自宅のプリンターでは大判ポスターがそのまま印刷できない…そんなお悩み、ありませんか?
本記事では、Illustratorを使って作成した大判ポスターを、複数の用紙に分割してプリントアウトする私独自の方法をご紹介します。
正確な分割とカットのしやすさにこだわり、誰でも手軽に高品質な仕上がりが実現できるテクニックです。これから、家庭用プリンターでもプロフェッショナルなポスター作成が可能になる秘密を紐解いていきます。
今回の記事では、Illustratorに機能として備わっている「タイル(プリント可能範囲)法」と私が考案した「複数アートボード法」の2種類のプリントアウト方法をご紹介します。
A. タイル(プリント可能範囲)法
まずは、「タイル(プリント可能範囲)法」です。こちらは非常に簡単です。
1. ポスターの原寸サイズでデザインを用意する
こちらの手法ではB2サイズのポスターを想定して説明します。515mm×728mm、裁ち落とし設定3mmでアートボードを用意し、デザインを作成します。

2. プリント設定で「タイル(プリント可能範囲)」を選択し、プリントアウト
ファイル>プリントからプリントウインドウを表示し、「拡大・縮小」の項目を「タイル(プリント可能範囲)」に設定します。

「トンボと裁ち落とし」タブより、「すべてのトンボとページ情報をプリント」「ドキュメントの裁ち落とし設定を使用」にチェック。

用紙設定画面
「用紙設定」ボタンをクリックして、表示された「ページ設定」ウィンドウで、必ず、用紙サイズをA3、対象プリンタの項目をプリントアウトをするプリンター機種を選択してください。

プリンター名を2回設定しているので、二度手間に感じるかもしれませんが、「タイル(プリント可能範囲)」の機能はプリンター固有のプリント可能範囲に応じて、分割がされるので、こちらの用紙設定画面の方も設定しておかないと、プリントアウトに失敗する可能性があります。
ここまで設定してプリントアウトします。




このように、B2ポスターがトンボ付きで、A3用紙4枚に分割されてプリントアウトされます。
3. マージン(印刷されないエリア)をカットして貼り合わせ
大抵のプリンターには紙の4辺に印刷ができないエリア(マージン)が設定されています。
「タイル(プリント可能範囲)」では、印刷できないマージンを除いた上で分割プリントアウトをしてくれます。

このマージンをカッターで切り落とし、4枚のプリントアウトを貼り合わせます。

これで完成です。
「タイル(プリント可能範囲)法」のまとめ
- メリット:
Illustratorの機能だけでできるのでとにかく手軽! - デメリット:
マージンが分かりにくいデザインだと、カットが難しい
B2ポスターの中央側にはトンボは無いので、白を活かしたデザインの場合、どこまでがマージンか分かりにくく、カットが難しくなります。
また、さらに大きい判型のポスターだと9分割する場合なども生じるので、枚数が増えた場合もトンボがつかない紙が増えるため、カットが難しくなります。
その場合、次に紹介するもう一つの方法「複数アートボード法」であれば、よりクオリティの高いポスター貼り合わせが可能となります。
おまけ)タイル(用紙サイズ)との違い
拡大・縮小の項目には「タイル(用紙サイズ)」という設定もあります。「タイル(プリント可能範囲)」との違いですが、「タイル(用紙サイズ)」の場合は「重なり」という項目に数値を設定する必要があります。
この「重なり」はmm単位で設定できるのですが、カットする位置が大判の4辺トンボからの寸法になるため、私には非効率だと感じました。「タイル(用紙サイズ)」でプリントアウトをするのであれば、次の「複数アートボード法」を使用した方が、正確、かつスピーディーだと感じます。
B. 複数アートボード法
「複数アートボード法」は大判のポスターデザインを、分割印刷用の別のアートボードにコピー&ペーストした上でプリントアウトをする方法です。
1. Illustratorで作成したB1ポスターのデータをトンボ付きのPDFに書き出す
こちらの手法では、より大きいB1サイズのポスターを、A3用紙対応のプリンターでプリントアウトする方法をご説明いたします。
アートボードをB1(728mm×1030mm)サイズで用意し、裁ち落としの数値を各3mmに設定して塗り足しを付けます。


デザインを制作し、完成したポスターのデータをトンボ付きのPDFに書き出します。
IllustratorからのPDF書き出しの方法は、ファイル>複製を保存>ファイル形式:Adobe PDF
PDFを保存のウインドウで、
- Adobe PDFプリセット:PDF/X-4:2008
- すべてのトンボとページ情報をプリントにチェック
- ドキュメントの裁ち落とし設定を使用にチェック
これらの設定でPDFを保存する。

これで、トンボ付きのPDFが書き出されます。

2. 分割印刷用のIllustratorアートボードを用意
新規ドキュメントを作成し、プリントする用紙サイズより一回り小さいサイズでアートボードを作成します。
※今回はA3サイズの用紙を使う想定なので、アートボードはB4(257mm×364mm)サイズで作成します。
B1を収めるにはB4×9枚分必要なので、アートボードの数を「9」とします。裁ち落としを3mmで設定し、「詳細設定」を表示。

詳細設定パネルでアートボードの間隔を「-6mm」と設定し、「新規ドキュメント作成」します。
アートボードの間隔を「-6mm」とする理由は、設定した「裁ち落としの値(3mm)×2」の数値となります。
アートボードの間隔をマイナスにすることで、裁ち落としが重なり合い、全ての分割プリント紙に塗り足しを正確に付けることが可能になります。

アートボードの数:の右にある並べ方のボタンは「Z(ゼット)」の形のものに。横列数は「3」にしましょう。

このようにすることで、隣り合うアートボード同士が隙間なく設置されます。

B4サイズが9枚、組み合わされたアートボードが作成されました。

拡大表示すると、アートボード同士が隙間なく設置されていることが確認できます。
3. 分割印刷用のアートボードにポスターのトンボ付きPDFを配置する

2.で作成した分割印刷用のアートボードに1.で書き出したトンボ付きのポスターデータを配置します。
Illustratorでファイル>配置(読み込みオプションを表示にチェック)
PDFを配置のウインドウでトリミングを「メディア」にします。こちらにするとトンボも付いた状態で配置されます。


9枚のアートボードに上手く収まりました。
4. 印刷用のPDFに書き出し

3.でポスターを配置した分割配置用のドキュメントを「複製を保存」から印刷用のPDFに書き出します。
※PDFに書き出さずにこのままIllustratorからプリントアウトすることも可能です。その場合もトンボを付けましょう。

トンボと裁ち落としを設定してPDF書き出しします。

B4トンボ付きの用紙に、B1サイズのポスターが分割されて書き出されました。
5. プリントアウトとカット、貼り合わせ
4.で作成したPDFをA3サイズの用紙に原寸100%で印刷します。
トンボでカットし、テープなどで貼り合わせれば、B1ポスターの完成です。
「複数アートボード法」のまとめ
- メリット:
分割プリントアウトした用紙にも4辺全てにトンボが付くので正確にカット、貼り合わせができる。とりわけ、9枚など、多くの枚数に分割する際に便利 - デメリット:
完成したデザインをPDF化し、別のアートボードにコピーするので一手間かかる
まとめ
Illustratorで大判ポスターの印刷を自宅のプリンターで分割印刷するための2つの方法をご紹介しました。
私のオススメは、分割枚数4枚までであれば「タイル(プリント可能範囲)法」、分割枚数が4枚以上であったり、余白が多いデザインの場合は「複数アートボード法」を使用するのが良いと思います。
本記事を元に試された方はぜひ感想をコメントしていただけると嬉しいです。
おまけ)「複数アートボード法」によるポスターサイズごとのアートボードの枚数
「複数アートボード法」を活用するための、ポスターの仕上がりサイズごとのアートボードの仕様(枚数)をまとめておきます。A3プリンターを使う想定なのでB4アートボード(257mm × 364mm)を組み合わせる想定です。
B0サイズ(1,030mm × 1,456mm)
B4アートボード:25枚(5列×5行)

B1サイズ(728mm × 1,030mm)
B4アートボード:9枚(3列×3行)

B2サイズ(515mm × 728mm)
B4アートボード:9枚(3列×3行)

B3サイズ(364mm × 515mm)
B4アートボード:4枚(2列×2行)

A0サイズ(841mm × 1,189mm)
B4アートボード:16枚(4列×4行)

A1サイズ(594mm × 841mm)
B4アートボード:9枚(3列×3行)

A2サイズ(420mm×594mm)
B4アートボード:4枚(2列×2行)

A3 サイズ(297mm × 420mm)
B4アートボード:4枚(2列×2行)

Illustratorフォーマット配布
上記でご紹介した、B0〜B3、A0〜A3サイズのポスター分割印刷用のフォーマットを配布します。
B4のアートボードを組み合わせた.aiデータです。こちらにトンボ付きのポスターデザインPDFを配置していただければ分割印刷が可能です。
よろしければ以下よりダウンロードしてご利用ください。