東向島のRPSにて、吉田亮人「The Absence of Two」出版記念展を鑑賞しました

東向島のRPS(Reminders Photography Stronghold)ギャラリーで開催された、写真家・吉田亮人さんの展示「The Absence of Two」を鑑賞しに行きました。

今回は同タイトルの写真集が「青幻舎 」およびフランスの「Editions Xavier Barral」から出版される事になったので、その出版記念展として、写真集の製作過程を見せるような展覧会になっていました。

吉田亮人写真集「The Absence of Two」の普及版刊行を記念して、写真展を開催いたします。写真集は2016年にRPSで開催されたワークショップ「Photobook as object」に参加した写真家・吉田亮人が取り組み制作したアーティストブックで、2017年6月に刊行されました。
限定111部で制作された本作は瞬く間に完売となりましたが、今回、オリジナル版をベースに「青幻舎」http://www.seigensha.com/ とフランスの出版社「Editions Xavier Barral」 http://exb.fr/en/ より新たに写真数点とエッセイを加え、再編される普及版となります。

12/8-23まで:吉田亮人写真集「The Absence of Two」青幻舎およびXavier Barral版発売記念展

写真展の様子を、会場の写真と共にご紹介します。

CONTENTS

壁一面に貼られた印刷校正紙

今回の展示では、このように印刷刷り出しの校正紙が展示されています。

壁一面に貼られた校正紙

上の写真は、インクが滲んでしまったそうです。こういう効果を狙ったのかと思うくらい雰囲気のあるにじみ方ですね。

オフセット印刷の仕組みも勉強できる

オフセット印刷で使用するアルミのPS版まで展示されていました!通常は、印刷会社で保管していて外に出る事は無いので、なかなか実物を見る機会の少ない貴重な物。印刷の仕組みの勉強にもなりました。



出版社とのミーティングで使用された、メモが書かれたダミーの数々。

モノクロページの色校正紙
カラーページの色校正紙
表紙のダミー
表紙のダミーの進化
完成版。右には作家による手製本バージョンも
上から下までダイナミックに壁を使われている展示です

上部の茶色い紙は、用紙を変えている折があるので、その校正紙です。

超レアな『台割』や『装幀仕様書』も公開!

そして、デザイナーの私が今回の展示で最も興味を惹かれたのは、この『台割』や『装幀仕様書』が展示されている事です。他のデザイナーさんが書いた台割や装幀仕様書を見る機会など殆ど無いのでとても参考になりました。

ここまで公開して良いのでしょうか?とさえ思ってしまいます。

タイオウアトラス、コニーラップ、大王スノークイーン、モンテシオン….など、使用候補になった印刷用紙の名前が見えます。

1、2、3、….と番号が振られている箇所は、何種類か候補があり、それぞれ試し刷りをする、という意味かもしれません。

印刷色に関しても、森などの部分は、茶色い用紙に「スミ+特色の緑」を使用している事が見て取れます。

修正の赤字が入ったバージョン

タイトル・テキストが入る間伐材印刷用紙は70kgから55kgに変更になったようです。

サイズなど
スケジュールなど
手書きの台割り
より詳細なスケジュール
手書きのメモが生々しいです

丁寧な本作りの過程を追体験

こちらにもメモが。細部まで丁寧にクオリティを追求されている事がうかがえます

とても勉強になる写真展でした。

Information

吉田亮人写真集「The Absence of Two」青幻舎およびXavier Barral版発売記念展

吉田亮人写真集 The Absence of Two

フライヤーデザインについて

今回の展示のフライヤーデザインを私が手がけさせて頂きました。素晴らしい展示のお手伝いができ、仕上がりに関しても、吉田さんにも喜んで頂けたので良かったです。

千賀健史写真展「THE SUICIDE BOOM」 at RPSギャラリー

Reminders Photography Strongholdギャラリーで2018年11月3日〜25日まで開催された千賀健史さんの写真展「THE SUICIDE BOOM」を鑑賞しました。

メディアで有名人の自殺のニュースが報道された際に起きてしまう「後追い自殺」。

それら連鎖的な自殺や死の美化について、作者の千賀さんは脳を浸食する「自殺のマインドウィルス」があると考えました。

目に見えない自殺のウイルスをヴィジュアライズした展示です。

写真集の構造の様に様々なメッセージがレイヤー化されたような展示構成

脳を侵食する「自殺のマインドウィルス」。レントゲンのように発光する写真のイメージによって強く印象づけるような展示になっている。

右の柱に投影された動画は、街を行き交う人々の姿
旧字体でタイプされた「天国」の文字
スマートフォンを通してマインドウィルスが浸食するイメージ
自殺者が増えていくカウンターが回る映像
三原山の自殺にまつわる記事を抽出した壁面
新聞記事から煙のように拡散されていく目に見えないウイルス
手紙やネット掲示板からの具体的な文字情報と、抽象的なイメージが重なる事で新たな意味が生まれる

こちらの展示の告知フライヤーのデザインを担当させていただきました。


関連リンク

【作家のサイト】CHIGAKENJI.com
http://www.chigakenji.com/

【イベントレポート】[イベントレポート]千賀健史 写真展「The Suicide Boom」
http://reminders-project.org/rps/eventreport_kenjichiga_tsb/

【写真集の注文はこちらから】千賀健史 写真集「The Suicide Boom」ご注文受付中(58部限定、受注生産)
http://reminders-project.org/rps/thesuicideboomsalejp/

千賀健史 写真集「The Suicide Boom」 from REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD on Vimeo.

今注目のバイオアート!「2018年のフランケンシュタイン」展が面白かった!

表参道のGYREにあるアートギャラリーで開催している「2018年のフランケンシュタイン – バイオアートにみる芸術と科学と社会のいま 」という展示を観てきました。

近年注目されている、合成生物学や3Dプリントなど、バイオテクノロジーを用いたバイオアートの展覧会。

金沢21世紀美術館の方がキュレーションに携わっているだけあり、とても面白かったです。

写真撮影可だったので、気になった作品をご紹介します。

ティナ・ゴヤンク 「Pure Human」

ファッション界の鬼才、アレキサンダー・マックイーンの皮膚をファッションの素材にするプロジェクト。

彼の肌のシミやほくろ、刺青を、ジャケットやリュックのテクスチュアとして再現。ここで展示されているのは豚革を使用した精巧な試作品ですが、最終的には実際にDNAを採取し、幹細胞に移植して皮膚を作るという事までするそうです。

それも観たい!

どの位置から皮膚を採取したかが標本の様に描かれている。

平野真美「蘇生するユニコーン」

空想の生物であるユニコーンを骨格、臓器、血管、内蔵、皮膚という詳細な部位を制作して想像から現実へと回復しようとするプロジェクト。

ディムット・ストレーブ「Sugababe」

ゴッホが切り落とした左耳をゴッホの子孫の細胞と唾液から抽出したDNAで復元するプロジェクト。

DNAが正しければ本人と同一と言えるのか?という「死」の概念を問う。

マーク・ダイオン「タール漬けの鳥」

環境汚染でタール漬けになった鳥を彫刻に。

タールが鳥の表皮を垂れる様子まで再現していて、リアル!

本多沙映「Everybody needs a rock」

道端で拾ったプラスチックを溶かして磨くことで作成した人工の鉱物。

ハワイの海岸で実際に発見された「プラスティグロメレート」(溶けたプラスチック、火山岩、砂、貝殻が混じり合うことで出来た新種の鉱物)からインスパイアされた作品。

ロバート・スミッソン「Glue Pour」

AKI INOMATA「Why Not Hand Over a “Shelter” to Hermit Crabs?」

ニューヨークや東京、パリの街の形を3Dプリンタで作成した透明な容器。水槽の中のヤドカリはそれらを自分の「ヤド」として使用する。

ヤドカリが都市から都市へ引っ越しをするように見える。

純粋に、ヤドカリがヤドに入っている様子を透明な容器越しに見られるのがとても新鮮で面白い!

ヘザー・デューイ=ハグボーグ「Stranger Visions」

本展示でとりわけすごいと思ったのはこの作品!

路上に落ちているタバコの吸殻や毛髪からDNAを採取し、落とした本人の顔を復元するというプロジェクト。

かなり精巧に顔が再現されている。

これが採取した吸い殻や採取の場所を示す標本箱。これだけの素材からリアルな顔が再現される技術にゾッとしました。

この技術は「DNAスナップショット」と呼ばれる犯罪捜査ツールとしてアメリカでは既に実用化されているそうです。すごい技術…。

BCL「BLP-2000B:DNAブラックリスト・プリンター」

パンデミックを起こす危険性をもったウイルスのDNA配列をひたすら印刷していくプリンター。

人間が生命を容易に編集できるような時代になった事を暗喩し、警鐘を鳴らしている。

最新のバイオテクノロジーの技術を知ることができ、それを芸術家達がどのようなメッセージを込めて作品に落とし込むかを堪能出来る充実の展示。

入場無料という事もあり、私は二回、観に行きました。

とても面白いので、タイミングが合う方は是非!

展覧会情報

「2018年のフランケンシュタイン バイオアートにみる芸術と科学と社会のいま」
会期 : 2018年9月7日(金) – 10月 14日(日) / 11:00 – 20:00 / 無休
会場 : EYE OF GYRE / GYRE 3F
webサイト:https://gyre-omotesando.com/artandgallery/bioart/

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日本科学未来館で「デザインあ展」を体験・鑑賞しました

日本科学未来館で開催中の「デザインあ展」に行ってきました。

会期も後半で、雨の休日だったので空いてるかと思いきや、凄い混雑で大盛況でした。


「デザインあ展」に行く時に気をつけること

  1. 入場券は事前にネットで買っておく
    チケット売り場はかなり混雑するので、以下のサイトからオンラインチケットを購入しておきましょう。
    http://www.e-tix.jp/design-ah-exhibition/
  2. 途中のコンビニなどで軽食と飲み物を買っておく
    混雑している場合は整理券をもらって、時間まで待機する事になります。
    館内に待合室というか、机と椅子が置かれている部屋があるのですが、売店とかは無いので、最寄りのコンビニなどで軽食と飲み物を買ってから行くのがオススメです。
  3. 出来るだけ、友達や家族、恋人などと一緒に行く
    私は一人で行ったのですが、デザインあ展は体験型の作品が多く、一人で体験するにはかなり勇気が必要です。
    誰かを誘って一緒に行った方が展示を楽しめます。

未来館の入り口の前でスマートフォンを使い、オンラインチケットを入手。整理券を受け取り、30分後に入場できました。

会場内で印象に残った作品をいくつかご紹介します。

お弁当に入っている食材を分解して並べている。デザインの解剖っぽい作品

 

様々なパッケージに記載されている注意書きのマーク。そのマークのみを残して他を真っ白にしたパッケージの展示。

道路標識やサインなどに使われている図形を自由に組み合わせる、マークの積み木的な作品。子供にとても人気でした。

ティーポットや牛乳パック、じょうろなど、器と、そこから注がれる液体の形のみを抽出した彫刻。

日本人の名字、人口の多い苗字ほどスペースと文字サイズが大きくなるというインフォグラフィックス的な作品。

お客さんがみんな、自分の苗字を探して楽しんでいました。

これもかなり好きです!

回転寿司という誰もが共通で認識しているフォーマットを使い、「回転」以外の寿司屋があったらどうなるか?という作品。

分岐、歯車、信号、偶然、ギャンブル、など、ユーモアあふれる寿司屋のイメージが登場していました。

昔のファミコンのようなチープなドット絵も内容にあっています!

常設展も充実!

「デザインあ展」以外の科学未来館の常設展示も、ものすごくボリュームがありました。全部をじっくりとは観られてないですが、特に気になったのはアンドロイドの展示です。

デザインあ展も、常設展もとても見ごたえがあるので、行くときはしっかり時間を取って楽しんでください!

 

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「good design company 1998-2018」を鑑賞

クリエイションギャラリーG8で開催されているgood design companyの展示を観に行きました。

ラーメンズからくまもん、電子マネーのIDまで、とにかく、仕事の幅と量がすごい!

宇多田ヒカルのアルバムやだしの茅乃舎など、これもgood design companyの仕事だったのか!と思うような有名な作品ばかり。

もちろん、どれもクオリティが高く、超一流のデザイナーの仕事に圧倒されました。

会場入ってすぐの場所に貼ってある水野学さんによる、gdc 立ち上げに至るまでの経緯とお世話になった方に送る謝辞のコメントがとても良かったです。

コメントの入れ方が素敵です
シンプルなデザインで格好いい!
デザインを手がけたブランドのショップバッグ
有名な出汁の茅乃舎(かやのや)さんのブランディングも手がけていたのですね!
杏露酒のロゴも!
dav
クッキーに群がる蟻が文字になっている
パッケージからアパレルまで
ものすごい仕事量です
ブックデザインもありました
アパレルのタグなどのデザイン
居酒屋でよく見るエプロン
日本酒のラベル
中川政七商店のデザイン

水野さんと多摩美術大学で同期だった、ラーメンズのライブ/公演グッズのデザインもされていたようです。

こちらは小林賢太郎さんの公演グッズ

ウイスキーの箱も
くまもんのバカラグラス!
宇多田ヒカルさんのこのアルバムアートワークも。当時良く聴きました

とにかく、ものすごい仕事量で、かつ誰もが目にしたことのあるような有名な仕事ばかり。

それを1つ1つ手を抜くこと無く全力でデザインされている様が伝わってきて、水野学さんのデザインの「力」と「愛」に圧倒された展覧会でした!

関連書籍

今回の展示に関連したアイデア誌の特別編集版が発行されたそうです。

展示に行かれなかった方、もう一度展示の内容を思い出したい方はこちらを読んでみてはいかがでしょうか。

アイデア特別編集 good design company 1998-2018