グラフィックデザイナーとして自身の制作活動を続けながら、大学や専門学校、予備校で教え始めて10年が経ちました。
「非常勤講師」という仕事は、非常に独特な立ち位置です。
専任の先生のように組織の中に深く組み込まれているわけではないけれど、決まった時間に授業を担当する以上、完全な自由業(フリーランス)とも言い切れない。
そんな中、改めて自分の「雇用形態」について学び直してみたところ、今まで曖昧だった部分がクリアになり、これからの働き方のヒントが見えてきました。
1. 「給与明細」が示す、法的な立ち位置
私たちは普段、デザインの案件では「報酬」としてギャラをいただきます。これは「業務委託」という対等なパートナーシップに基づくものです。
しかし、学校から「給与明細」をもらっている場合、それは法律上「給与」であり、私たちは「雇用(労働者)」という立場で働いています。
「自分は一人で戦うフリーランスだ」と思い込みすぎていた私にとって、この「雇用」という事実は、実は労災や労働法に守られているという、確かな安心材料の一つであることに気づきました。
2. 勤務年数と「有給休暇」の仕組み
「非常勤だから有給なんてない」と勝手にルールを決めつけてはいないでしょうか。
実は、週1日の出講であっても、半年以上継続して勤務していれば、その労働日数に応じて有給休暇が発生するのが労働基準法のルールです。
(年次有給休暇)第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
出典:労働基準法 | e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
10年間、現場に貢献し続けてきたという実績。その積み重ねの中に、実は自分を支えてくれる仕組みが最初から備わっていた。このルールを正しく知ることは、決してワガママを言うためではなく、プロとして納得して教壇に立ち続けるための「知恵」だと感じています。
3. 「週20時間の壁」を味方につける
最近よく耳にする社会保険の加入条件、「週20時間」というライン。
学校側がこの時間を意識してスケジュールを調整することもありますが、これはフリーランスデザイナーを本業とする私にとって、実は「良い境界線」でもあります。
もし20時間を超えて学校の業務が膨らみすぎると、事務作業や運営業務に追われ、本業であるグラフィックデザインの制作時間が削られてしまう恐れがあるからです。
「20時間未満」というラインを意識することは、学校との適切な距離感を保ち、クリエイターとしての創造的な時間を死守するための、大切な「防波堤」になると考えています。

結びに
非常勤講師は、自由と不自由の間にいるような、難しい立場かもしれません。
でも、自分の契約を正しく理解することは、不要な不安を消し、より良いパフォーマンスを学生に提供するための土台になります。
正規雇用でもない、完全なフリーランスでもない。
だからこそ、自分が「どう守られ、どう時間を使っているのか」を冷静に見極める。それが、11年目以降の私にとって、より豊かな制作と教育を両立させる鍵になりそうです。
もちろん、こうした制度や仕組みの話以上に、私自身はこの仕事に大きな価値を感じています。何より、学生たちが試行錯誤しながら成長していく姿を、特等席で、直に見守ることができる講師という仕事は本当に素晴らしいものです。
教えることを通じて、私自身が刺激を受け、デザインの楽しさを再発見することも少なくありません。そうした純粋なやりがいに集中し、より深く学生と向き合うためにも、まずは自分自身の足元を整えることから始めていきたいと思います。
【参考資料】
今回の内容について詳しく知りたい方は、以下の公的な資料を参考にしてください。
- 厚生労働省:パートタイム労働者の年次有給休暇(週の所定労働日数に応じた付与日数の表が掲載されています)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf - 厚生労働省:社会保険の適用拡大特設サイト(「週20時間以上」の加入条件や、法改正のスケジュールが確認できます)
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/ - 労働基準法 第39条(有給休暇の発生条件と、雇用側の義務についての法的根拠です)
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049

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