荒野で争うウルトラマンとゴジラ、雪山を彷徨う2人の原人などによって繰り広げられる、「正義」や「罪と罰」をテーマにした写真。
深いテーマを扱いながらも、ウルトラマンとゴジラが、マスクと手袋をつけただけのものだったり、原人も、全裸に、ハンズで良く見るパーティーグッズのチンパンジーのマスクを被せただけだったり、どこかチープで笑えてきます。
何で知ったのかは忘れてしまったのだけど、作家のサイトで、これらの作品を見て以来、とても興味を惹かれていた写真家「マツモトダイスケ」さん。
そんなマツモトさんの個展が半蔵門にあるANAGRAというスペースで開催されるという事で、以下のインタビュー記事を見てさらに興味が湧いたこともあり、行ってきました。
マツモトダイスケは在りし日の英雄たちの仮面を借り、オレたちがついつい忘れがちな90年代Jドリームエモ神話を今日もえがく
http://wearetsk.com/daisuke-matsumoto-one-of-wonder/
ANAGRAは半蔵門駅から徒歩5分くらいの場所にある、ギャラリー兼バーのようなスペース。
マンションの地下にあり、まさに穴蔵という雰囲気。
会場に入ると、壁にランダムに飾られた写真と、その周囲に配置された謎なオブジェクトの数々に息を飲みました。
銃と軍帽を付けて、全身緑に塗られて表彰台に乗せられたマネキン、パトランプと組み合わされて発光する仮面ライダーのマスク、中央に置かれた碁盤の上に散らばっている麻雀牌やトランプ、カウンターの裏に飾られている数々のマスク…正にカオス空間です。
展示されていた写真は、これまでZINEなどに掲載していたものや、新作が中心になってるようで、全て販売されていました。
私が特に印象に残ったのは、世界地図の上に、大陸の形にマヨネーズがかけられている作品です。
世界の大陸の形にかけられたマヨネーズは、そのうねりがまるで脳みその様に見えてきて、「世界というのは一人一人の頭(脳)の中にあるものだ」というような事を暗示しているようにも見えました。
他にも、先ほどの、緑のマネキンが富士山をバックに佇む作品や、前述のウルトラマンのテイストにも通じるような、民族系のマスクを用いた作品も良かったです。
作家のマツモトさんも在廊されていたので、少しお話をさせて頂きました。作品についても話して頂いたので以下にメモします。
▶緑のマネキンについて
戦争をテーマにした作品。緑のマネキンは軍人で、「誰が一番多く敵を殺せるか?」というバトル・ロワイアルゲームの勝者。だから、表彰台に乗っており、2位と3位はいない(死んでいるので)。
▶特撮について
幼い頃から実家に『ウルトラマンエース』のビデオがあり、それが好きで何回も見ていた。
また、故郷の鳥取は水木しげるの出身地で、学校の図書館には必ずと言っていいほど、水木しげるの妖怪のマンガがあり、それをいつも読んでいた。
▶会場中央にある麻雀?のオブジェについて
知人2人(弁護士などのエリートな業種の方)に、碁盤の上に、麻雀牌、ハードディスク、基盤、トランプなどを置いて、最後にハードディスクに辿り着くという事だけ決めて、自由にゲームをしてもらった。その様子を撮影して写真にした。
▶作品に登場する裸のモデルについて
基本的に友達に「やってくんない?」と言って協力してもらっている。
そして、衝撃だったのが入り口近くの床に落ちていた(様に見えた)潰れたワラジのような物体。マツモトさんに聞いた所、これは『 SEKAINOHEIWA 』で使用したゴジラのマスクの慣れの果てだとのこと。久しぶりに引っ張り出したらペチャンコになっていたそうです。
マツモトさんの写真は、一見めちゃくちゃな事をやっているように見えるのですが、そこに、私たちが子供の頃に親しんだ『特撮』や『妖怪』などのエッセンスが入ることで、とてもストーリーを感じるような作品になっています。
写真だけではなく、アート全体で見ても、『特撮』というフィルターを通して表現している作品は他に知らなかったので、とても新鮮な印象を受けました。
何よりも、タランティーノ映画などの『B級感』が大好きな私にとって、今回の展示空間が放つ雰囲気は素直にシビレました。
ANAGRA presents DAISUKE MATSUMOTO SOLO EXHIBITION ONE OF WONDER 2016.03.04-03.11 Website:http://www.anagra-tokyo.com/#!anagra-now/c1j1m Photographer:マツモトダイスケ(http://daisukematsumoto.com/)
今回の展示のものでは無いですが、写真集も買いました。
SEKAINOHEIWA
Photographer:Daisuke Matsumoto Publisher:Mark Pearspn, Zen Foto Gallery Year:2012
TSUMITOBATSU
Photographer:Daisuke Matsumoto Publisher:Zen Foto Gallery Year:2014
2冊ともとても良いです。