日本でも人気のサンセリフ体「DIN(ディン)」フォント。シンプルで視認性が高く、工業的で無駄のないデザインが特徴です。
本記事では、DINフォントの成り立ちから使用事例、入手方法、そしてフリーフォントの代替案までを幅広く紹介します。

1. フォントの成り立ち
- ドイツ工業規格(DIN 1451)として誕生
1936年、ドイツ規格協会(Deutsches Institut für Normung)が交通標識や官公庁の表示用に制定しました。
工業標準として、均一な線幅と角張った字形で高い可読性を追求しています。

↑ドイツ規格協会のロゴ
- シンプル&機能的なデザイン
当時の手書き標識に代わる機械印刷向けフォントとして開発。
装飾を排除し、数字や英字が一目で読める設計になっています。
- 民間への広がり
近年、ユニバーサルデザインの潮流とともに商用フォントとしても注目されています。
2000年代以降、多くの書体ブランドからリデザイン版がリリースされ、多くのデザイナーに愛用されています。
2. フォントの具体的な使用事例
2.1 ロゴデザイン
Sage Group: 1996年以降、エンタープライズソフトウェア企業Sage GroupはロゴにDIN由来の書体を採用しています。 (en.wikipedia.org)

Datto, Inc.: サイバーセキュリティ企業Dattoは、企業フォントとしてD-DIN(DIN 1451をベースにした書体)を使用しています。 (en.wikipedia.org)

New York City Ballet: 芸術団体ニューヨーク・シティ・バレエのロゴにはFF DINが用いられています。 (en.wikipedia.org)

jetBlue Airways: アメリカの航空会社ジェットブルーは、コーポレートアイデンティティにFF DIN Boldを採用。 (en.wikipedia.org)

日本でのDINフォントロゴ使用事例
日本では、以下の企業/イベントロゴにDIN1451をベースとしたフォントが使われています。(ja.wikipedia.org)
ユニクロ

2020年東京オリンピック・パラリンピック大会ロゴ

東京地下鉄(東京メトロ)

2.2 出版物・Webメディアでのフォント使用
The Wolf of Wall Street: 映画「ウォール街 狼 大逆転(The Wolf of Wall Street)」のポスターではFF DINが採用されました。 (en.wikipedia.org)

↑映画のタイトルロゴにもDINが使用されています
ETH Zurich: スイス連邦工科大学チューリッヒ校は、ポスターやパンフレットなど印刷物にFF DIN Proを使用しています。 (en.wikipedia.org)

2.3 サインデザイン・環境デザインでのフォント使用
ドイツ道路標識: DIN 1451は鉄道や高速道路の標識、ハウスナンバーなどで標準書体として採用され、高い可読性を誇ります。 (myfonts.com)
↑1971年から1981年の間に作られた、古いDINフォントの町の入口標識

↑消印スタンプ
LA Metro: ロサンゼルスの地下鉄・バス路線のサインシステムや車両・駅標識にFF DINが使われています。 (en.wikipedia.org)

↑路線図やロゴにもDINが使用されています
International Aerobatic Club: 国際アクロバット飛行協会のロゴやブランディングにFF DINが用いられています。 (en.wikipedia.org)

3. 入手方法:Adobe Fontsとフリーフォント
Adobe Fonts
Adobe Creative Cloud契約者であれば、`DIN Next LT Pro`などのDIN系フォントを追加料金なしで利用可能。
Webフォントとしても提供され、サイトデザインに組み込みやすいです。
Adobe Fontsで「DIN」とつくフォントはいくつかあります。

私のオススメは以下のフォントです。
DIN 1451 Pro: 最もオーソドックスなDIN 1451フォント。Adobe Fontsでは2ウェイトのみとなっています。(https://fonts.adobe.com/fonts/din-1451-pro)

FF DIN Paneuropean: DIN 1451を忠実に復刻したフォント。(https://fonts.adobe.com/fonts/ff-din-paneuropean#fonts-section)

URW DIN: ドイツの歴史あるフォント制作会社、URW Type Foundry GmbHによるDIN。(https://fonts.adobe.com/fonts/urw-din)

フリーフォント
DIN 1451 Mittelschrift: Peter Wiegel氏による「Alte DIN 1451 Mittelschrift」はSIL Open Font License (OFL) の下で配布されています。
公式サイトhttp://www.peter-wiegel.de/alteDin1451.htmlからダウンロード可能 (en.wikipedia.org, fontlibrary.org)。
商用利用時や日本語グリフの充実度は限定的なため、用途に応じてライセンスを必ずご確認ください。

4. DIN代替のフリーフォント
DINフォントそのものは商用利用では有償の場合が多いため、以下の、似ているフリーフォントで代替を検討してみましょう。
Oswald(Google Fonts): 幅広いウェイトを備えたコンデンスドサンセリフ。見出し用途に最適。(https://fonts.google.com/specimen/Oswald?query=Oswald)

Roboto Condensed(Google Fonts): 近代的かつ読みやすいデザイン。バリアブルフォント版もあり柔軟に調整可能。(https://fonts.google.com/specimen/Roboto+Condensed?query=Roboto+Condensed)

Public Sans(U.S. Web Design System): US政府が公開するオープンソースフォント。均一な線幅で視認性が高い。(https://public-sans.digital.gov/)

Libre Franklin(Google Fonts): モダンでバランスの良い字形。英数字主体のテキストに。(https://fonts.google.com/specimen/Libre+Franklin?query=Libre+Franklin)

まとめ
DINフォントは、その機能美と可読性からロゴやサイン、雑誌見出しなど幅広いデザインシーンで活躍します。
Adobe Fontsでの利用はもちろん、フリーフォント代替も豊富にあるため、予算や用途に合わせて選んでみてください。
まずは小さな見出しや数字部分で使ってみて、そのクリーンな印象をデザインに取り入れてみましょう!