映画『紙の月』感想|宮沢りえが演じる“愛と金に突っ走る女”のリアル

映画『紙の月』を観ました。感想をご紹介します。

紙の月

紙の月

宮沢りえ, 池松壮亮, 大島優子
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宮沢りえさんの圧巻の演技

宮沢りえさんの迫真の演技が非常に印象的でした。目線や声のトーンひとつで、梨花の心情がリアルに伝わってきました。

原作との容姿設定の違い

小説では、主人公の梨花は初めは地味な容姿とされていますが、恋をし、お金を得ていくにつれて美しくなっていくという描写があります。映画では宮沢りえさんが演じているため、最初から美しさが際立っており、原作との印象に違いがありました。

小林聡美さん演じる「隅」の存在感

梨花の上司・隅を演じた小林聡美さんは、いわゆる“御局”的な立ち回りで存在感を放っていました。この描写は小説には見られないもので、意外性とともに印象に残りました。

映画ならではの没入感

映画は、小説よりも梨花という人物の内面に強く焦点を当てていたため、物語の世界に自然と引き込まれる感覚がありました。

男性キャラクターの描かれ方に違和感も

梨花の夫や不倫相手の光太、男性上司といった男性キャラクターたちは、ほとんどが「男性」という記号的な存在として描かれており、行動の背景があまり語られていませんでした。そのため共感できる要素が少なく、悪しき男性像が凝縮されたような印象を受けました。

また、セクハラ・パワハラ描写も原作より過激になっており、現在よりコンプライアンスの緩かった2014年代の空気を感じさせられました。今だったらもっとマイルドになっていると想像します。

1994年という時代の描写が秀逸

本作は2014年の映画ですが、物語の舞台は1994年です。登場人物の服装や髪型はもちろん、映像全体が青みがかったレトロな色合いに編集されており、平成初期の空気感が見事に再現されていました。

原作との違いを楽しめる作品

小説を読んだ後に映画を観たため、細かな違いや演出の工夫がより際立って感じられました。原作と映画、どちらも楽しむことで物語の奥行きがより広がる作品だと感じました。

オススメ度

8.0/10点

宮沢りえの迫真の演技が見たい人、平成レトロの映像を見たい人、パワフルな女性を見たい人におすすめできる作品です!

紙の月

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角田光代さんによる原作小説の感想をこちらに記載しています。

映画感想『#真相をお話します』|映像デザインが光る!ネット炎上サスペンス

映画「#真相をお話します」を観ました。感想をご紹介します。

本作を観ようと思った理由

原作小説が以前から気になっていました。小説の表紙デザインも非常にインパクトがあったため、映画化を知ってすぐに観に行こうと決めました。

#真相をお話しします(新潮文庫)

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結城真一郎
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「#真相をお話します」あらすじ

とあるビルの警備室に置かれたパソコンの前で、警備員の桐山とその友人である謎の男・鈴木が生配信の開始を待っている。やがて、多額の報酬をかけた暴露チャンネル「#真相をお話しします」がスタート。そこでは….

引用元)#真相をお話しします : 作品情報・キャスト・あらすじ – 映画.com https://eiga.com/movie/103058/

面白かった点

  • 配信番組の映像デザインが優れていて、見ごたえがありました。
  • 二転三転するストーリー展開で、終始緊張感が持続しました。
  • 「ふるはうすデイズ」という子どもたちによる人気配信番組の真相を知ったときは、非常に驚かされました。
  • 番組視聴者、さらには映画を観る私たち自身にも問いかけを投げかける内容で、深く考えさせられました。
  • メインエピソード以外の登場人物たちもキャラクターが立っており、飽きずに楽しめました。

イマイチだった点

  • 最後の最大の真相の結末が、あの形で終わるのは本当に良かったのか、少し疑問が残りました。

まとめ

オススメ度:7.8/10点

緩急のついた演出と映像表現が秀逸で、エンターテインメント性に富んだ作品でした。ネット配信や炎上といったテーマに興味がある方には、特におすすめできる映画だと思います。

映画『#真相をお話しします』主題歌入り予告|「天国」Mrs. GREEN APPLE|

関心領域|楽園の裏で響く“ホロコーストの気配”を斬新な映像で描く

映画「関心領域」を観ましたので、感想をまとめます。

観賞のきっかけ

2024年に話題になった作品で、知人から「面白い」と聞いていました。Amazonプライムビデオに追加されたのを機に鑑賞を決めました。

関心領域

あらすじ(概要)

アウシュヴィッツ強制収容所の隣にある所長・ルドルフ・ヘス一家の暮らしを描く物語。
所長である父親の地位ゆえに、家族の住まいは豪華で庭も手入れが行き届いているが、遠くから収容所の音や煙が微かに響き、不穏さが常に漂う──。

アウシュヴィッツ強制収容所の隣で平和に暮らす所長一家を描く…映画『関心領域』予告編

登場人物

  • ルドルフ・ヘス:アウシュヴィッツ強制収容所の所長。一家の父親。
  • ヘドウィグ・ヘス:ルドルフの妻。自宅のコーディネートに余念がない。

ネタバレ解説

以下、私が映画を一度見て分からなかった箇所について、他の解説サイトなどを見て理解した内容を記載します。ネタバレが含まれますのでご注意ください。

白黒反転シーン

映像がソラリゼーション風に白黒反転する場面が何度かあります。

  • 果物を土に埋める女性:非ユダヤ系ポーランド人の使用人が、食材をこっそり収容所側に届けようとする行動。
  • ピアノ演奏のシーン:ユダヤ人を讃える曲を弾き、ささやかな抵抗を表現している。
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ヘドウィグの母親の訪問

母親が自宅に泊まり、最初は庭や建物の美しさに感動。しかし次第に咳や倦怠を感じ、最後には遺書を残して去っていく。
→ 収容所の燃焼炉から立ち上る煙や音によって、心身が蝕まれていったことが示唆されている。

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ルドルフの部屋に現れる不思議な女性

仕事の電話後、見知らぬ女性が突如部屋にやってくるシーン。
→ ルドルフが妻とは別の女性とも関係を持っていたこと、さらには自宅と収容所を結ぶ地下道の存在を示唆。もしかすると女性は収容者で、選別の対象だった可能性もある。

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ネタバレ込みの感想

この作品は、ホロコーストの具体的な残虐描写を避けつつ、音響と映像表現で異常事態を強烈に伝えてきます。

私はイヤホンを付けて鑑賞していたのですが、常に下記の様な微細な効果音が聴こえます。

ゴオォォン  
パンパン  
アァー  
パパパパ  

これらの音が、幸福そうな家族のシーンの裏で鳴り続け、観る者の心をざわつかせます。

このような音に毎日さらされているヘスの家族は、果たして正常でいられるのでしょうか。

後半では一家の精神状態が徐々に壊れていきます。

  • ルドルフ:咳や胃痛に苦しみ、ドイツ人が集まるパーティーで「どうしたら効率よく全員を毒殺できるか」を考えてしまうほど、心を蝕まれる。
  • ヘドウィグ:今の暮らしを「楽園」と信じ込み、ルドルフからの転勤の提案にも固執。ミスをした使用人に対して「灰にして地面に撒くわよ。」などと、脅迫じみた言葉を吐くほど追い詰められる。
  • 子どもたち
    • 女の子は不眠症に。
    • 弟は収容所の音を真似して口にし、兄はまるで「収容所ごっこ」の様に、弟をビニールハウスに閉じ込めるなど、心の影響が行動に現れる。

面白かった点

  • 斬新な映像表現:直接的な残虐シーンを一切映さず、音だけで恐怖を盛り上げる手法が新鮮です。ソラリゼーションの映像も効果的です。
  • 正常性バイアスの描写:隣で虐殺が続く中でも「いつも通り」に固執しようとする一家の心が徐々に壊れていく様が、純粋なホラー以上に怖いと感じました。

まとめ

オススメ度:9.0/10点

アーティスティックな映像表現やナチス・ホロコーストの歴史に興味がある方には、ぜひご覧いただきたい一作です。

関心領域

【映画感想】『インフィニティ・プール』クローン技術とビジュアルトリップで描く狂気!【ホラー映画】

映画『インフィニティ・プール』(Amazonプライムビデオ配信)を観て感じたことをまとめました。

【Amazon Prime Video】
鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督のリゾートスリラー、『インフィニティ・プール』豊川悦司ナレーション予告編【2024年4月5日公開】

あらすじ

売れない作家がリゾート休暇で訪れた島。そこで出会った富豪のグループに目をつけられた彼は、思いもよらぬ恐怖と混乱に引きずり込まれていきます。不気味な島の風景、唐突に現れるクローン技術──異様な空気感が物語の中心を貫いています。

魅力ポイント

1. 圧倒的な視覚効果
ドラッグ使用時の映像表現は、鮮烈な色彩と揺らぎが絶妙に組み合わさり、まるで現実と幻覚が境目を失ったような不安定さを演出。撮影技法への興味が湧くビジュアル体験でした。

2. 不気味なマスクのデザイン
富豪たちが着用する仮面は、肉の質感と歪んだフォルムが特徴的。SLIPKNOTを思わせる迫力があり、画面に映るたびに視線を奪われます。

3. 終始漂う狂気と不穏
登場人物たちの言動には常に不気味さが伴い、ホラーとしての嫌悪感が絶妙に保たれています。クライマックスに向けて積み重なる違和感が、観る者の心をざわつかせます。

気になった点

  • 物語の難解さ
    設定や展開が複雑で、ラストまで謎が多く残ります。解釈の余地が大きい分、「すっきりした結末」を求める人には向かないかもしれません。
  • ストーリーよりビジュアル重視
    ホラーとしての新鮮味は感じる一方で、プロットの驚きは少なめ。ありきたりな要素を避けたい玄人好みの作品と言えそうです。

おすすめ度

7.5点(10点満点中)

視覚的インパクトと不気味な空気感が強力な一方、ストーリーの難解さが好みを分ける作品。ホラー好きで深読みしたい方にはぜひ挑戦してほしいです。

【映画感想】エヴァファンが観た映画「ガンダムジークアクス」感想レポ

先日、話題沸騰中の映画「ガンダムジークアクス」を映画館で鑑賞しました。

普段はガンダム作品にあまり親しみがなかった私ですが、Amazon Prime Videoシン・エヴァンゲリオンを再鑑賞したことを機に、同じスタジオカラーが手掛けるという点に惹かれて観に行きました。

今回は、その感想をじっくりとご紹介します。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)-Beginning-』本予告

観ようと思った理由

エヴァンゲリオンのファンである私は、スタジオカラーが制作する他のロボットアニメにも興味があります。最近改めてシン・エヴァンゲリオンを見たので、その勢いで「ガンダムジークアクス」へ足を運ぶ決意をしました。

スタジオカラーの独特の映像表現や世界観に期待を寄せていたので、今作も非常に楽しみでした。


映画の魅力と感想

◆ スタジオカラーならではのロボットアニメーション

まず特筆すべきは、スタジオカラーが誇るロボットアニメーション。

  • 映像美とダイナミズム
    エヴァンゲリオンを彷彿とさせる、外連味のあるアニメーションは圧巻でした。前半の宇宙空間での無重力のバトルと、後半の地上での重力を感じさせる戦闘シーンとが見事に表現され、映画館の大スクリーンと音響がその迫力を最大限に引き立ててくれました。

◆ 魅力あふれるキャラクターと監督の世界観

本作の監督、鶴巻和哉さんの世界観もたっぷりと表現されていました。

  • エネルギッシュなキャラクター
    「フリクリ」「トップをねらえ2!」で見せたエネルギー溢れる演出が本作にも息づいており、個性豊かなキャラクターたちが物語に深みを与えていました。特に、トップ2の「エキゾチックマニューバ」を思い起こさせるシーンは印象的で、改めて「トップをねらえ2!」を見直してみたい気持ちも生まれました。

◆ 今ひとつと感じた点

一方で、前半部分においてはファーストガンダムへのオマージュが色濃く出ており、ファーストガンダムに馴染みのない私には、その熱量や元ネタを十分に理解することが難しかった面もありました。しかし、全体的なアニメーションのクオリティや迫力あるバトルシーンは十分に楽しむことができ、映画としての完成度は高いと感じました。


総評と今後の期待

総じて、今回の映画体験は「ガンダム」という枠を超え、スタジオカラー、そして鶴巻監督の新作ロボットアニメとして非常に魅力的なものでした。

  • 映画館での体験
    大画面と迫力ある音響が、普段のテレビ鑑賞では味わえない感動を提供してくれたのは間違いありません。
  • 今後の展開に期待
    テレビシリーズ版の放送が待ち遠しく、もし総集編などの続編が映画館で公開されるなら、ぜひまた足を運びたいと思います。

オススメ度

8.5点(10点満点中)

エヴァンゲリオン、ガンダム、ロボットアニメが好きな方には、ぜひ観ていただきたい一作です!