【映画感想】『インフィニティ・プール』クローン技術とビジュアルトリップで描く狂気!【ホラー映画】

映画『インフィニティ・プール』(Amazonプライムビデオ配信)を観て感じたことをまとめました。

【Amazon Prime Video】
鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督のリゾートスリラー、『インフィニティ・プール』豊川悦司ナレーション予告編【2024年4月5日公開】

あらすじ

売れない作家がリゾート休暇で訪れた島。そこで出会った富豪のグループに目をつけられた彼は、思いもよらぬ恐怖と混乱に引きずり込まれていきます。不気味な島の風景、唐突に現れるクローン技術──異様な空気感が物語の中心を貫いています。

魅力ポイント

1. 圧倒的な視覚効果
ドラッグ使用時の映像表現は、鮮烈な色彩と揺らぎが絶妙に組み合わさり、まるで現実と幻覚が境目を失ったような不安定さを演出。撮影技法への興味が湧くビジュアル体験でした。

2. 不気味なマスクのデザイン
富豪たちが着用する仮面は、肉の質感と歪んだフォルムが特徴的。SLIPKNOTを思わせる迫力があり、画面に映るたびに視線を奪われます。

3. 終始漂う狂気と不穏
登場人物たちの言動には常に不気味さが伴い、ホラーとしての嫌悪感が絶妙に保たれています。クライマックスに向けて積み重なる違和感が、観る者の心をざわつかせます。

気になった点

  • 物語の難解さ
    設定や展開が複雑で、ラストまで謎が多く残ります。解釈の余地が大きい分、「すっきりした結末」を求める人には向かないかもしれません。
  • ストーリーよりビジュアル重視
    ホラーとしての新鮮味は感じる一方で、プロットの驚きは少なめ。ありきたりな要素を避けたい玄人好みの作品と言えそうです。

おすすめ度

7.5点(10点満点中)

視覚的インパクトと不気味な空気感が強力な一方、ストーリーの難解さが好みを分ける作品。ホラー好きで深読みしたい方にはぜひ挑戦してほしいです。

【読書感想】「リバース」湊かなえ|もう戻れない時間に気づかされる物語【ミステリー】

湊かなえの小説「リバース」を読みました。感想を簡単にご紹介します。

小説「リバース」のあらすじ

深瀬和久は平凡なサラリーマン。唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れる事だ。そんな深瀬が自宅以外でリラックスできる場所といえば、自宅近所にあるクローバーコーヒーだった。ある日、深瀬はそこで、越智美穂子という女性と出会う。その後何度か店で会ううちに、付き合うようになる。淡々とした日々が急に華やぎはじめ、未来のことも考え始めた矢先、美穂子にある告発文が届く。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた――。何のことかと詰め寄る美穂子。深瀬には、人には隠していたある“闇”があった。それをついに明かさねばならない時が来てしまったのかと、懊悩する。
引用:Amazonより

主な登場人物

  • 深瀬和久(ふかせ かずひさ):本作の主人公。事務機器メーカーの営業職。趣味はコーヒー。
  • 越智美穂子(おち みほこ):深瀬の恋人。
  • 広沢由樹(ひろさわ よしき):深瀬の大学時代のゼミ仲間で親友。そばアレルギー。
  • 浅見康介(あさみ こうすけ):深瀬の大学時代のゼミ仲間。高校教師。
  • 村井隆明(むらい たかあき):深瀬の大学時代のゼミ仲間。父親が県議会議員。
  • 谷原康生(たにはら やすお):深瀬の大学時代のゼミ仲間。商社勤務。

感想

時間を巻き戻す構成の魅力

冒頭の事件から時間を巻き戻すように展開するストーリーが印象的でした。物語が進むにつれて、登場人物の印象が変わっていくのも面白いポイントです。

コーヒーが物語に与える影響

主人公がコーヒー好きという設定で、物語の要所にコーヒーの描写が出てくるため、私もコーヒー好きとして、物語の世界に入り込みやすかったです。

人間関係の深さと新しい発見

また、事件で亡くなった主人公の友人やその大切な人について知っていく過程を通じて、身近な人であっても全てを知っているわけではなく、亡くなってから新しい面を知ることがある――そんな現実のプロセスが描かれていると感じました。

後悔と時間の不可逆性

知るほどに「もっとああしておけばよかった」と後悔してしまうことも多いですが、この物語は、時間が巻き戻せそうで巻き戻せないという現実を教えてくれます。

満足度

75点/100点満点中

一度読んだだけでは最後のトリックがしっかりと理解できず、解説サイトを読んでようやく納得しました。理解した瞬間は『おお!』と感嘆してしまいました。

リバース (講談社文庫 み 67-1)

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【読書感想】「シャドウ」道尾秀介|緻密に編み込まれた謎と衝撃の展開に圧倒される一冊!—あらすじ、登場人物、感想など 【ミステリー】

今回は、道尾秀介さんのミステリー小説「シャドウ」を読んだ感想をお届けします。

2つの家族に絡む事件と精神医療をテーマにした物語で、その重厚さとスリル満点の展開が魅力的な一冊でした。

シャドウ (創元推理文庫)

シャドウ (創元推理文庫)

道尾 秀介
544円(04/26 22:38時点)
発売日: 2009/08/14
Amazonの情報を掲載しています

あらすじ

人は、死んだらどうなるの?――いなくなるのよ――いなくなって、どうなるの?――いなくなって、それだけなの――。その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは? いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。第七回本格ミステリ大賞受賞作。
引用:Amazon.co.jp: シャドウ (創元推理文庫) 電子書籍: 道尾 秀介: Kindleストア

主な登場人物

  • 我茂 凰介(がも おうすけ):小学5年生。我茂洋一郎の息子。
  • 我茂 洋一郎(がも よういちろう):凰介の父。44歳。相模野医科大学病院に勤務している。
  • 我茂 咲江(がも さきえ):洋一郎の妻、凰介の母。スクールカウンセラー。
  • 水城 徹(みずしろ とおる):洋一郎の大学時代からの同級生。相模野医科大学研究員。
  • 水城 恵(みずしろ めぐみ):徹の妻。保険のセールスレディ。
  • 水城 亜紀(みずしろ あき):水城夫妻の娘。小学5年生。凰介と同じ小学校に通う幼馴染。
  • 田地 宗平(たじ そうへい):洋一郎と水城の大学時代の恩師。当時は医学部長を務めていた。現在は相模野医科大学で講師や、大学病院で精神科の非常勤医として働いている。
  • 竹内 絵美(たけうち えみ):洋一郎と水城の大学時代の同級生。現在は相模野医科大学の精神科医。

不穏な序盤|全員が怪しく見える登場人物たち

物語は序盤から登場人物全員が何かを隠しているような雰囲気が漂い、誰もが怪しく見えるような伏線が張られています。

このため、読んでいると「誰が主人公なんだろう?」とすら思ってしまうほどです。次々と明かされる謎に惹きつけられて、ページをめくる手が止まりません。

解明パートで明かされる真実|伏線が一気に回収される後半

後半に入ると、いよいよ事件解明のパートに突入。

これまで張り巡らされてきた伏線が次々と回収されていきますが、この部分にはかなりのボリュームが割かれており、一つひとつの謎が丁寧に解かれていく様子にぐいぐいと引き込まれました。

さらに、真犯人を巡って物語が二転三転するため、予測がつかずドキドキの連続です。

衝撃のクライマックスと深い余韻

結末は殺伐とした事件の中にも心を動かされるシーンがあり、単なるミステリー以上の感動が味わえました。

そして、真犯人がかなり非道な悪者として描かれていたのも印象的です。

普段読んでいるミステリーでは、悪役にもどこか共感や同情の余地があることが多いですが、ここまで完全に“悪”として描かれているのは新鮮で驚きました。

まとめ|スリルを求める方におすすめの一冊

「シャドウ」は、スリリングで手に汗握る展開が好きな方、また緻密に張り巡らされた伏線が回収されていく過程を楽しみたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です!

満足度

90点/100点満点中

シャドウ (創元推理文庫)

シャドウ (創元推理文庫)

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道尾 秀介
544円(04/26 22:38時点)
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[読書感想]「川のほとりに立つ者は」寺地はるな|人の本性はどこにあるのか?境遇、特性、思い込みなど、人の見方を教えてくれる良作

寺地はるなさんの小説「川のほとりに立つ者は」Audibleで読みました。

この著者の作品は初めて読んだのですが、要所要所に印象に残る文章があり、他の作品も読んでみたくなりました。

川のほとりに立つ者は

川のほとりに立つ者は

寺地はるな
1,568円(04/27 11:49時点)
発売日: 2022/10/20
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あらすじ

カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。

Amazonより引用

感想

男女2人の主人公による視点で物語が展開されるミステリー。

メインは女性の主人公、原田清瀬です。

彼女、彼が出会う人たちについて、はじめに抱いていた印象から、その人々の境遇、特性が明らかになるにつれて、別人かのように印象が変わっていく様子が劇的で、読者としても主人公の気持ちの変化を追体験できました。

女性主人公は正しさにこだわる人物として描かれていますが、ただその正しさから取った行動も、立場や視点を変えると過ちに見える時もあります。

物語の後半、主人公とある人物との対話の中で、完全な良い人と悪い人がいるのではなく、置かれた状況やタイミングによって、良い悪いを行き来するのが人間である、という意味の言葉に非常に胸を打たれました。

タイトルの意味も物語の後半で判明するのですが、とても詩的な表現で、この作家さんは独特な言葉選びをされるんだな、と印象に残りました。

長い物語ではないですが、面白くて一気読みしました。

満足度

80点/100点満点中

興味深いテーマなので、もう少しボリュームがあったら良かったと思いました。

川のほとりに立つ者は

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寺地はるな
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[読書感想]「サクラサク、サクラチル」辻堂ゆめ(著)|受験、虐待、毒親、ネグレクト…シリアスな人生に抗う2人の高校生を丁寧に描いた青春ミステリー

辻堂ゆめさんの小説「サクラサク、サクラチル」をAudibleで聴きました。

あらすじ

「絶対に東大合格しなきゃ許さない」――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。

Audible版『サクラサク、サクラチル 』 | 辻堂 ゆめ

面白かった点

受験や、毒親、虐待、ネグレクトなどシリアスなテーマを扱っていますが、読後の印象は爽やかで、素敵な青春の物語です。

ボリュームも長すぎず、短すぎず、ちょうど良い感じでした。

高志と星さんが計画する親への〈復讐計画〉が何なのか。また、高志の東大受験の行末や星さんの家庭で起こる事件など、基本のストーリーはシンプルですが、起きる展開が起伏に富んでいて、一気に聴き終えてしまいました。

主人公、高志と星さんの心の距離感、近づきすぎず、離れすぎず、という感覚も絶妙で、物語としての面白さはありつつご都合主義に見えないバランス感も上手いと思いました。

惜しかった点

惜しかった、というわけではないですが、主人公の高志や星さんが受ける虐待の描写が結構リアルで、Audibleだとナレーターさんの上手さも相まって、衝撃度が強いので、読み進めるのが辛い気持ちになる方もいるかもしれません。

まとめ

とにかく、結末の印象が良く、「良い小説を読んだなぁ」と満足感が高かったです。

青春の物語で、気軽に読める小説を探している方にオススメできる作品です。
ドラマやアニメ化したら映えそうな作品だと思いました。

満足度

83点/100点満点中

書籍版

サクラサク、サクラチル Kindle版

サクラサク、サクラチル

サクラサク、サクラチル

辻堂ゆめ
1,777円(04/27 05:42時点)
発売日: 2023/07/26
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