[読書感想]「川のほとりに立つ者は」寺地はるな|人の本性はどこにあるのか?境遇、特性、思い込みなど、人の見方を教えてくれる良作

寺地はるなさんの小説「川のほとりに立つ者は」Audibleで読みました。

この著者の作品は初めて読んだのですが、要所要所に印象に残る文章があり、他の作品も読んでみたくなりました。

川のほとりに立つ者は

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寺地はるな
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あらすじ

カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。

Amazonより引用

感想

男女2人の主人公による視点で物語が展開されるミステリー。

メインは女性の主人公、原田清瀬です。

彼女、彼が出会う人たちについて、はじめに抱いていた印象から、その人々の境遇、特性が明らかになるにつれて、別人かのように印象が変わっていく様子が劇的で、読者としても主人公の気持ちの変化を追体験できました。

女性主人公は正しさにこだわる人物として描かれていますが、ただその正しさから取った行動も、立場や視点を変えると過ちに見える時もあります。

物語の後半、主人公とある人物との対話の中で、完全な良い人と悪い人がいるのではなく、置かれた状況やタイミングによって、良い悪いを行き来するのが人間である、という意味の言葉に非常に胸を打たれました。

タイトルの意味も物語の後半で判明するのですが、とても詩的な表現で、この作家さんは独特な言葉選びをされるんだな、と印象に残りました。

長い物語ではないですが、面白くて一気読みしました。

満足度

80点/100点満点中

興味深いテーマなので、もう少しボリュームがあったら良かったと思いました。

川のほとりに立つ者は

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[読書感想]「サクラサク、サクラチル」辻堂ゆめ(著)|受験、虐待、毒親、ネグレクト…シリアスな人生に抗う2人の高校生を丁寧に描いた青春ミステリー

辻堂ゆめさんの小説「サクラサク、サクラチル」をAudibleで聴きました。

あらすじ

「絶対に東大合格しなきゃ許さない」――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。

Audible版『サクラサク、サクラチル 』 | 辻堂 ゆめ

面白かった点

受験や、毒親、虐待、ネグレクトなどシリアスなテーマを扱っていますが、読後の印象は爽やかで、素敵な青春の物語です。

ボリュームも長すぎず、短すぎず、ちょうど良い感じでした。

高志と星さんが計画する親への〈復讐計画〉が何なのか。また、高志の東大受験の行末や星さんの家庭で起こる事件など、基本のストーリーはシンプルですが、起きる展開が起伏に富んでいて、一気に聴き終えてしまいました。

主人公、高志と星さんの心の距離感、近づきすぎず、離れすぎず、という感覚も絶妙で、物語としての面白さはありつつご都合主義に見えないバランス感も上手いと思いました。

惜しかった点

惜しかった、というわけではないですが、主人公の高志や星さんが受ける虐待の描写が結構リアルで、Audibleだとナレーターさんの上手さも相まって、衝撃度が強いので、読み進めるのが辛い気持ちになる方もいるかもしれません。

まとめ

とにかく、結末の印象が良く、「良い小説を読んだなぁ」と満足感が高かったです。

青春の物語で、気軽に読める小説を探している方にオススメできる作品です。
ドラマやアニメ化したら映えそうな作品だと思いました。

満足度

83点/100点満点中

書籍版

サクラサク、サクラチル Kindle版

サクラサク、サクラチル

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辻堂ゆめ
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