川崎市民ミュージアムで2018年の3月25日まで開催中のみうらじゅんの大規模な個展「MJ’s FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958」を観に行った。
今ではすっかり定着した「マイブーム」という言葉の生みの親。会場は、還暦を迎えた彼がこれまで収集してきた「マイブーム」のコレクションや、自身が描いてきたイラストやスケッチブックなど、膨大な量の「物」が発するエネルギーに満ち溢れていた。
会場内は写真撮影OKだったので(動画はNG)、写真と共に展覧会の様子をお伝えしたい。
川崎市民ミュージアムは、川崎市の等々力緑地の中にある。この日は快晴だったので、家族連れで賑わっていた。
ポスター。MJ’s FESというタイトルは音楽のイベントっぽく感じてしまう。MJはMichael Jacksonと思わせるようにしているのだろうか。
川崎市民ミュージアムは郷土資料館と併設されているのでかなり広い。エントランスにはグラフィックデザイナーの福田繁雄氏の彫刻が。
だまし絵を立体にしたような大きな作品で、かなり迫力がある。この作品が見られるだけでも嬉しい。
金の大仏は今回のみうらじゅん展の作品。
こちらも。笑い声が聴こえてきて、なかなか不気味な埴輪。
展覧会の会場に入ると、まずはみうらじゅん氏の幼少期から学生時代のスケッチや落書きノートが大量に展示されていた。その量にも驚くが、イラストもとても上手い。
上の冊子も表紙周りの文字のデザインが素敵だった。
マンガ。
詩の書かれたノート。学生時代から、イラスト、詩、音楽、と様々な表現を試していて、多彩である。
仏像や寺院についてまとめられたスクラップブック。物としての存在感がすごい。
昨今流行りの御朱印帳集めも誰よりも早くやっていたようだ。
ビートルズのレコードジャケットでありそうなイラストレーション。
とにかくたくさん絵を描いている。そして、それを保管していることがすごい。
スケッチブックの表紙にもイラストレーションを施して自分でデザインしている。「天才のスケッチブック」というタイトルが良い。
横尾忠則テイストを感じるイラストも。
スケッチブック。どれも表紙のデザインが素敵。
イラストレーションのテイストが今見ても古く感じない。
マンガの原稿。
自身が作詞・作曲した歌を録音してテープにしたもの。パッケージデザインもしっかりしていて、細部までこだわりが感じられる。
街中の看板から、般若心境に使われている文字を抜き出したもの。「考現学」っぽさがありとても好き。
みうらじゅん氏が実際に使っていた手帳。こんな資料を見られる機会はめったに無い。
様々な眼鏡やサングラス。これを見ただけてもみうらじゅんっぽさを感じてしまうアイコニックなオブジェクト。
図書コーナーがあり、関連する著書を読むことができた。このコーナーだけでもじっくり見たら1-2時間はいられそうである。
会場は2部屋構成。会場2の入り口はこのマネキンが迎えてくれる。会場1が作家が初期に描いたイラストレーションや、ノートが中心だったのに対し、会場2は、現在まで続く様々な「マイブーム」の企画や、その収集物により構成。
見たことのあるカエル。
この部屋では様々なコレクションがジャンル別に「〇〇ブーム」として分類されて展示されている。天井から吊り下がるヘビがインパクト大。
なぞの人形もたくさんある。
これは「ゴムヘビブーム」。子どもの頃に遊んだおもちゃのゴムヘビが集結している。これだけ種類と本数が集まると、本物のように見えてくる。
天井から下がっていたのも巨大なゴムヘビだった。
鈴にもたれかかって寝ている福助。これもお土産屋に様々な種類があるらしい。
「東京」「YOKOHAMA」などが描かれた変な掛け軸を集めた「ヘンジクブーム」。海外からの旅行者向けだと思うのだが、都市を掛け軸にするという発想は冷静に考えるとシュール。
ヤシの実細工の人形達。可愛らしいデザインのものが多い。
こちらはひょうたん細工。ヤシの実と比較すると、やや妖怪チックな不気味さがある。
伊豆の踊り子などの和装をした人形たち。
みうらじゅんと云えばやはりこの「ゆるキャラ」であろう。名付け親の彼が集めた膨大な量のゆるキャラ人形が、クレーンゲームさながら、雑然とディスプレイに納められている。
ニャンまげなどが見える。見たことのあるような無いようなキャラクターたち。
上にも吊るされている。バリエーションがすごい。
ひこにゃん発見。自分の知っているキャラクターを見つけると嬉しくなる。
警視庁のピーポくんもいた。彼はゆるキャラなのだろうか…。
千葉県のマスコット、ちーばくんを発見。
みうらじゅん氏考案のオリジナルキャラ「山岳戦隊テングレンジャー」。等身が高く、なかなか不気味な魅力がある。
実際にヒーローショーも行っていたらしい。展覧会場ではその映像も見ることができた。
こちらのきぐるみも、みうらじゅん氏考案のオリジナルキャラ達。「郷土ラブちゃん」や「スパーマン」、「たいりょうほうさくクン」など。
「ふるさと祭り東京」というイベント用のキャラクターのようだ。
「ごごのこーちゃん」。ライティングと相まってかなり怖い。みうらじゅん氏のオリジナルキャラは、他のゆるキャラと比べて構成要素が多いからかどこか狂気を感じる。
ここらかは細かいコレクションのコーナーへ。
オリジナルキャラだろうか。
旅行先のお土産屋で入手した「ご当地写ルンです」。これは初めて見た。
エロトランプ。
様々な栓抜き。どこを穴にするかにデザインのこだわりが見える。
土産物屋に売っているようなキャップ。「Since」と書かれたものが気になる。どこからの「Since」なのだろうか。
カエルグッズ。歯をむき出しにしている大きな物は誰が買うのだろうか。
これは道路でよく見る「飛び出し注意!」の看板に描かれている少年を集めたもの。普段目に止まりつつもイラストとして意識したことは殆ど無かったが、こうやって集まると、それぞれのキャラクターの共通点や相違点が見えてきて面白い。
どこか、マンガのキャラクターに似ている物もあれば、あまり見かけない緑の帽子のキャラクターもあったり。
この看板が家にあったら良いなと思った。
こちらは、写真では伝わらないが、角度によって絵が変わる3D印刷のハガキなど。
動物の物が可愛らしくて良かった。こういった物もたくさん集まると強烈な世界観を発してくる。収集によるパワーは面白い。
みうらじゅんと安齋肇による「勝手に観光協会」のポスターシリーズ。
「勝手に観光協会」とは、みうらじゅんと安齋肇の2人が頼まれてもいないのに勝手に全国各地をPRするという企画。
ポスターのデザインが秀逸だった。
上は奈良のポスター。
和歌山。パンダが神々しい。
京都。鴨川。オシャレな雰囲気である。
香川。お遍路とうどん。
岡山。
兵庫の豚まん。
大阪は太陽の塔。
徳島県。
鳥取県。
滋賀県。先程の飛び出し注意くんがたくさんいる。
恐らく新潟県。
千差万別のデザインで見応えがあった。
みうらじゅんといえば「エロスクラップ」。子どもは立ち寄り禁止のピンクなブースもあった。
自身の作成したエロスクラップの上に立つみうら氏。
エロスクラップを産み出した製作所(その時々に住んでいた家)の前で撮影された写真。
会場に設置されたピンクのブース。空いている穴から中をのぞき見することができる。
何が見えるかは会場でのお楽しみ。自分を含めて穴を覗いている人の姿を見られるのもなかなか面白かった。
ここからは「アートブーム」。絵画作品が並ぶゾーン。描かれている題材はタレントや、ユーモアのある物だが、絵としてはクオリティが高いのでそのギャップが面白い。
いつものカエル。
浜崎あゆみ的な人物。
ニール・ヤング。シュールだ。
このブースは絵画展の様な趣がある。
横尾忠則が好きだったらしく、その影響が多分に見て取れる。個人的にはかなり好きなテイストの絵だ。
「冷蔵庫に貼られたマグネット」略して「冷マ」。ここまで密集させて貼るとものすごい迫力。
近寄るとこのような内容。水道修理のマグネットは我が家のポストにもしばしば入ってくる。これを見ると誰もが「あるある」と感じるのではないだろうか。
このシリーズも凄く好きだった。裸婦が描かれた絵画に下着を描き足してしまおうという企画。下着を描くだけで突然グラビアっぽく見えてきてしまうのが面白い。
だんだんエスカレートしていくのも面白い。
自身のキャラクターのお面。
かに道楽などのパンフレットを集めた「かにパンブーム」。
来場者が自分の気に入ったマイブームに投票できる。
まとめ
とにかく「物が集まることで発せられるパワー」を感じさせてくれる展覧会だった。
今回展示されているマイブーム、一つ一つはもしかしたら誰もが一度くらい考えた事のある企画かもしれない。ただしそれをものすごい熱量で実行すること、そしてそれをたった独りでも続けるという点が、みうらじゅん氏の凄い所なのだと感じた。
自分の好きな事を続ける難しさと、続けることで生み出される価値の大きさを痛感させられた。
今回掲載した写真も展示の一部でしかないほど、膨大な量が展示されている。川崎市民ミュージアムは駅からのアクセスはそれほど良くないが、行けば絶対に満足できるボリュームなので、気になった人は期間中に是非足を運んでほしい。
Information 「MJ’s FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958」 会場:川崎市民ミュージアム 会期: 2018年01月27日-2018年03月25日 公式サイト:https://www.kawasaki-museum.jp/exhibition/9910/
関連書籍
私がみうらじゅん氏に興味を持つきっかけとなった本。彼がどのようにして、自分の好きな事を仕事にしてきたかを解説している「仕事術」の本。
「マイブーム」や「ゆるキャラ」といった言葉がどのようにして世間に認知されていったかも知ることができる。本書を読んでからこの展示を観るとより一層楽しめるだろう。