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はじめに
デザイン学校でIllustratorなどのアプリケーション操作を教える際、市販のマニュアル本から抜粋したページを教材としてコピー配布したいと考えることがあるでしょう。
しかし、著作権法上の制限を理解せずに無断で大量配布すると、思わぬトラブルに発展する恐れがあります。
この記事では、日本の著作権法第35条が定める「教育機関における権利制限」のポイントを整理し、授業で安心して使える教材作りのヒントをご紹介します。
著作権法第35条とは
改正著作権法第35条では、学校その他の教育機関(営利目的を除く)において、教員および学生が「授業の過程」において必要と認められる限度で著作物を無許諾・無償で複製・配布できる旨が規定されています。
これは、授業の教材準備や演習で市販書籍の一部を利用する場面に適用されますが、「著作権者の利益を不当に害する場合」は除外される点に注意が必要です (sartras.or.jp, sartras.or.jp)。
適用のポイント
- 対象機関と主体
- 対象:営利目的でない学校、大学、専門学校など。
- 主体:教育を担任する教員および授業を受ける学生・生徒 (utelecon)。
- 「必要と認められる限度」
- 分量:授業で扱う範囲に限定。たとえば、Illustratorの基本操作を説明するに足る図版や手順だけを抜粋し、マニュアル本全体を丸ごとコピーしない。
- 部数:当該授業を受講する学生全員に行き渡る最小限の部数に留める。
- 用途:あくまで授業内の解説・演習用。私的利用や営利目的での配布はNG (sartras.or.jp)。
- 公衆送信(デジタル配布)の扱い
- ネットワーク送信で教材を配布する場合も第35条が適用されます。ただし補償金制度(SARTRAS)による支払い義務が発生しうるため、事前に確認を。特別措置として新型コロナ対応期間中は無償での公衆送信が認められた例もあります (medbooks.or.jp)。
コピー時の注意点
- 出典明示:必ず書名・著者・出版社・発行年などを記載し、学生に情報源を示す。
- 過度な配布回避:同一教材を複数回にわたってコピー配布したり、同一学期を超えて使い回すと「利益を不当に害する」と判断される可能性があります。
- 電子データ管理:デジタル配布の場合、アクセス制限や配布期間を設け、授業期間外の利用を防ぐ運用が望ましいでしょう。
まとめ
Illustratorなどの操作マニュアルから必要な部分だけを抜粋し、授業内で最小限の部数を配布することは、著作権法第35条の教育利用規定により原則として認められています。
ただし、分量や部数を適切に制限し、出典を明示することで「著作権者の利益を不当に害する」事態を回避しましょう。
デジタル配布を行う際は補償金制度の有無も確認し、安心して教材を活用してください。
参考リンク
- 改正著作権法第35条 運用指針(文化庁)
- 「学校は著作権の例外? 改正著作権法35条」解説(東京大学 utelecon)
- SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)について