティがある感じで、成功や苦難が訪れるので、私はサブキャラクターの方により共感をしました。

物語の終わり方の難しさ

途中まで、衝撃的な展開の連続でかなり物語の風呂敷を広げていくので「この話はどうやって終わるのだろうか?」と不安になるのですが、後半になるにつれて、良い意味でも悪い意味でも物語が収束していくので、最後はうまくまとめた、という印象になりました。
何が正解か、は作者が決めれば良いと思うのですが、物語の終わり方って難しいと感じました。
ですが、「汝、星のごとく」という本作のタイトルを最後に回収するシーンがあるのですが、そこは非常に良くて、鳥肌が立ちました

一番印象に残ったシーン

本作で一番印象に残ったのは、暁海が閉鎖的な島の生活の中で刺繍と出会い、雑誌に掲載されていたパリのメゾンに想いを馳せるシーンです。
私の頭の中に、その情景が浮かんで、アート(作品制作)によって閉鎖的な自分の人生が変わり、世界と繋がっていくような、非常にドラマチックな描写でした。

まとめ

この感想を書いていて思ったのですが、本作は二人の主人公の人生や愛憎を描きながらも、ものづくり「クリエイティブ」について描いているのかもと思いました。
櫂を支える二人の編集者もそれぞれ矜持があってとても魅力的です。
重い物語ですが、創作活動によって世界を広げる、「クリエイティブ」の力を感じさせられました。

満足度

83点/100点満点中

長い物語なので、読後の満足感はすごいです。

汝、星のごとく

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