【映画感想】「正体」|横浜流星の変貌ぶりと迫真の演技が楽しめるスピード感あるミステリー

映画「正体」を観ました。非常に面白く、心に残る作品でしたので、感想をまとめました。

私は染井為人さんの原作小説『正体』を読んでいたこともあり、映像化されるとこうなるのか!という驚きや、原作と異なる部分を見つける楽しさも味わうことができました。


あらすじ

日本中を震撼させた凶悪な殺人事件の容疑者・鏑木が逮捕され、死刑判決を受けた。しかし彼は脱走し、逃亡生活を始める。鏑木が逃亡中に出会った沙耶香、和也、舞、そして彼を追う刑事・又貫。だが沙耶香らの証言では、彼らが出会った鏑木はまるで別人のようだった。343日間の逃走劇の中、鏑木の【真の目的】とは?その正体は何なのか――。

引用)映画『正体』公式サイト|大ヒット上映中! https://movies.shochiku.co.jp/shotai-movie/


登場人物

  • 鏑木慶一(横浜流星): 主人公。一家三人殺害の罪で死刑判決を受けたが、逃亡する。
  • 野々村和也(森本慎太郎): 鏑木が逃亡中に働いていた建設会社の従業員。
  • 安藤沙耶香(吉岡里帆): フリーランスライターとして鏑木が契約していた出版社の編集者。
  • 酒井舞(山田杏奈): 鏑木が逃亡中に勤めていたグループホームのパート社員。
  • 井尾由子(原日出子): 被害者の家族であり、事件の目撃者。しかし、若年性アルツハイマーで記憶が不安定。
  • 又貫征吾(山田孝之): 鏑木を追う刑事。

感想

良かった点

  • 主人公の鏑木がチャプターごとに名前(偽名)や職業を変えて変装するのですが、別人に見えるほどの変貌ぶりに驚かされました。
  • 作中で何度か見られる逃走シーンでは、横浜流星の全力で走る演技が印象的で、必死さや緊張感が伝わってきます。
  • 原作小説は比較的長めですが、映画はコンパクトにまとまっており、最初から最後までダレることがなく一気に物語に引き込まれました。
  • 原作に比べて映画版の結末は重要な部分が変更されています。原作のダークさが魅力ではあるものの、映画版の改変は観客がスッキリした気持ちで映画館を出られるように配慮されており、好印象でした。

惜しかった点

  • 原作の時点でも感じたことですが、警察の描写が少し無能に見えるのが気になりました。誤認逮捕や護送中の脱走など、どうしても「警察もっと頑張れ!」という気持ちが湧いてしまいます。主人公側の活躍を際立たせるためとはいえ、もう少しバランスの取れた描写があると良かったです。

演技やチャプターについて

シーンごとに鏑木が全く別の人物を演じるので、まるで別の作品を見ているかのような印象もあり、面白かったです。

野々村和也(森本慎太郎)のチャプター

建設現場が舞台なのですが、半グレっぽい人も出てきます。
また、Netflixドラマ地面師で印象に残ったおじいさんが登場するので地面師みが凄いです。

安藤沙耶香(吉岡里帆)のチャプター

ここはラブロマンス風味のチャプター。
鏑木の幸せを最も描いているシーンです(途中までは)。
吉岡里帆演じる安藤沙耶香の、いい塩梅の地味感が魅力的です。

酒井舞(山田杏奈)のチャプター

舞の演技は、素朴な田舎の娘という雰囲気がとても出ています。
私は、山田杏奈+雪景色だと、ゴールデンカムイを連想してしまうので、舞がピンチになることなど無いような錯覚をしてしまいました。

横浜流星の演技について

とにかく横浜流星が格好良かったです。
本人の良さが出ていながらも、しっかりと鏑木というキャラクターになりきっていました。

ただ、あまりにもイケメンすぎるので、作中で鏑木が沙耶香から「きみ、モテるでしょ?」的なことを言われて謙遜するシーンがあるのですが、「そのルックスでモテないは無理があるだろ」と私は心のなかでツッコミを入れてしまいました。

クライマックスにかけて、横浜流星演じる鏑木の顔がアップになるシーンが増えるのですが、演じている役が心に秘めている絶妙な感情の変化を非常に上手く表現していて、見とれてしまいました。

まとめ

鏑木のキャラクターと、彼に影響を受ける人々の描写が見事でした。横浜流星の迫真の演技も含め、ストーリー、キャストともに素晴らしい作品です。ぜひ多くの方に観ていただきたい一作です!

満足度

90点/100点満点

演じている役者さんの演技がどの方も非常に素晴らしく、作品の世界観にのめり込むことができました。


原作小説も非常に面白いので、映画が気に入った方はぜひ読んでみてください。映画では掲載されていないエピソードや描写も豊富です。

正体 (光文社文庫) Kindle版

私が以前書いた小説版の読書感想はこちらです。

[読書感想]「正体」 染井為人/逃亡する死刑囚の少年が様々な人物の心を動かす長編ドラマ | デザインと日々の見本帳。

Header: joffiによるPixabayからの画像

[映画感想]「違国日記」|大好きな母を憎む叔母との共同生活。魅力的なキャラクターを通じて“違い”について想いを馳せられる作品ーあらすじや登場人物などー

新垣結衣と早瀬憩が主演の映画、違国日記を観に行きました。
感想をご紹介します。

映画「違国日記」のあらすじ

両親を交通事故で亡くした15歳の朝(早瀬憩)。葬式の席で、親戚たちの心ない言葉が朝を突き刺す。そんな時、槙生(新垣結衣)がまっすぐ言い放った。

「あなたを愛せるかどうかはわからない。でもわたしは決してあなたを踏みにじらない」

槙生は、誰も引き取ろうとしない朝を勢いで引き取ることに。こうしてほぼ初対面のふたりの、少しぎこちない同居生活がはじまった。人見知りで片付けが苦手な槙生の職業は少女小説家。人懐っこく素直な性格の朝にとって、槙生は間違いなく初めて見るタイプの大人だった。対照的なふたりの生活は、当然のことながら戸惑いの連続。それでも、少しずつ確かにふたりの距離は近付いていた。

だがある日、朝は槙生が隠しごとをしていることを知り、それまでの想いがあふれ出て衝突してしまう――。

映画『違国日記』|大ヒット上映中 https://ikoku-movie.com/

映画「違国日記」の登場人物

高代槙生(新垣結衣)

本作の主人公。小説家。不慮の事故で両親を亡くした姪の朝を引き取り、共同生活することを決める。朝の母であり、自分の姉の実里を憎んでいる。

田汲朝(早瀬憩)

本作のもう一人の主人公。中学卒業を目前に両親を事故で亡くし、叔母である槙生に引き取られる。槙生が、自分が愛する母をなぜ憎んでいるのか、気になっている。

醍醐奈々(夏帆)

槙生の中学時代からの友人。

笠町信吾(瀬戸康史)

槙生の元恋人。

えみり(小宮山莉渚)

朝の親友。

高代実里(中村優子)

朝の母であり槙生の姉。

森本千世(伊礼姫奈)

朝と同じ高校に通う、努力家の優等生。

三森(滝澤エリカ)

朝と同じ高校に通う、軽音部の新入生。新入生とは思えないくらい楽器が上手い。

塔野和成(染谷将太)

弁護士。

高代京子(銀粉蝶)

朝の祖母であり、槙生の母。今は一人暮らしをしている。

映画「違国日記」の面白かったところ

槙生と朝、2人の距離感が、ただ仲良くなるだけでなく、近づいたと思ったら、離れたり、その後また近づいたり、一筋縄ではいかない部分が、現実の人間関係にも通じるようなリアリティがありました。

映画「正欲」での演技を見た時も思ったのですが、新垣結衣のテンション低いキャラがとても味があっていいです。

朝の親友や槙生の友達など、サブキャラクターにもしっかり設定があり、それぞれのドラマが気になりました。

登場人物がみんな素敵で、映像も美しいので見ていて心が清められる感じがします。

映画「違国日記」の惜しかったところ

魅力的なキャラクターがたくさん登場したのですが、それ故に、1作で描き切るには時間が足りず、ちょっとダイジェスト感を感じました。

1クールの連続ドラマくらいの尺があったら、サブキャラクターももっと掘り下げられるのかなと。

槙生は自己肯定感が低いという設定なのですが、作家としても成功しているし、実家も裕福そうだし、新垣結衣が演じているということもあり、この設定で自己肯定感低いのは無理があるだろ….と感じてしまいました。

あくまでもフィクションなので、リアルにしすぎても夢が無いと思うので、塩梅は難しいですよね。

まとめ

作品全体を通して、押し付けがましくない描写で、多様性について描かれており、自然と世界観に引き込まれる作品でした。

原作ありなので、続編が作れそうですし、終わり方としてもぜひ続編を作ってほしいと思いました!

満足度

88点/100点満点中

人を選ばず、多くの人が良いなと感じられる作品だと思います。

原作漫画

ヤマシタトモコさんによる原作漫画も読んでみたくなりました。

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[映画感想]「流浪の月」|“普通”では無いことは悪なのか? 女児誘拐事件の加害者と被害者がたどる人生の困難さを描いた考えさせる作品ーあらすじ、登場人物、感想など

広瀬すずと松坂桃李が主演をつとめる映画「流浪の月」。

凪良ゆうによる原作小説が好きだったので映画も見てみました。感想をご紹介します。

映画「流浪の月」、Amazonでの視聴はこちらから↓

映画「流浪の月」のあらすじ

帰れない事情を抱えた少女・更紗(さらさ)と、彼女を家に招き入れた孤独な大学生・文(ふみ)。
居場所を見つけた幸せを噛みしめたその夏の終わり、文は「誘拐犯」、更紗は「被害女児」となった。
15年後。偶然の再会を遂げたふたり。それぞれの隣には現在の恋人、亮と谷がいた。

ABOUT THE MOVIE – 映画『流浪の月』 公式サイト https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/about/

映画「流浪の月」の登場人物

家内更紗(広瀬すず/幼少期(白鳥玉季))

本作の主人公。現在はファミリーレストランで働いている。

幼少期、家に居場所が無かったことから、佐伯文の家で数日間暮らしていたが、警察に見つかり女児誘拐事件として大々的にメディア掲載された。

佐伯文(松坂桃李/中学生時(中田昊成))

本作のもう一人の主人公。現在はカフェを経営している。

学生時代、公園で居場所が無く佇む家内更紗に声をかけ、自らの家で共同生活を始める。

警察に発見され、女児誘拐事件の加害者として報道される。

中瀬亮(横浜流星)

現在の更紗と同棲をしている彼氏。DVの気がある。

谷あゆみ(多部未華子)

現在の文と付き合っている彼女。編集者。

安西梨花(増田光桜)

更紗が勤めるファミリーレストランの同僚である佳菜子の娘。

安西佳菜子(趣里)

更紗が勤めるファミリーレストランの同僚。シングルマザー。

彼氏と旅行に行くために娘の梨花を更紗に預ける。

湯村店長(三浦貴大)

更紗が勤めるファミリーレストランの店長。

更紗の立場を理解することは難しいですが、スキャンダルによって本部から退職を迫られても、思いやる言葉をかけたりと、実は結構優しいキャラです。

映画「流浪の月」の面白かった点

凪良ゆう作品ならではの苦難に満ちた人生がしっかりと映像化されている

小説もそうなのですが、映画も観ていて胸が詰まるシーンが多く苦しくなりました。

物語のクライマックスで文の秘密が明かされるシーン

これまで積み重ねてきたエピソードが全て辻褄が合い、オセロが一気に裏返るような感覚を覚えました。

白鳥玉季による子供時代の更紗の演技

子供なのですが、どこか大人にも見えるような絶妙な演技で引き込まれました。

文と子供時代の更紗が一緒に暮らすシーンは、どこか非現実的な印象もあり、大人になることが無い、ピーターパンのネバーランドの様な世界に見えました。

白鳥玉季は堂に入った演技でしたが、調べてみたらこの間見た映画「正欲」にも、人気小学生YouTuber役として少しだけ出演していました。

横浜流星による亮の演技

This is DV!とも言えるようなDV彼氏の演技が凄かったです。原作でも衝撃的でしたが、映像になるとさらにインパクトがありました。

個人的に、良い物語には良い悪役が必要だと思っています。横浜流星演じる亮のDVっぷりは観る者のヘイトをしっかり集め主人公を応援したくなりました。

逆に、小説もそうなのですが、物語の後半になると亮があまり出てこなくなるのでちょっと物足りなさすら感じます。

映画「流浪の月」の惜しかった点

上映時間2時間半は長く感じた

原作もすごいボリュームなのですが、映画も2時間半の大作!途中、やや緩慢さを感じる部分もあったので、もう少しコンパクトにまとまったら良かったと思いました。

谷あゆみの掘り下げが少なかった

現在の文の彼女、谷あゆみは、原作では結構深いエピソードがあったのですが、映画ではバッサリカットされており、いわゆる“普通の彼女”のように描写されてしまっていたので、その点は残念でした。

映画「流浪の月」の感想まとめ

小説もそうでしたが、この映画を観ても、「普通とは異なる特性を持って生まれただけで、これほどの苦難の道を歩むのか」と非常に考えさせられる物語です。

後半になるにつれて文の感情があらわになってくる点も非常に見応えがありました。

難しい小説を丁寧に映像化してくれた作品だと思います。

あと、映画では結末が描かれておりませんでしたが、更紗に子供を預け、失踪したかと思われた安西佳菜子は最終的には帰ってきて、ちゃんと子供を迎えに来ます。

映画「流浪の月」の満足度

85点/100点満点中

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原作小説「流浪の月」凪良ゆう(著)

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[映画感想]「正欲」|新垣結衣と磯村勇斗が難しい役を演じきっていた。原作の盛り上がるシーンを丁寧に映像化していて感動!―あらすじ、登場人物、感想など

映画「正欲」原作小説がとても好きだったので映画も鑑賞しました。

映画「正欲」のあらすじ

横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、不登校になった息子の教育方針をめぐり妻と衝突を繰り返している。広島のショッピングモールで契約社員として働きながら実家で代わり映えのない日々を過ごす桐生夏月は、中学の時に転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。大学のダンスサークルに所属する諸橋大也は準ミスターに選ばれるほどの容姿だが、心を誰にも開かずにいる。学園祭実行委員としてダイバーシティフェスを企画した神戸八重子は、大也のダンスサークルに出演を依頼する。

映画『正欲』公式サイト https://www.bitters.co.jp/seiyoku/#

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映画「正欲」の登場人物

寺井啓喜(稲垣吾郎)

検事。妻と不登校の息子がいる。息子が小学校を不登校ながらYouTubeチャンネルを開始したのが悩みの種。

桐生夏月(新垣結衣)

地方のショッピングセンターの寝具売り場で店員として働く女性。学生時代、佐々木佳道と同級生だった。

佐々木佳道(磯村勇斗)

独身の男性。学生時代、桐生夏月と同級生。両親の死をきっかけに実家に戻り、そこで桐生夏月と再会する。

諸橋大也(佐藤寛太)

イケメン大学生。学内のダンスサークル「スペード」に所属している。

神戸八重子(東野絢香)

大也と同じ大学に通う大学生。イベント「ダイバーシティフェス」の実行委員を通して大也と知り合い、彼に不思議な魅力を感じていく。男性が苦手。

寺井由美(山田真歩)

寺井啓喜の妻。専業主婦。不登校の息子と日々の生活を送る。息子のYouTubeを手伝う。

フジワラサトル(???)

過去に、学校の水道の蛇口を盗み逮捕された男。動機について、「水が勢いよく吹き出すのを見る事が楽しかった」と語った。

映画「正欲」の感想

非常に面白かったです!

原作がかなりのボリュームなので、取捨選択は当然ありましたが、水フェチの桐生夏月(新垣結衣)と佐々木佳道(磯村勇斗)のエピソードをメインに、対するキャラとして検事の寺井啓喜(稲垣吾郎)を絡めて展開する感じだったので違和感はあまりなくストーリーに集中できました。

夏月と佳道による、この作品ならではのベッドシーンが非常に好きなのですが、映像化されたことでより素敵な内容になっていて、二人の演技もあり、感動しました。

ただ、私は原作を読んでいるので、補って理解できている部分も多いので、映画のみを観た方は「?」となる展開も多いかも知れません。

映画で触れられていない内容としては、
寺井啓喜(稲垣吾郎)は実は涙フェチです。映画でも奥さんが泣くシーンがやや象徴的に撮られています。

神戸八重子(東野絢香)は兄が妹モノのアダルトビデオを観ていたことを知って男性嫌悪になってしまいました。映画でも、お兄ちゃんの話しがやや唐突に出ますよね。

原作の重要なシーンをしっかり映像化してくれたので私はかなり満足しました!

満足度

83点/100点満点中

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正欲

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より詳しい物語への感想は、以下の小説の感想記事をご覧ください。

[映画感想]「夜明けのすべて」|上白石萌音と松村北斗の素朴な演技が光る。”普通に生きる難しさ”を描いた地に足のついたストーリー

映画『夜明けのすべて』を観ました。とても良い作品だったので感想をご紹介します。

作品のネタバレを含みますのでご注意ください。

映画「夜明けのすべて」のあらすじ

PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなる藤沢さん(上白石萌音)は、会社の同僚・山添くん(松村北斗)のある行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。

転職してきたばかりなのにやる気がなさそうに見える山添くんだったが、そんな彼もまた、パニック障害を抱え生きがいも気力も失っていた。

職場の人たちの理解に支えられながら過ごす中で、藤沢さんと山添くんの間には、恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生えはじめる。

やがて2人は、自分の症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと考えるようになる。

https://eiga.com/movie/98942/

映画「夜明けのすべて」の登場人物

山添孝俊(松村北斗)

栗田金属の社員。大手コンサルティング会社にいたが、パニック障害となり電車に乗れなくなっため、徒歩で通える栗田金属に勤めながら、パニック障害を治療している。

藤沢美紗(上白石萌音)

栗田金属の社員。PMS(月経前症候群)がひどく、その症状からのイライラが原因でトラブルを起こし、何度か職を変えている。

栗田和夫(光石研)

下町ロケット的な街の中小企業「栗田金属」の社長。共に会社を立ち上げた実の弟が自死しており、そのトラウマを抱える。
栗田金属では、小学校などで上映できる移動式のプラネタリウムも製造している。

辻本憲彦(渋川清彦)

山添のコンサルティング会社時代の上司。転職後も山添を非常に気にかけており、いつか会社に戻れるように協力してくれている。
グリーフケアの会で栗田と知り合う。

大島千尋(芋生悠)

山添のコンサルティング会社時代の同僚であり、彼女。

藤沢倫子(りょう)

藤沢美紗の母。快活な性格。事故で車椅子生活となり、リハビリに励む。

映画「夜明けのすべて」の面白かった点

派手さは無いがしっかりとしたストーリー

上白石萌音の素朴な演技が良い

上白石萌音の演じる素朴なキャラクター(藤沢さん)の演技がとても良かったです。

藤沢さんは、PMS(月経前症候群)からのイライラで最初に勤めていた会社でトラブルメーカーのようになってしまい、退職してしまいます。

ですが、辞めてしまった会社の人たちも全然悪い人ではなく、むしろ、藤沢さんに気をつかったり、理解しようとしたりしている人たちとして描かれています。

それなのに追い込まれていく藤沢さん。現実でもあるあるのシチュエーションだと思いますが、周りの人が良い人なだけに、それに応えられない自分により苦しくなっていく感じが、リアリティがありました。

松村北斗は異次元のイケメンぶり

松村北斗については、演技はとても自然で良かったのですが、イケメンぶりがさすがの異次元で、

素朴な演技でも隠しきれない感じがありました。

「こんなイケメンが日常に、その辺歩いていることないだろうなぁ。」

と感じてしまいましたが、

それはそれで、現実ではなく映画を観ている気持ちになれたので良かったです。

本作はフィクションですが、脚色しすぎることはなく、かといってドラマチックな部分もしっかりあり、そのバランスが絶妙でした。

地に足がついたストーリー展開で、物語に没頭することができました。

むやみに恋愛にしていない

原作小説を読んでいなかったので、映画の事前情報を見て

「きっと、上白石萌音と松村北斗の役がお互いの特性に苦労しながらも、恋愛関係になるんだろうな」

と思っていたのですが、映画では最後までそんなことはなく、

主人公2人が安易に恋人や恋愛の関係にならない点はとても新鮮に感じました。

恋愛のストーリーが悪いと言いたいわけではないですが、主題と関係なく恋愛が挟まれる作品を見ると個人的には「?」と思ってしまいます。

本作は、むやみやたらと恋愛の展開を入れなかったことで、より、主題に集中して鑑賞することができました。

主役二人以外も「普通に生きる」ことの難しさを描いている

主人公の二人以外のキャラクター、会社の上司や親など、一見順風満帆そうに見える人物でも、見えないところでは何らかの困難を抱えている様子が描かれています。

親類や知人の自死や自分自身の障害など。

自分に責任がないかもしれない事や、突如訪れる不幸で人生は簡単に逆転します。

脇役となるキャラクターも含めて、本作は「普通に生きる」ことの難しさを非常に丁寧に描いていると思いました。

山添くんが仕事の楽しさを語るシーンに感動

もう一人の主人公、山添くんはかなりイケイケの企業に勤めていたのですが、パニック障害の症状により電車に乗ることができなくなり、退職してしまいます。

徒歩で通える栗田金属という中小企業に転職するのですが、始めは栗田金属の仕事や働いている人たちを見下していました。

望まない転職で自暴自棄になっていたこともあると思うのですが、藤沢さんとの交流や仕事を続ける中で山添くんの考えは変わっていきます。

山添くんをずっと支えてきた前職の上司の前で、栗田金属での仕事の楽しさを語り、ここでの仕事を続けたい、と伝えるシーン。

このシーンがとても良くて、すごく感動しました。

クライマックスのプラネタリウムシーンで読み上げられる社長の弟のメッセージが素晴らしい

クライマックスのプラネタリウムのシーンで藤沢さんがナレーターとして読み上げる、社長の弟さんの手記に書かれていたメッセージが素晴らしくて、心に響きました。

朝を待ちわびる人もいれば、夜を待ちわびる人もいる。

そうであっても、夜が無くては朝は無く、朝が無いと夜も無い。

非常に考えさせられるメッセージでした。

映画「夜明けのすべて」のまとめ

非常に良い作品でした。

派手な映像やCGがあるわけではないので目立たないかもしれませんが、

静かに、心に響く映画を観たい方におすすめです!

映画「夜明けのすべて」の満足度

90点/100点満点中

原作小説も読んでみたくなりました。

夜明けのすべて Kindle版/瀬尾まいこ(著)

Header: HansによるPixabayからの画像