[読書感想]「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」ろう者の世界を描いた傑作、だが残念な点も

丸山 正樹さんによる小説「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」をAudibleで聴きました。

あらすじ・解説

今度は私があなたたちの“言葉”をおぼえる
仕事と結婚に失敗した荒井尚人。いまの恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一の技能を活かして手話通訳士になる。
あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。現在と過去、二つの事件の謎が交錯をはじめ……。
マイノリティの静かな叫びが胸を打つ、感動の社会派ミステリー。シリーズ通して読み継がれるロングセラーです。
©丸山 正樹 (P)2023 Audible, Inc.

https://www.audible.co.jp/pd/%E3%83%87%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%82%A4%E3%82%B9-%E6%B3%95%E5%BB%B7%E3%81%AE%E6%89%8B%E8%A9%B1%E9%80%9A%E8%A8%B3%E5%A3%AB-%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF/B0C9T9PLLV?action_code=ASSGB149080119000H&share_location=pdp

感想

(以下、内容ネタバレも含みます)

手話通訳士の主人公の視点から、ろう者の世界を描いた作品。
ろう者の世界の描き方だとても詳細で、私はこれまでほとんどこの世界を知らなかったので、非常に勉強になりました。
手話にもいくつかの種類があったり、ろう者の方が社会の中でどう生活しているか、ということも丁寧に描かれており、興味深く、止まらずに聴き進めました。

主人公の生まれ育った家庭環境や、現在直面している家族の問題など、作品の軸にあるコンセプトが「家族」である点は、共感がしやすかったです。

Audible版で良かった点

ナレーターの方が読み上げてくれるAudible版で良かったことは、ろう者が発するデフ・ヴォイスという言葉を、恐らく、実際に近い発声で読み上げてくれるところです。

文字だけの小説だと、デフ・ヴォイスの音は自分で想像するしか無いと思うので、Audibleで聴く読書をすることで、よりリアリティのある読書体験ができました。

ナレーションは非常に合っていたと思います。

残念だった点

以下はかなりのネタバレになってしまいますが、残念だった点。

ある事件をテーマにしているのですが、その事件のきっかけ、犯人の犯行の動機が「幼い頃に性的虐待を受けていた」ということです。
たまたま、この作品の前に読んでいた別の作品でも、全く同じ様な犯行動機だったので、自分の読書の問題もあるのですが

「またこの動機か….」

と思ってしまいました。

決して性的虐待を軽んじているわけではなく、

幼い頃に性的虐待を受けていた犯人→虐待加害者を殺害→犯人が全て悪かったわけではない

という展開が、ミステリーの犯行動機のよくあるパッケージの様になっていて、
手話やろう者の描き方の丁寧さと比べると、事件の展開は少し深みにかけると思ってしまいました。

犯人が女性だった点も、「冷蔵庫の女」的なストーリーラインと近い印象で、少し残念でした。

「冷蔵庫の女」とは、批評概念の一種で、男性キャラの成長のために彼女や妻、親しい女性が殺される事象を指す。もともとは1999年にアメコミファンのグループによって作られたウェブサイト上で、男性キャラの保護欲を刺激するためや、男性キャラのストーリーを前に進めるために、女性キャラの殺害、負傷、レイプが頻繁に使われてきたことを指摘したことに端を発している。

映画の中で都合よく殺される女性キャラ『冷蔵庫の女』について考える。なぜ、「女が」「死ぬ」? | ヨガジャーナルオンライン

無理に刑事事件ものにする必要はあったのか….。

ろうの世界の描き方は秀逸で、非常に勉強になる作品なので、知的好奇心を満足させてくれる小説です!

満足度:85点/100点

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