映画『夜明けのすべて』を観ました。とても良い作品だったので感想をご紹介します。
作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
映画「夜明けのすべて」のあらすじ
PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなる藤沢さん(上白石萌音)は、会社の同僚・山添くん(松村北斗)のある行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。
転職してきたばかりなのにやる気がなさそうに見える山添くんだったが、そんな彼もまた、パニック障害を抱え生きがいも気力も失っていた。
職場の人たちの理解に支えられながら過ごす中で、藤沢さんと山添くんの間には、恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生えはじめる。
やがて2人は、自分の症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと考えるようになる。
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映画「夜明けのすべて」の登場人物
山添孝俊(松村北斗)
栗田金属の社員。大手コンサルティング会社にいたが、パニック障害となり電車に乗れなくなっため、徒歩で通える栗田金属に勤めながら、パニック障害を治療している。
藤沢美紗(上白石萌音)
栗田金属の社員。PMS(月経前症候群)がひどく、その症状からのイライラが原因でトラブルを起こし、何度か職を変えている。
栗田和夫(光石研)
下町ロケット的な街の中小企業「栗田金属」の社長。共に会社を立ち上げた実の弟が自死しており、そのトラウマを抱える。
栗田金属では、小学校などで上映できる移動式のプラネタリウムも製造している。
辻本憲彦(渋川清彦)
山添のコンサルティング会社時代の上司。転職後も山添を非常に気にかけており、いつか会社に戻れるように協力してくれている。
グリーフケアの会で栗田と知り合う。
大島千尋(芋生悠)
山添のコンサルティング会社時代の同僚であり、彼女。
藤沢倫子(りょう)
藤沢美紗の母。快活な性格。事故で車椅子生活となり、リハビリに励む。
映画「夜明けのすべて」の面白かった点
派手さは無いがしっかりとしたストーリー
上白石萌音の素朴な演技が良い
上白石萌音の演じる素朴なキャラクター(藤沢さん)の演技がとても良かったです。
藤沢さんは、PMS(月経前症候群)からのイライラで最初に勤めていた会社でトラブルメーカーのようになってしまい、退職してしまいます。
ですが、辞めてしまった会社の人たちも全然悪い人ではなく、むしろ、藤沢さんに気をつかったり、理解しようとしたりしている人たちとして描かれています。
それなのに追い込まれていく藤沢さん。現実でもあるあるのシチュエーションだと思いますが、周りの人が良い人なだけに、それに応えられない自分により苦しくなっていく感じが、リアリティがありました。
松村北斗は異次元のイケメンぶり
松村北斗については、演技はとても自然で良かったのですが、イケメンぶりがさすがの異次元で、
素朴な演技でも隠しきれない感じがありました。
「こんなイケメンが日常に、その辺歩いていることないだろうなぁ。」
と感じてしまいましたが、
それはそれで、現実ではなく映画を観ている気持ちになれたので良かったです。
本作はフィクションですが、脚色しすぎることはなく、かといってドラマチックな部分もしっかりあり、そのバランスが絶妙でした。
地に足がついたストーリー展開で、物語に没頭することができました。
むやみに恋愛にしていない
原作小説を読んでいなかったので、映画の事前情報を見て
「きっと、上白石萌音と松村北斗の役がお互いの特性に苦労しながらも、恋愛関係になるんだろうな」
と思っていたのですが、映画では最後までそんなことはなく、
主人公2人が安易に恋人や恋愛の関係にならない点はとても新鮮に感じました。
恋愛のストーリーが悪いと言いたいわけではないですが、主題と関係なく恋愛が挟まれる作品を見ると個人的には「?」と思ってしまいます。
本作は、むやみやたらと恋愛の展開を入れなかったことで、より、主題に集中して鑑賞することができました。
主役二人以外も「普通に生きる」ことの難しさを描いている
主人公の二人以外のキャラクター、会社の上司や親など、一見順風満帆そうに見える人物でも、見えないところでは何らかの困難を抱えている様子が描かれています。
親類や知人の自死や自分自身の障害など。
自分に責任がないかもしれない事や、突如訪れる不幸で人生は簡単に逆転します。
脇役となるキャラクターも含めて、本作は「普通に生きる」ことの難しさを非常に丁寧に描いていると思いました。
山添くんが仕事の楽しさを語るシーンに感動
もう一人の主人公、山添くんはかなりイケイケの企業に勤めていたのですが、パニック障害の症状により電車に乗ることができなくなり、退職してしまいます。
徒歩で通える栗田金属という中小企業に転職するのですが、始めは栗田金属の仕事や働いている人たちを見下していました。
望まない転職で自暴自棄になっていたこともあると思うのですが、藤沢さんとの交流や仕事を続ける中で山添くんの考えは変わっていきます。
山添くんをずっと支えてきた前職の上司の前で、栗田金属での仕事の楽しさを語り、ここでの仕事を続けたい、と伝えるシーン。
このシーンがとても良くて、すごく感動しました。
クライマックスのプラネタリウムシーンで読み上げられる社長の弟のメッセージが素晴らしい
クライマックスのプラネタリウムのシーンで藤沢さんがナレーターとして読み上げる、社長の弟さんの手記に書かれていたメッセージが素晴らしくて、心に響きました。
朝を待ちわびる人もいれば、夜を待ちわびる人もいる。
そうであっても、夜が無くては朝は無く、朝が無いと夜も無い。
非常に考えさせられるメッセージでした。
映画「夜明けのすべて」のまとめ
非常に良い作品でした。
派手な映像やCGがあるわけではないので目立たないかもしれませんが、
静かに、心に響く映画を観たい方におすすめです!
映画「夜明けのすべて」の満足度
90点/100点満点中
原作小説も読んでみたくなりました。