デザインの仕事をしていると、極まれにクライアントから「編集可能なIllustratorデータをください」と言われることがあります。
いわゆる、アウトライン化をしていないIllustratorデータで、クライアント側で再編集ができる状態のデータを指します。(業務によってはInDesignやPhotoshopデータの場合もあるでしょう。)
この様に言われたときは、慎重に考える必要があります。編集可能なデータを渡すことにはメリットもデメリットもあるため、それを理解してから対応しましょう。
考えるべきポイント
1.契約内容の確認
まず、契約内容をチェックしましょう。
編集可能なデータを渡す取り決めがない場合は、「データ譲渡料」などのように、追加料金をお願いすることもできます。
2.データの使われ方を考える
クライアントがデータをどう使うかを確認しましょう。例えば、他の用途に使われたり、改変されたりする可能性があります。
デザイナーが制作したデザインの意図が崩れるリスクもあるため、注意が必要です。
3.目的を聞く
クライアントがデータを求める理由を聞くことが大切です。
たとえば、「テキストだけ修正したい」「サイズを変更したい」などの理由があります。
必要に応じて、別の形式(例:PDFでテキスト編集可能なもの)を提案するのも良い方法です。
メリット
クライアント側のメリット
1.柔軟に使える
社内で簡単な修正ができるため、時間やコストを節約できます。
2.長く使える
他のプロジェクトにも応用できる可能性があります。
デザイナー側のメリット
1.信頼関係を築ける
クライアントに対して誠実に対応することで、関係や印象が良くなります。
2.価格を上げられる
編集可能なデータは、通常の納品にプラスした特別なオプションサービスとして提供することができます。これにより、追加料金を設定して提案することも可能です。
デメリット
クライアント側のデメリット
1.品質が下がる可能性
専門知識がない状態で編集すると、デザインのバランスが崩れることがあります。
2.トラブルが起きやすい
フォントや画像が正しく表示されないなどの問題が起きることがあります。
デザイナー側のデメリット
1.デザインが無断で使われる可能性
他のプロジェクトや第三者(他のデザイナーやデザイン会社など)に流用されるリスクがあります。
2.責任問題が発生する可能性
クライアントが改変したデザインで問題が起きた場合、デザイナーに責任があると思われることもあります。
3.手間がかかる
クライアントに渡すためにデータを整理したり、準備するのに時間が必要になる場合があります。
対応のコツ
1.クライアントの目的を聞く
なぜ編集可能なデータが必要なのかを具体的に確認しましょう。その目的に合った別の方法を提案するのも手です。
2.条件をはっきりさせる
編集可能なデータを渡す場合は、「第三者に渡さない」「再利用しない」などのルールを決めておくと安心です。
また、追加料金が必要な場合はその理由を説明しましょう。
3.別の形式を提案する
必要なら、PDF形式やアウトライン化したデータを渡して代用することもできます。
4.注意点を伝える
データを渡す際には、フォントやリンク画像の扱い方などをクライアントに説明しておきましょう。
5.リスクを減らす工夫をする
データの一部を簡略化したり、デザイナーの名前をデータ内に記載したりすることで、リスクを減らせます。
デザインデータにはデザイナーのノウハウが詰まっています。
大切なデータを渡す際は、今回の記事を参考にクライアントへの対応方法を考え、その後に起こり得ることまで想像していただければ幸いです。
関連書籍
著作権トラブル解決のバイブル! クリエイターのための権利の本 改訂版