15世紀のイタリア・ヴェネツィアで誕生した「ヴェネチアン・ローマン(Venetian Roman)」。
活版印刷の黎明期に生まれたこの書体様式は、当時の写本(カリグラフィー)の名残を色濃く残しており、現代のフォントにはない人間味や温かみ、独特の「揺らぎ」が魅力です。
今回は、グラフィックデザインや装飾的なタイポグラフィにぜひ取り入れたい、代表的なヴェネチアン・ローマン体のフォントをご紹介します。
- 歴史的な傑作:ニコラ・ジェンソンの系譜
ヴェネチアン・ローマンを語る上で欠かせないのが、1470年頃に活躍した印刷者ニコラ・ジェンソンです。彼の活字をモデルにしたフォントは、今なお最高峰の美しさを誇ります。
- Adobe Jenson
ジェンソンの活字を現代に蘇らせた、最もオーソドックスなヴェネチアン。非常にバランスが良く、格調高い雰囲気を作りたい時に最適です。 - Centaur
ブルース・ロジャースによる設計。ジェンソンのスタイルをベースにしつつも、より細身でエレガント。非常に洗練された、気品のある印象を与えます。 - Golden Type
ウィリアム・モリスが「アーツ・アンド・クラフツ運動」の中で制作したフォント。重厚で装飾的な質感が特徴で、アートブックなどの制作にも向いています。
- 現代的な解釈と実用的なフォント
古典的な特徴を保ちつつ、現代の印刷やデジタル環境でも使いやすく調整された書体です。
- LTC Cloister
ジェンソンのスタイルを忠実に再現しつつ、力強さを持たせたフォント。視認性が高く、タイトル周りでも存在感を発揮します。 - Kennerley
巨匠フレデリック・ガディによるデザイン。ヴェネチアンの精神を継承しつつ、非常に読みやすく、本文組みにも適したバランスです。
ヴェネチアン・ローマンを見分ける「3つの特徴」
他のローマン体(オールド・スタイルなど)と迷ったときは、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 「e」の横棒(バー)が斜め
小文字の e の中にある横棒が、右上がりに傾いているのが最大の特徴です。 - 低いコントラスト
縦線と横線の太さの差が少なく、全体的に「どっしり」とした、手書きのような力強さがあります。 - 有機的なセリフ
セリフ(文字の端の飾り)の形状が幾何学的ではなく、どこか柔らかい印象を与えます。
まとめ
ヴェネチアン・ローマン体は、その歴史的な背景から「伝統」「信頼」「芸術性」を感じさせるデザインに非常に相性が良い書体です。
特にアーティストブックや写真集、クラシックなロゴデザインなど、一味違う個性を出したい時にぜひ活用してみてください。
