森沢明夫さんによる小説『おいしくて泣くとき』を読みました。
食をテーマにした心温まる物語でしたので、感想をご紹介します。

あらすじ
無料で「こども飯」を提供する『大衆食堂かざま』。
店のオーナーの息子・心也は、怪我で大好きなサッカーができなくなり、中学最後の夏休みを前に晴れない気持ちを持て余している。
また心也は、時々こども飯を食べにくる同級生のことを気にしていた。
一人は夕花。クラスから疎外され、義父との折り合いも悪い。もう一人は金髪パーマの不良、石村。
友情と恋心、夏の逃避行。大人たちの深い想い。
二本立ての物語
本作は、カフェのマスターと大衆食堂オーナーの息子という、一見全く異なる環境に生きる二人の主人公を軸に、二つの物語が同時進行で展開されます。初めは各々が独立したストーリーとして面白さを放っており、どう絡み合うのかという期待感を自然と抱かせます。
意外な伏線の回収
物語が進む中で、巧妙に散りばめられた伏線がクライマックスで一気に回収され、驚きと納得が同時に押し寄せる構成になっています。この展開は、非常に印象深く、物語全体への没入感を一層高めました。
交差する運命と温かな結末
二つの物語が交差した後の展開は、真実が明らかになると同時に、心温まるエピソードが次々と紡がれ、感動を呼び起こします。各登場人物がそれぞれの立場で成長し、運命が交錯する様子が丁寧に描かれています。
食事がもたらす奇跡
また、作中では「食事」というテーマが重要な役割を果たしており、食を通して人の心や人生が大きく変わる様子が巧みに表現されています。料理が持つ温もりや力強さが、物語全体に深い余韻を与え、読後の余韻を一層豊かなものにしています。
総評
全体を通して、驚きと感動に満ちた本作は、ストーリーテリングの巧妙さと登場人物たちの成長を実感させる作品です。読後、心に残る温かさとともに、食事の持つ不思議な力に改めて思いを馳せるひとときを味わうことができました。
オススメ度
8.8点(10点満点中)
「食」にまつわる心温まる物語を読みたい方やボーイ・ミーツ・ガールの物語が好きな方にオススメです!
