一穂ミチさんによる小説『恋とか愛とかやさしさなら』を読みました。
非常に面白い物語でしたので感想をご紹介します。

あらすじ
プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。
カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が”出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。
信じるとは、許すとは、愛するとは。
男と女の欲望のブラックボックスに迫る、
著者新境地となる恋愛小説。引用)Amazonより
感想
衝撃の導入でグッと引き込まれる
この作品は、恋人が盗撮で逮捕されるという衝撃的な事件をきっかけに、さまざまな登場人物たちの視点から「性犯罪」や「性欲」の問題を描いています。
加害者(男性)やその恋人(女性)、被害者(女性)に加え、家族や職場の同僚といった第三者の視点も取り入れられており、それぞれの立場から事件がどう映るのかが興味深く描かれています。
心の傷を描くリアルな描写
著者はかなりしっかりと取材を重ねたことがうかがえる描写で、一度の盗撮がどんなふうに人生を狂わせるのか、また加害者の軽い気持ちが被害者にどれほど大きなダメージを与えるのかを、リアルに伝えてくれます。
視点の切り替えがうまい!
物語の前半から中盤は加害者の恋人の視点で進み、後半は加害者自身の視点に変わっていくという構成も、読者を最後まで飽きさせません。
視点が切り替わることで、それぞれの立場の感情がより立体的に見えてきます。
写真というテーマも見どころ
加害者の恋人が写真を仕事にしていることもあって、報道写真やアート写真と盗撮との違いなど、「写真」というメディアの持つ意味についても物語の中で掘り下げられていきます。
このあたりもすごく面白かったです。
現代ならではの時事ネタも
私人逮捕系YouTuberなど、現代的な話題もしっかり盛り込まれていて、今の時代だからこそリアルに感じる描写が随所にあります。
まとめ:エンタメ性と社会性のバランスが絶妙
全体的に、この本はエンタメとして楽しめるだけでなく、いろんな視点から性犯罪について深く考えさせてくれる、内容の濃い一冊でした。読後もしばらく心に残る、印象的な作品です。
オススメ度
9.5点(10点満点中)
社会性の高い物語を求めている方にオススメです!
