グラフィックデザインの現場で私が実際に制作・活用した合成フォントをご紹介いたします。設定画面や実際に使用した媒体についても具体例を交えながら解説していますので、ぜひ制作の参考にしていただければ幸いです。
【補足事項】
- 複数ウェイトで制作した合成フォントもございますが、今回の記事では1ウェイトのみをご紹介しています。
- 設定画面は業務で使用したそのままのものであり、必ずしも同様の設定が必要であるとは限らない点をご理解ください。
- HelveticaやUniversなどの有名フォントは、販売しているメーカーによってデザインが異なる場合があります。本記事での設定例は、あくまで私自身の設定に基づくものであることをご承知おきください。
- 設定画面はInDesignのものとなります。
明朝体の合成フォント
[和字]本明朝新がなBook + [欧数字]Adobe Garamond

設定画面

用途
写真集の本文書体として使用。
コンセプト
写真集の本文書体として読みやすい合成フォントを使いたいと思い、作成しました。
写真が主役として映えるようにしたかったので、明朝体としてクセが少ない本明朝新がなBookを選びました。
本明朝新がなBookは書籍用に設計された読みやすく、美しい書体です。欧文には活字の趣を残したAdobe Garamond Proを使用。欧数字は110%拡大して和字とサイズ感を合わせています。
[和字]秀英明朝 + [欧数字]Adobe Garamond

設定画面

用途
学校案内パンフレットの本文書体として使用。
コンセプト
文学系の歴史を学べる学校案内の本文書体として制作しました。
秀英明朝はかな文字(特に「に」や「は」などのひらがな)に流麗な筆の名残が反映されているデザインなので和風の雰囲気が出ます。そこにAdobe Garamondを組み合わせました。
横組のパンフレットだったので、可読性の点からも秀英明朝は優れていると感じます。
本文用書体としてより読みやすくしたかったので、カギ括弧やローマ数字にリュウミンを設定しています。
実際のデザイン作例(Behanceより)
以下の画像リンクより、私が実際に業務で制作したデザインをご覧いただけます。
[和字]本明朝 + [英数字]Carmina

設定画面

用途
学校案内パンフレットの本文、および見出し書体として使用。
コンセプト
和字はオーソドックスで読みやすい本明朝新がなを使用。欧数字にはより、活字の雰囲気を出したかったのでCarminaを使用しました。
Carminaは多少クセがある欧文書体なので見た人の印象に残りやすい合成フォントになりました。
実際のデザイン作例(Behanceより)
以下の画像リンクより、私が実際に業務で制作したデザインをご覧いただけます。
ゴシック体の合成フォント
[和字]こぶりなゴシック + [欧数字]OpenSans

設定画面

用途
学校案内パンフレットの本文書体として使用。
コンセプト
Open SansはGoogle fontsから無料でダウンロードできるフォントです。2011年にリリースされた比較的新しい書体。
Open Sans – Google Fonts
https://fonts.google.com/specimen/Open+Sans
こぶりなゴシックには普段、FrutigerやUniversを合わせることが多いのですが、この時は現代的な印象にしたかったので欧文にOpen Sansを使用しました。
[和字]こぶりなゴシック + [欧数字]Helvetica

設定画面

用途
写真展告知チラシの本文、および見出し書体として使用。
コンセプト
チラシの表面をスイスタイポグラフィっぽいデザインにしたかったので、フォント名がそのまま「スイス」を意味するHelveticaを使用。
和文はニュートラルなこぶりなゴシックと合わせました。
実際のデザイン作例(Behanceより)
以下の画像リンクより、私が実際に業務で制作したデザインをご覧いただけます。
[和字]こぶりなゴシック + [欧数字]DIN

設定画面

用途
ビジネス書籍の本文、見出し、表紙書体として使用。
コンセプト
教育機関によるマーケティング理論をまとめた書籍のデザインのために制作した合成フォントです。
英文が多く登場するので、ややコンデンス気味で読みやすいDINを欧数字に使用しました。
Adobe fontに搭載されているURW DINはウェイトが非常に豊富なので、様々な場面で使用できます。
URW DIN | Adobe Fonts
https://fonts.adobe.com/fonts/urw-din#recommendations-section
実際のデザイン作例(Behanceより)
以下の画像リンクより、私が実際に業務で制作したデザインをご覧いただけます。
本文レイアウトは以下のAmazonリンクより、数ページ分のデザインをご覧いただけます。
デザインアート思考 使い手のニーズとつくり手のウォンツを同時に実現する10のステップ
[和字]こぶりなゴシック + [英数字]Myriad

設定画面

用途
学校案内パンフレットの本文書体として使用。
コンセプト
本文ではなく、コラムや表組み、データ部分で使用しました。
FrutigerをベースにしたMyriadは文字サイズが小さくなっても読みやすく、視認性が高いです。
実際のデザイン作例(Behanceより)
二度目の紹介となりますが、以下パンフレットのデータ部分で使用しています。
秀英角ゴシック金 + Avenir

設定画面

用途
イベントチラシのキャプションテキストとして使用。
コンセプト
歴史にまつわるイベントチラシの、情報などのキャプションテキストとして、読みやすく、かつ、少し趣がある印象にしたかったため、活字のエッセンスを取り入れた秀英角ゴシックを使用。
秀英角ゴシックには金と銀がありますが、横組の際は金の方が読みやすい印象があるのでこちらの使用しました。
タイトルのフォントなどにクセがあるので、キャプション用の英数字にはニュートラルなAvenirを組み合わせました。
実際のデザイン作例(Behanceより)
以下の画像リンクより、私が実際に業務で制作したデザインをご覧いただけます。
[和字]あおとゴシック + [英数字]Univers

設定画面

用途
写真展告知チラシのタイトルと本文に使用。
コンセプト
特殊詐欺をテーマした写真プロジェクトの展覧会チラシで使用。 ”痕跡を消す”ということをデザインコンセプトに、限りなくクセがないモリサワのあおとゴシックと、多彩なウェイトを持つ変幻自在なフォントであるUniversを組み合わせた合成フォントを作成しました。
実際のデザイン作例(Behanceより)
以下の画像リンクより、私が実際に業務で制作したデザインをご覧いただけます。
[和字]くれたけ銘石 + [英数字]Ferryman

設定画面

用途
イベント告知チラシのタイトル、見出しとして使用。
コンセプト
悲劇的な事件にまつわる追悼式のチラシデザインに使用。重厚さと古風な印象を出したかったので、和字にはくれたけ銘石を使用しました。和字のデザインに合いつつ、さらに日付などの数字にインパクトを持たせたかったので英数字にはAdobe fontsのFerrymanというフォントを合わせました。
Ferryman | Adobe Fonts
https://fonts.adobe.com/fonts/ferryman
重厚でありながら現代的な雰囲気もある、良い合成フォントになったと思います。
実際のデザイン作例(Behanceより)
以下の画像リンクより、私が実際に業務で制作したデザインをご覧いただけます。
まとめ
今回ご紹介した合成フォントは以上です。
合成フォント機能は、組み合わせや設定に手間がかかりますが、丁寧に作り込むことで、デザインにオリジナリティを加えることができます。
本記事を参考に、ぜひ皆様もオリジナルの合成フォント作りに挑戦してみてください。
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