[読書感想]「正欲」朝井リョウ/本当の多様性とは何か?正しさ、普通とは何か?を考えさせられる傑作長編小説!-あらすじ、登場人物、感想など

朝井リョウさんによる小説「正欲」をAudibleで読みました。
非常に面白かったです!

タイトルの「正欲」は
性的嗜好という意味での「性欲」

社会において自分が正しい側にいたいという「正(しくありたい)欲」
を組み合わせた言葉だと思います。

小説「正欲」の作品概要

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、
そりゃ気持ちいいよな。

息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づく女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。
だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。

この世界で生きていくために、手を組みませんか。

Amazon.co.jp: 正欲(新潮文庫) 電子書籍: 朝井リョウ: Kindleストア

小説「正欲」のストーリーについて

複数の人物の視点で物語が展開されていきます。
始めはそれぞれの人生は一見関係なさそうなのですが、後半に進むにつれてストーリーが交差していきます。

小説「正欲」の登場人物

寺井啓喜

検事。妻と不登校の息子がいる。息子が小学校を不登校ながらYouTubeチャンネルを開始したのが悩みの種。

桐生夏月

地方のショッピングセンターの寝具売り場で店員として働く女性。学生時代、佐々木佳道と同級生だった。

佐々木佳道

独身の男性。学生時代、桐生夏月と同級生。両親の死をきっかけに実家に戻り、そこで桐生夏月と再会する。

諸橋大也

イケメン大学生。学内のダンスサークル「スペード」に所属している。

神戸八重子

大也と同じ大学に通う大学生。イベント「ダイバーシティフェス」の実行委員を通して大也と知り合い、彼に不思議な魅力を感じていく。男性が苦手。

寺井由美

寺井啓喜の妻。専業主婦。不登校の息子と日々の生活を送る。息子のYouTubeを手伝う。

寺井泰希

寺井啓喜の息子。小学校を不登校になり、同じく不登校の友達とともにYouTubeチャンネルを始める。

右近一将

不登校の子供を支援するNPOの若い男性。泰希のYouTubeの編集などを熱心にサポートする。

フジワラサトル

過去に、学校の水道の蛇口を盗み逮捕された男。動機について、「水が勢いよく吹き出すのを見る事が楽しかった」と語った。

小説「正欲」の作品テーマ

本当の多様性とは何か?を問う作品です。

小説「正欲」の感想

非常に面白かったです。正しいとは何か?普通とは何か?多様性とは何か?という問いについて、様々な登場人物の人生を通して考えさせてくれます。
私ははじめ、Amazonなどの紹介文として書かれていた以下の文章を見て、

「自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、
そりゃ気持ちいいよな。」

多様性やSDGsに対しての逆張りのような意見を述べている小説なのかな?と思い、すぐには聴こうとは思えませんでした。
しかし、朝井リョウさんの作品では「桐島、部活やめるってよ」を映画で観たことがあり、非常に面白い作品だと思ったので今作も信じて聴いてみようと思いました。

実際に聴き始めると、登場人物たちの物語の先が気になり、止まらなくなりました。

実際に起きた事件を参考にしているだろうな、と思われる描写も多く、リアリティがありました。
読む前に気になっていた紹介文に記載の言葉が出るシーンは物語のクライマックスなのですが、それまでの展開を読んでいるとこの発言をする理由がしっかりと理解できます。
また、言いっ放しではなく、このセリフを言われた人物からのアンサーもしっかりとあり、それも納得できます。

物語の重要な要素となる性欲の設定も、絶妙なラインを選んだなと、感心しました。

世の中には自分が想像できないくらい多様な人間がいるにも関わらず、正しさはある少ない種類の方向で決められている。
人は常に誰かに「正しい」と言ってもらいたい。
という事を強く認識させてくれる内容でした。

小説「正欲」の評価

95点/100点満点

長編ですがそれを感じさせない物語の運びです。
それぞれの人生が交差するクライマックスは圧巻でした。
Audibleのナレーションも、ナレーターの方を何人も使っていて非常に豪華で、オーディオブックというよりもオーディオドラマを聴いているようでした。

多様性について日頃から考えている方もそうでない方も、多くの方に読んでいただきたい傑作です!

小説「正欲」の書籍

正欲(新潮文庫) Kindle版

正欲(新潮文庫)

正欲(新潮文庫)

朝井リョウ
916円(05/07 09:27時点)
発売日: 2023/05/29
Amazonの情報を掲載しています

Audibleは無料体験ができます

話題の本を料金内で何冊も読めるのは非常にお得だと思います。
Audibleは無料の体験もありますので、気になった方は以下のバナーからぜひ体験してみてください。

「正欲」の実写映画

本作は実写映画が制作され2013年11月から公開されています。

予告動画を観たら映画も観たくなりました!

稲垣吾郎×新垣結衣『正欲』60秒予告

映画も観てみましたの感想の記事をこちらに書きました。原作が気に入った方にはおすすめです!

Header: Jonas KIMによるPixabayからの画像

[読書感想]「トランスジェンダー入門」周司あきら, 高井ゆと里(著)/総人口の1%以下。マイノリティの方々について学ぶ大切さ

LGBTQの「T」、トランスジェンダーについて考える機会があり、自分の知識があまりにも不足していたためにこちらの本を購入して読んでみました。

トランスジェンダー入門(集英社新書)

知らなかったこと、衝撃を受けることが多く、自分が如何に無知だったかをより痛感させられました。

本の概要

トランスジェンダーとはどのような人たちなのか。
性別を変えるには何をしなければならないのか。
トランスの人たちはどのような差別に苦しめられているのか。
そして、この社会には何が求められているのか。
これまで「LGBT」と一括りにされることが多かった「T=トランスジェンダー」について、さまざまなデータを用いて現状を明らかにすると共に、医療や法律をはじめその全体像をつかむことのできる、本邦初の入門書となる。
トランスジェンダーについて知りたい当事者およびその力になりたい人が、最初に手にしたい一冊。

Amazonより

読書感想

本書を読んだ感想を書いてみたいと思います。本は読みましたが、自分はまだまだ知識が足りないので、当事者の方にとって不快に思われる内容もあるかもしれません。

認識が間違っている箇所がありましたら、コメントなどでご指摘いただけますと幸いです。

まず、生まれた時に「割り当てられた性別」、そしてその「性別らしさ」を求められること。

自分のジェンダー・アイデンティティと求められる性別が異なることによる苦しみ。

そして、社会が如何に「男女」という2つの性別を基準に構成されているか、ということ。

就職活動の大変さ

学校、職場(就職活動)、住居探し、など、人生の重要な局面で、必ず男か女か、を問われます。

その際に、性別移行が済んでいないトランス女性は男性であることを強要され、

トランス男性は女性であることを強要されます。

日本は戸籍の変更の手続きも条件が厳しいため、自身のジェンダー・アイデンティティに沿った外見をしていても、戸籍の性別と異なると、就職活動などでは不利になってしまいます。

そこで説明すること自体が望まないカミングアウトにもなってしまいます。

性別移行手術の大変さ

本書では、身体の性別を移行する医学的な性別移行手術についても紹介されています。

私はその段階と手術の多さに非常に驚きました。

身体的、精神的に負担がかかるものもあり、信頼できる医療機関かどうかを慎重に選ぶ必要があります。

手術費についても高額になり、順番などによっては保険が適用されない場合もあるそうです。

就職面接などで、ジェンダー・アイデンティティと戸籍を一致させるために手術を受けたいにも関わらず、その高額な手術費がそもそも無いために、セックスワークに従事するトランス当事者の方も少なくないそうです。

マイノリティについて学ぶこと

本書によると、トランスジェンダーの方は、人口の0.4~0.7%という1%にも満たない人数だそうです。

マイノリティの方が生活の様々な場面でこれほど大変な思いをするということは、99%の側にいる自分には想像もつかないことでした。

親の理解を得られない、という事例も良くあるようで、自分を産み、育ててくれる親から自分のアイデンティティへの理解が得られない苦しみは相当なものだろうと感じます。

自分も、これから年齢を重ねるに連れて、何が起こるかわかりませんし、社会的/制度的にマイノリティの立場になることもあると思います。

そうなった時に、多数派だけが生きやすい社会にならないように、これからも様々な立場の方について、まずは理解を深めたいと思いました。

トランスジェンダー入門(集英社新書)

[読書感想]エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 /自己分析の参考になる良書

エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)

エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)

エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)

ドン・リチャード リソ, ラス ハドソン
Amazonの情報を掲載しています


こちらの本を読んでみたら非常に面白かったので、感想を書きたいと思います。

エニアグラムとは?


エニアグラムは、エニアグラム性格論やエニアグラム人格論(英: Enneagram of Personality)として知られています。

この概念は、人間の心理が自己や他者との関係において9つの傾向や戦略を持つことを説明する人格理論です。

エニアグラムは、9つの点が連結した九芒星(9個の角を持つ星型多角形)の形状で特徴を表しています。

一般的には、関連する9つの性格タイプとして理解され、教えられています。

この理論は、1950年代に精神教師のオスカー・イチャソによって提唱され、1970年代に彼の弟子である精神科医のクラウディオ・ナランホが改良し、広まったと考えられています。

面白かった点

冒頭のアンケートで自分の性格のタイプを知れるのは非常に面白かったです。

ちなみに私のタイプは「4」番でした。

タイプを知った後はタイプ毎の解説が書かれています。

陥りやすい悪い傾向や。特徴が発揮されるとこのように活躍できる、など、自分に当てはめると思い当たるフシがかなりあり、なるほどとなりました。

また、初めのタイプ診断は数字で出すのですが、一番近いのは4ですが、次に数値が高いのは5、など、二番手、三番手の性格のタイプもわかるので他のタイプの解説を読むことで複合的に判断することができます。

自分の性格が客観的に言語化されているのを知るのはとても面白いと思いました。

残念だった点

今回私が読んだのは基礎編だったのですが、実践編も発売されています。

原著は英語で、一冊にまとめられているのですが、日本語版は基礎編と実践編で二冊に分けられているということです。

基礎編でエニアグラムのすごさを知った私としては当然、実践編も読みたくなるわけで、「一冊にまとめて欲しい!」という気持ちになりました。

まとめ

本書は自己分析の本としてとても説得力があり、勉強になりました。

タイプ毎の目指す姿なども書かれていて、発展編も読みたくなりました。

就職活動や転職活動にも役立ちそうだと思いました。

自分を知りたい方にオススメです!

エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)

エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)

エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 (海外シリーズ)

ドン・リチャード リソ, ラス ハドソン
Amazonの情報を掲載しています