今回は、道尾秀介さんのミステリー小説「シャドウ」を読んだ感想をお届けします。
2つの家族に絡む事件と精神医療をテーマにした物語で、その重厚さとスリル満点の展開が魅力的な一冊でした。
あらすじ
人は、死んだらどうなるの?――いなくなるのよ――いなくなって、どうなるの?――いなくなって、それだけなの――。その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは? いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。第七回本格ミステリ大賞受賞作。
引用:Amazon.co.jp: シャドウ (創元推理文庫) 電子書籍: 道尾 秀介: Kindleストア
主な登場人物
- 我茂 凰介(がも おうすけ):小学5年生。我茂洋一郎の息子。
- 我茂 洋一郎(がも よういちろう):凰介の父。44歳。相模野医科大学病院に勤務している。
- 我茂 咲江(がも さきえ):洋一郎の妻、凰介の母。スクールカウンセラー。
- 水城 徹(みずしろ とおる):洋一郎の大学時代からの同級生。相模野医科大学研究員。
- 水城 恵(みずしろ めぐみ):徹の妻。保険のセールスレディ。
- 水城 亜紀(みずしろ あき):水城夫妻の娘。小学5年生。凰介と同じ小学校に通う幼馴染。
- 田地 宗平(たじ そうへい):洋一郎と水城の大学時代の恩師。当時は医学部長を務めていた。現在は相模野医科大学で講師や、大学病院で精神科の非常勤医として働いている。
- 竹内 絵美(たけうち えみ):洋一郎と水城の大学時代の同級生。現在は相模野医科大学の精神科医。
不穏な序盤|全員が怪しく見える登場人物たち
物語は序盤から登場人物全員が何かを隠しているような雰囲気が漂い、誰もが怪しく見えるような伏線が張られています。
このため、読んでいると「誰が主人公なんだろう?」とすら思ってしまうほどです。次々と明かされる謎に惹きつけられて、ページをめくる手が止まりません。
解明パートで明かされる真実|伏線が一気に回収される後半
後半に入ると、いよいよ事件解明のパートに突入。
これまで張り巡らされてきた伏線が次々と回収されていきますが、この部分にはかなりのボリュームが割かれており、一つひとつの謎が丁寧に解かれていく様子にぐいぐいと引き込まれました。
さらに、真犯人を巡って物語が二転三転するため、予測がつかずドキドキの連続です。
衝撃のクライマックスと深い余韻
結末は殺伐とした事件の中にも心を動かされるシーンがあり、単なるミステリー以上の感動が味わえました。
そして、真犯人がかなり非道な悪者として描かれていたのも印象的です。
普段読んでいるミステリーでは、悪役にもどこか共感や同情の余地があることが多いですが、ここまで完全に“悪”として描かれているのは新鮮で驚きました。
まとめ|スリルを求める方におすすめの一冊
「シャドウ」は、スリリングで手に汗握る展開が好きな方、また緻密に張り巡らされた伏線が回収されていく過程を楽しみたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です!
満足度
90点/100点満点中