広告の世界には、単なる商品宣伝を超えて、文化や社会に影響を与えたキャンペーンが数多く存在します。今回は、時代を超えて語り継がれる名作広告20選を詳しく紹介します。
- 1.「A Diamond is Forever」 – デビアス(1947年)
- 2.「Marlboro Man」 – マールボロ(1954年)
- 3.「Think Small」 – フォルクスワーゲン(1959年)
- 4.「Crying Indian」 – Keep America Beautiful(1971年)
- 5.「I ❤ NY」 – ニューヨーク観光キャンペーン(1977年)
- 6.「The Absolute Bottle」 – アブソルート・ウォッカ(1980年代)
- 7.「Nike Air Jordan」 – ナイキ(1985年〜)
- 8.「Just Do It」 – ナイキ(1988年)
- 9.「Got Milk?」 – カリフォルニア牛乳加工業者委員会(1993年)
- 10.「Think Different」 – Apple(1997年)
- 11.「Whassup?」 – バドワイザー(1999年)
- 12.「Real Beauty」 – ダヴ(2004年)
- 13.「The Most Interesting Man in the World」 – ドスエキス(2006年)
- 14.「Burberry’s Art of the Trench」 – バーバリー(2009年)
- 15.「Old Spice: The Man Your Man Could Smell Like」 – オールドスパイス(2010年)
- 16.「Share a Coke」 – コカ・コーラ(2011年)
- 17.「Volkswagen ‘The Force’」 – フォルクスワーゲン(2011年)
- 18.「Dumb Ways to Die」 – メルボルン交通局(2012年)
- 19.「Red Bull Stratos」 – レッドブル(2012年)
- 20.「Puppy Love」 – バドワイザー(2014年)
- まとめ
1.「A Diamond is Forever」 – デビアス(1947年)
ダイヤモンドを結婚指輪の定番にしたのは、この「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)」キャンペーンです。
それまで、婚約指輪にダイヤモンドを使うのは一般的ではありませんでした。
しかし、デビアスは「愛は永遠、だから指輪も永遠に残るものを」というメッセージで、ダイヤモンドの価値を植え付けました。その影響は今でも続いています。
2.「Marlboro Man」 – マールボロ(1954年)
元々は女性向けのフィルター付きタバコとして販売されていたマールボロ。しかし、1950年代には「男性的なブランド」への転換を図る必要がありました。
そこで登場したのが、「Marlboro Man」。カウボーイのタフなイメージとともに、「男らしさ」の象徴としてマールボロを宣伝しました。
この広告はタバコブランドのイメージを劇的に変え、売上を大幅に伸ばしましたが、現在では健康リスクの高まりにより放送されていません。
3.「Think Small」 – フォルクスワーゲン(1959年)
当時のアメリカ市場では、大型で豪華な車が主流でした。しかし、フォルクスワーゲンのビートルは、小型でシンプルなデザイン。
これを逆手にとったのが「Think Small」キャンペーンです。
広い余白を活かし、小さな車を目立たせるミニマルなデザインと、「小さいことは良いこと」というメッセージが斬新でした。
この広告は、のちのクリエイティブ広告のスタイルに大きな影響を与えました。
4.「Crying Indian」 – Keep America Beautiful(1971年)
環境保護意識を高めるための公共広告キャンペーンとして制作されました。ネイティブ・アメリカンの男性が、川や道路に捨てられたゴミを見て涙を流すシーンが印象的で、「環境を守ることの重要性」を視覚的に強く訴えました。
この広告はアメリカ国内で大きな話題となり、環境保護運動を推進する契機となりました。
5.「I ❤ NY」 – ニューヨーク観光キャンペーン(1977年)
1970年代のニューヨークは、犯罪率の高さや経済不況により観光客が減少していました。これを打開するために生まれたのが、「I ❤ NY」キャンペーン。
ミルトン・グレイザーがデザインしたこのロゴは、シンプルながらも愛されるデザインとなり、世界中で模倣されるほどの影響を与えました。
ニューヨーク市のシンボルとして、今でも多くの人々に愛されています。

6.「The Absolute Bottle」 – アブソルート・ウォッカ(1980年代)
アブソルート・ウォッカの広告は、シンプルなボトルの形を巧みにデザインに組み込み、創造的な広告キャンペーンを展開しました。
「Absolute Perfection」「Absolute New York」など、ユーモアとアート性を融合させたビジュアル広告は、30年以上にわたって続けられ、広告業界の傑作とされています。
7.「Nike Air Jordan」 – ナイキ(1985年〜)
ナイキは、NBAのスーパースターであるマイケル・ジョーダンを起用し、「エア・ジョーダン」シリーズを展開しました。
このキャンペーンは単なるスニーカーの宣伝ではなく、バスケットボールカルチャー全体を変えました。
現在では「エア・ジョーダン」はスニーカーカルチャーの中心的な存在となり、スポーツブランドのマーケティング戦略の成功例として語り継がれています。
8.「Just Do It」 – ナイキ(1988年)
ナイキの「Just Do It」は、単なるスローガンではなく、スポーツをする全ての人々に向けたメッセージでした。
このキャンペーンが登場する以前、ナイキはアスリート向けブランドとして知られていましたが、「Just Do It」によって、一般の人々にも「運動することの楽しさ」や「挑戦する勇気」を訴求しました。
その結果、ナイキは単なるスポーツブランドではなく、ライフスタイルブランドとしての地位を確立しました。
9.「Got Milk?」 – カリフォルニア牛乳加工業者委員会(1993年)
「Got Milk?」キャンペーンは、牛乳が手元にない状況をユーモラスに描き、多くの人に共感を呼びました。特に、牛乳を飲む前にクッキーやシリアルを食べてしまった人が困るシーンは、誰もが経験したことがあるもの。
このシンプルながら印象的なコピーは、多くの有名人を起用した広告シリーズとして展開され、アメリカのポップカルチャーの一部となりました。
10.「Think Different」 – Apple(1997年)
スティーブ・ジョブズがAppleに復帰した直後に展開された「Think Different」キャンペーンは、アインシュタイン、ガンジー、ピカソなどの偉人をフィーチャーし、「世界を変えるのはクレイジーな人々だ」というメッセージを発信しました。
これは、Appleのブランド哲学を象徴する広告となり、Appleの復活を後押ししました。
11.「Whassup?」 – バドワイザー(1999年)
「Whassup?(元気か?)」と友達同士が叫ぶだけのシンプルなCMが大ヒット。このフレーズは若者の間で流行し、広告の枠を超えて広がりました。
インターネット時代のミーム文化の先駆けとも言えるキャンペーンでした。
12.「Real Beauty」 – ダヴ(2004年)
美容業界では長い間、完璧なスタイルやルックスが重視されていました。しかし、ダヴの「Real Beauty」キャンペーンは、「本当の美しさとは何か?」を問いかけるもの。
一般の女性をモデルに起用し、「美しさに決まった形はない」というメッセージを発信しました。これは美容業界の固定観念を覆すもので、多くの女性たちに支持されました。
13.「The Most Interesting Man in the World」 – ドスエキス(2006年)
「私はいつもビールを飲むわけではないが、飲むときはドスエキスを選ぶ」というフレーズで有名になったこのキャンペーンは、ユーモアと洗練されたキャラクターによって、ドスエキスのブランドイメージを向上させました。
広告の主人公は、さまざまな冒険をしてきた「世界で最も面白い男」として描かれ、視聴者に強い印象を与えました。
14.「Burberry’s Art of the Trench」 – バーバリー(2009年)
バーバリーは、消費者とブランドの関係を深めるため、「Art of the Trench」というオンラインキャンペーンを開始しました。
消費者が自身のバーバリーのトレンチコート姿を写真に撮り、SNSに投稿することで、ブランドへの愛着を高めました。このキャンペーンは、デジタルマーケティングの成功例としても知られています。
15.「Old Spice: The Man Your Man Could Smell Like」 – オールドスパイス(2010年)
男性向けボディウォッシュ「オールドスパイス」は、「The Man Your Man Could Smell Like(あなたの彼氏もこういう香りになれる)」というユーモラスなキャンペーンを展開。
女性に向けて語りかけるユーモラスなCM。イザイア・ムスタファが完璧な男性像を演じ、テンポよくシームレスに場面が変わる演出が特徴です。
男性用ボディウォッシュの購買層である女性に訴求し、Old Spiceのブランドイメージを刷新することを目的としていました。ウィットに富んだ台詞や奇抜な演出が話題となり、SNSやパロディ動画を通じて大きなバイラル効果を生みました。
16.「Share a Coke」 – コカ・コーラ(2011年)
コカ・コーラのボトルに個人名をプリントすることで、「誰かとコーラを共有する」体験を作り出したこのキャンペーンは、消費者とのインタラクションを生み出しました。
人々は自分の名前を探したり、友人や家族の名前入りのボトルをプレゼントしたりすることで、SNS上でも大きな話題となりました。ブランドの「個人的なつながり」を強調した成功例です。
17.「Volkswagen ‘The Force’」 – フォルクスワーゲン(2011年)
スーパーボウルで放送されたこのCMは、スター・ウォーズのダース・ベイダーになりきる子供が、フォルクスワーゲンの車を「フォース」で動かそうとするという内容。
父親がリモートスタート機能を使って車を動かし、子供が本当に「フォース」を使えたと信じるという、心温まるストーリーでした。
ユーモアと感動を兼ね備えたこの広告は、スーパーボウルの歴代CMの中でも特に評価が高い作品です。
18.「Dumb Ways to Die」 – メルボルン交通局(2012年)
この広告は、公共安全を訴えるメッセージでありながら、カラフルなキャラクターとキャッチーな音楽を活用し、インターネット上で爆発的に拡散しました。
「愚かな死に方」をユーモラスに描きつつ、交通安全の重要性を訴えるスタイルは、新しい公共広告の形を示しました。
19.「Red Bull Stratos」 – レッドブル(2012年)
レッドブルは、「エナジードリンクは冒険的な挑戦を後押しする」というブランドメッセージを体現するため、スカイダイバーのフェリックス・バウムガートナーによる成層圏からのダイブをサポート。
世界中が注目するライブ配信イベントとなり、視聴者数は800万人を超えました。この挑戦は「Red Bull gives you wings(レッドブルは翼をさずける)」というスローガンをまさに象徴するものでした。
20.「Puppy Love」 – バドワイザー(2014年)
バドワイザーの「Puppy Love」は、スーパーボウルのCMとして放送された感動的なストーリー。子犬と馬(バドワイザーの象徴的なクライドスデール馬)の友情を描いた内容で、視聴者の心をつかみました。
バドワイザーは長年にわたり、スーパーボウルで印象的な広告を作ってきましたが、このCMは特に高く評価されました。
まとめ
広告キャンペーンは、単なる商品プロモーションを超えて、社会に影響を与えたり、人々の記憶に残るものになります。
今回紹介した20の広告は、それぞれが時代の象徴であり、創造的なアイデアや感動的なストーリーによって成功を収めました。
あなたの好きな広告キャンペーンはありましたか?コメントでぜひ教えてください!
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