UD(ユニバーサルデザイン)フォントは、情報をより多くの人にわかりやすく伝えるために生まれた文字デザインです。
視認性や判読性が高く、教育現場や公共施設、企業のコーポレートツール、デジタルデバイスなど、さまざまな場面で採用されています。
この記事では、UDフォントの特長や実際の採用事例、デザインの可能性について解説します。
1. UDフォントとは?
UDフォントは、ユニバーサルデザインの考え方をもとに設計されたフォントで、特に以下の点が特徴です。
- 判読性の向上
「O(オー)」と「0(ゼロ)」、「1(イチ)」と「I(エル)」など、紛らわしい文字の違いが明確。

- 視認性の向上
遠くからでも読みやすく、文字間や線の太さが工夫されています。

- ユニバーサルな対応
視覚障がい者や高齢者、外国人にも配慮したデザインです。
2. 具体的な用途と採用事例
UDフォントは、以下のような場面で活躍しています。
教育分野
- Z会や三省堂などが教材や辞書に採用。たとえば、三省堂の「小学国語辞典」ではUDフォントが使われ、子どもが読みやすい構成になっています。
ユニバーサルデザインへの取り組み|教科書・教材|三省堂 https://tb.sanseido-publ.co.jp/universal-design/

公共機関
- 茨城県行方市や奈良県生駒市が、行政文書や案内資料の視認性向上のために採用。これにより高齢者や視覚障がい者への配慮が強化されています。
行方市公式ホームページにWEBフォント(UDフォント)を導入しました | 行方市公式ホームページ https://www.city.namegata.ibaraki.jp/page/page010083.html

イベントレポート「生駒市の教育の質を支える UDフォント活用とは」|誰ひとり取り残さない「伝わる」ICT教育 ゲストトーク②生駒市立俵口小学校 教頭 八代さん | FONT SWITCH PROJECT https://fontswitch.jp/post/20425
- 鹿児島県霧島市でも2025年から市のホームページにUDフォントを使用するようになりました。実際に私達が良く見るサイトで使用されるとUDフォントの効果がわかりやすいですね。
鹿児島県霧島市|市ホームページにユニバーサルデザインフォントを導入しました
https://www.city-kirishima.jp/hisyokouhou/koho/ud.html

企業のコーポレートツール
- 富士通では、「UD新ゴ」をコーポレートフォントに採用。社員や顧客が利用する資料やデジタルツールに統一感を持たせ、読み間違いの防止にも寄与しています。
富士通の新コーポレートフォント和文にモリサワのUD新ゴが採用 | ニュース&プレスリリース | 企業情報 | 株式会社モリサワ https://www.morisawa.co.jp/about/news/6681

日常生活
- パナソニックのリモコンや家電の操作パネルにはUDフォントが活用され、高齢者にも使いやすいデザインが実現しています。
フォントメーカーの㈱イワタ様と共同開発を行い、2006年に世界初のUD仕様の書体を完成させました。この書体は、全てのパナソニックグループ製品の機能表示に使われています。
UDへの研究活動 – ユニバーサルデザイン – デザイン – パナソニック ホールディングス https://holdings.panasonic/jp/corporate/universal-design/research.html
3. UDフォントがデザインに与える影響
グラフィックデザインの観点からも、UDフォントは重要です。
- 情報の整理
文字情報が整然とした印象になり、全体のデザインが引き締まります。 - アクセシビリティ向上
誰でもアクセスできるデザインを実現し、社会的な信頼感を向上。 - ブランドイメージの向上
社会的配慮を感じさせるデザインは、企業やサービスの評価を高めます。
4. 実際に使う際のポイント
- 目的とターゲットに合わせた選択
使用シーン(教育、公共、商業)に応じて適切なフォントを選ぶことが重要です。 - 文字サイズとコントラスト
背景とのコントラストや文字サイズにも注意することで、読みやすさが向上します。 - 試しに使ってみる
フォントメーカーの無料トライアルを活用して、最適なフォントを選んでください。
5.無料のUDフォント
Google fontsで無料でダウンロード&使用ができるUDフォントをご紹介します。
5-1. BIZ UDゴシック/BIZ UDPゴシック
BIZ UDフォントはタイプバンクとモリサワが共同でデザインをしたUDフォントです。教育やビジネス文書作成などでの利用に適したデザインになっています。
ゴシック体も明朝体も、英数字が幅細のものと、和文と同じ幅の「P」が付くフォントがあります。「P」が付く方が違和感なく使いやすそうだと思います。ウェイトはRegularとBoldの2種。

ダウンロード先→ https://fonts.google.com/specimen/BIZ+UDGothic

ダウンロード先→ https://fonts.google.com/specimen/BIZ+UDPGothic
5-2. BIZ UD明朝/BIZ UDP明朝

ダウンロード先→ https://fonts.google.com/specimen/BIZ+UDMincho

ダウンロード先→ https://fonts.google.com/specimen/BIZ+UDPMincho
6. 私のおすすめUDフォント
私がデザインの仕事でよく使用している、おすすめのUDフォントをご紹介します。
6-1. ヒラギノUD角ゴ
最も使用頻度が高いUDフォントがこちらです。
ヒラギノの通常版も美しいフォントですが、UD版は特に英数字の可読性が向上し、より洗練された印象を与えます。
ゴシック体選びに迷ったときは、これを選べば間違いなし!といえるほど汎用性に優れています。
惜しい点としては、太いウェイトがW6までしかないため、もう少し太いバリエーションが欲しいところです。

6-2. UD新ゴ
新ゴフォントのUD版です。
新ゴはもともと字面が大きく、視認性に優れたフォントですが、英数字のデザインにはやや昭和っぽい印象がありました。
UD新ゴでは英数字がFrutiger風のデザインになり、現代的な印象にアップデートされています。
とにかく可読性を重視したいときに最適です。

6-3. UD黎ミン
明朝体では、UD黎ミンをよく使用します。
黎ミンは本家版もウェイトが豊富な点が魅力ですが、UD版も6ウェイトあるため、使い勝手が良いフォントです。

まとめ
UDフォントは、誰にでも伝わる文字デザインの未来を切り開いています。教育、公共、ビジネスなど、さまざまな場面で活用されているUDフォントを、ぜひあなたのプロジェクトにも取り入れてみてください。