Audible(オーディブル)を半年間契約している私が、オーディオブックの魅力とイチオシの小説をご紹介します!― 逢坂冬馬、朝井リョウ、川上未映子、早見和真、凪良ゆう、など

Amazonが提供するオーディオブックサービス、Audible(オーディブル)は、本を読みたいけれど時間がない人や移動中に“ながら”で本を楽しみたい人にとって、革命を起こしています。

今回の記事では、Audibleのサブスクリプションを半年間継続している私が、その素晴らしさについてご紹介していきます。

Audibleとは?

Audibleは、プロのナレーターが朗読した本をアプリで聴けるサービスです。移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができ、オフライン再生も可能です。

https://www.audible.co.jp/ep/audiobook?source_code=GPSSRCHALLW0710150001&ipRedirectOverride=true&gclid=Cj0KCQjwqpSwBhClARIsADlZ_Tm_yRqS7UIcq7-MbhGui042uvelO8bpieqLJASt86z2q-OfhGWFQggaAteqEALw_wcB&gclsrc=aw.ds

月会費1500円で聴き放題。初めての方には30日間の無料体験があります。

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Audibleの魅力

ナレーションの魅力

Audibleの最大の魅力は、ナレーションによるストーリーテリングの体験です。プロのナレーターや俳優・声優が物語を生き生きと演じることで、物語がよりリアルで感情的になります。これにより、読者は物語に非常に没入しやすくなります。

多様なジャンルと選択肢

Audibleには、小説、自己啓発書、ビジネス書、歴史書など、さまざまなジャンルの本が豊富に揃っています。さらに、古典文学やベストセラーから、未知の著者の作品まで、多くの選択肢があります。

文芸作品から自己啓発、金融・経済まで、多彩なジャンルの本が揃っています

移動中や家事の合間など、隙間時間に活用できる

Audibleは、通勤やジョギング、家事の合間など、普段の生活の中で手軽に楽しむことができます。本を読む時間がないと感じる人にとって、この便利さは特に魅力的です。

実際に私も、通勤時間、PCでのデザイン作業中、ジムでのトレーニング中、料理や掃除を始めとした家事の最中など、様々な時間でAudibleの物語を楽しんでいます。
通常の本の場合は、買っても読む時間が無かったりする場合、積読になりがちですが、Audibleは耳さえ空いていれば楽しめるので、気になったコンテンツを”ながら”で楽しむことができます。

広告が入らない

耳で楽しむ、という意味ではラジオなども近いですが、ラジオの視聴だと随所に広告が入るのが結構気になっていました。

Audibleは広告が入らないので、集中して聴くことができます。

ダウンロードして読むことができる

携帯端末にダウンロードをして読む(聴く)ことができるので、ネットワークのないオフライン環境でも読書を楽しむことができます。

比較的新しい話題作を楽しめる

本屋大賞受賞作品など、比較的近年の受賞作品がすぐに登録されるので、新しい話題作を読むことができます。

また、映画放映中の作品の原作などもプッシュされているので、オーディブルで原作を聴いて、映画を見ることでより作品を楽しむことができます。

本屋大賞や直木賞・芥川賞受賞作品などが豊富に揃っています

聴覚を使った新しい学びの方法

Audibleは、視覚に頼らずに聴覚を使って情報を取り込むことができるため、新しい学びの方法としても注目されています。通勤中や運動中に学びたいと思っている人にとって、理想的な学習ツールです。

英語を始めとした外国語でナレーションをしている作品を集めたページ。語学の勉強になります

著名人や著名な声優によるナレーション

一部のAudibleには、著名な声優や著名人によるナレーションがあります。彼らの独特の声や表現力によって、物語がさらに深みを増すことがあります。

湊かなえ『未来』こちらの作品は俳優の、のんさんが朗読しています

Audibleの短所

長所はそのまま短所になることが多いのですが、不便を感じる点も書いておきます。

ダウンロードにひと手間かかる

新しい作品をいつでも読みたければ、Wi-Fi環境でダウンロードすることが推奨されます。

忘れて出先でダウンロードをおこなおうとすると、モバイル通信の通信量を結構消費するので、やや煩わしいです。

寝落ちすると読み返すのが大変

電車などで聴いていて、寝落ちしてしまうと、そのまま内容が進んでしまいます。

本と違ってページ数が振られているわけでは無いので、寝る前に読んでいた部分まで戻るのがちょっと大変です。

ナレーションが作品の良さを左右する

本なのでもちろんコンテンツありきではありますが、ナレーションが作品の良さの半分くらいを占めていることも事実です。

例えば、自分が好きな物語であっても、ナレーションが好きな感じでない場合、作品全体の印象が“惜しい”感じになってしまいます。

耳が疲れる

これは、紙や電子の本であればずっと読んでいると目が疲れると思いますが、Audibleも同様で、面白いからと行ってずっと聴いているとやはり耳が疲れてきます。

適度な休憩は必要ですね。

私のAudibleイチオシ作品

私のイチオシ作品をご紹介します。商品リンクはAmazonのボタンをクリックすると商品ページにAudible版のリンクが記載されています。

同志少女よ、敵を撃て|逢坂 冬馬(著)

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て

逢坂 冬馬
2,048円(05/04 21:29時点)
発売日: 2021/11/17
Amazonの情報を掲載しています

第二次大戦中、旧ソ連軍の女性狙撃兵セラフィマと仲間たちの壮絶な戦いを通して、女性にとっての戦争を描く大作。

史実を元にした緊迫感のある内容と、セラフィマの仲間の狙撃兵のキャラクター描写がとても魅力的で引き込まれます。

こちらの記事で詳細な感想を書いています

正欲|朝井リョウ(著)

正欲(新潮文庫)

正欲(新潮文庫)

朝井リョウ
916円(05/04 06:40時点)
発売日: 2023/05/29
Amazonの情報を掲載しています

様々な登場人物の視点を通して、性欲や、性的志向、その正しさとは何か?を問いかける作品。

Audible版はナレーターさんの数も多くて、大作映画を観ているような体験ができます。

初めはそれぞれの登場人物たちは全く関係ないストーリーを歩んでいるように見えるのですが終盤になるにつれてストーリーが絡み合い伏線を回収する様は圧巻です。

こちらの記事で詳細な感想を書いています

黄色い家|川上未映子(著)

黄色い家

黄色い家

川上未映子
2,048円(05/04 09:56時点)
発売日: 2023/02/25
Amazonの情報を掲載しています

事情を抱えながらも共同生活をする女性たちが主役の物語。

女性の貧困問題を、実際に夜の仕事をしていた著者ならではの視点で濃密に描いています。

壮絶な出来事が起きているのですが、どこかユーモアを感じる描写なので、エンターテイメントとしても楽しみながら読めます。

ナレーションも非常に上手です!

こちらの記事で詳細な感想を書いています

店長がバカすぎて|早見和真(著)

店長がバカすぎて (ハルキ文庫)

店長がバカすぎて (ハルキ文庫)

早見和真
683円(05/04 21:29時点)
発売日: 2020/08/18
Amazonの情報を掲載しています

書店で働く主人公が、どこか抜けている店長に振り回されるコメディ作品。

軽快なノリで、ナレーションも明るい声なのでAudible入門に相応しい作品です。

ギャグ多めですが、登場人物達が本や書店への想いを語るシーンは非常にグッときます。

汝、星のごとく|凪良ゆう(著)

汝、星のごとく

汝、星のごとく

凪良ゆう
1,705円(05/04 09:56時点)
発売日: 2022/08/04
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離島生まれの2人の主人公の人生を描いた作品。人気の作家の代表作ともいえる作品です。

主人公達に押し寄せる苦難がとにかく壮絶で、読んでいて胸が苦しくなります。

ただその長い苦しみのストーリーの果てに本のタイトルである「汝、星のごとく」という言葉を回収するシーンは素晴らしいカタルシスがありました。

こちらの記事で詳細な感想を書いています

ザリガニの鳴くところ|ディーリア・オーエンズ(著)

ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV)

ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV)

ディーリア オーエンズ
1,401円(05/04 21:29時点)
発売日: 2023/12/05
Amazonの情報を掲載しています

海外作家による小説は、私はこれまで食わず嫌いなところがあったのですが、Audibleのナレーションだと、隙間時間に物語を楽しむことができました。

アメリカ南部の街で起きた殺人事件。容疑者とされたのは、社会から断絶された「湿地の少女」と呼ばれる女性でした。

ホワイトトラッシュと呼ばれるアメリカ南部の貧困階層に目を向けた物語。

主人公・カイアの置かれた境遇の辛さと、湿地の自然の美しさの対比が感傷に訴える、名作です。

こちらの記事で詳細な感想を書いています

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士|丸山正樹(著)

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

丸山正樹
800円(05/04 23:08時点)
発売日: 2015/08/10
Amazonの情報を掲載しています

聾の方が事件に巻き込まれた際に、法定で手話で通訳をする手話通訳士の物語。

タイトルにもあるデフ・ヴォイスとは聾の方が発する音なのですが、それがAudibleではしっかりと音として聴くことができます。

「聴く読書」であるAudibleの特徴を最大限に発揮した物語です。

手話の世界を知ることもできるので非常に勉強になります。

こちらの記事で詳細な感想を書いています

以上です。

どの作品も非常に面白く、聴き進めることが止まらなくなりました。

Audibleは、本を読む時間がない人々や、新しい学びの方法を探している人々にとって、素晴らしい選択肢です。

ナレーションの魅力や多様な選択肢、隙間時間に活用できる利便性など、さまざまな魅力が詰まっています。ぜひ、Audibleを通じて新しい世界を発見してみてください。

Audibleには30日間の無料体験があります!

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[読書感想]「ヘヴン」川上未映子|凄惨ないじめの物語。クライマックスの展開に作者ならではの斬新さを感じた

黄色い家を読んで以来、川上未映子さんの小説が気になり、どんどん読んでいます。

今回は初期の方の作品「ヘヴン」の感想です。

ヘヴン (講談社文庫)

ヘヴン (講談社文庫)

川上未映子
682円(05/04 12:26時点)
発売日: 2012/05/15
Amazonの情報を掲載しています

今回もAudibleでの読書です。

あらすじ

<わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える<僕>は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。

Amazonより

感想

それぞれ、別の加害者からいじめを受けている男女の中学生が主人公。

主人公たちが受けるいじめの描写がかなり凄惨で、加害者への怒りが湧いてきます。

途中、いくつか伏線?とも思われる内容が出てくるのですが、わりと回答されないまま、謎を残したまま終わったので、読後に「あの伏線どうなったっけ?」と思うこともありました。

しかし、現実の世の中でも気になっても結末が良くわからない出来事など、無数にあるので、全てを気にすることは意味がない、という作者なりのメッセージなのかもしれないと感じました。

最後、加害者への報い方が良くある展開ではなく、この作者ならではの斬新さを感じる展開で「おお!」と思いました。

大人になると、子供の頃は楽しかったな、とか子供の頃に戻りたい。

とか思うこともあるけど、子供には子供なりの残酷な世界があったことを、本作を読んで思い出しました。

満足度

80点/100点満点

後半にいくにつれて展開が気になり、止まりませんでした。

ヘヴン (講談社文庫)

ヘヴン (講談社文庫)

川上未映子
682円(05/04 12:26時点)
発売日: 2012/05/15
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[読書感想]「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬/ソ連の女性狙撃兵を通して描く、戦争の惨禍ーAudible版も大満足の傑作小説!

Audibleで逢坂冬馬さんによる小説「同志少女よ、敵を撃て」を読みました。

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て

逢坂 冬馬
2,048円(05/04 21:29時点)
発売日: 2021/11/17
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こちらの作品は書店などでも平積みされており、話題作ということは以前から知っていたのですが、表紙のイラストとタイトルを見て、

「ライトノベルっぽい内容なのかな?」

と読むのを後回しにしていました。

今回Audibleで読んで、これまで読んでいなかった自分を反省。

とても面白い小説だったので、感想をご紹介します。

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あらすじ

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。
自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。
「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。
母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。
同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。
おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?

Amazonより

面白かった点

キャラクターの魅力

登場するキャラクターが全て、とても魅力的でした。

主人公のソ連軍女性狙撃兵セラフィマ、その師であるイリーナ。
狙撃兵チームのシャルロッタ、アヤ、ヤーナ、オリガ、看護師のターニャなど、味方側はもちろんのこと、宿敵のイェーガー、幼馴染のミハイルなどの男性キャラクターたち。

どのキャラも、完全な正義でも悪でも無く、戦争に翻弄されながらも必死で生きていこうとする姿が非常に生々しく描かれています。

史実に基づいたエピソードとエンタメ性のバランス

戦争の展開の仕方、当時の世界情勢などは史実に基づいて入念に調べて書かれておりリアリティがあります。

それとは対比して、キャラクター同士の日常のやり取りや、戦闘時の心理描写などは、エンターテイメント作品として楽しめる描写になっています。

このリアリティとエンタメ性のバランス感覚が絶妙で、重いだけではなく、かと言って軽過ぎもしない戦争の小説として読み応えのある内容になっています。

戦争の悲惨さ。特に戦時に女性が陥る困難

戦争は誰にとっても悲惨なものですが、今作は主人公のセラフィマが女性狙撃手ということもあり、女性の視点で描いた戦争体験を描いています。

筆舌に尽くしがたい描写もあり、読んでいて苦しくなる場面も多いですが、ぜひ本作を読んでいただきたいです。

ナレーションもGood

Audibleはナレーションも作品の良さにかなり関わってくるのですが、今作はナレーターの方も非常に良かったです。

青木瑠璃子さんという方が一人でナレーションをしているのですが、一人とは思えないくらい演じ分けられていました。

狙撃兵チームの女性たちも、声色で違いがわかります。また、男性キャラクターの声も違和感なく聴けました。

個人的には大満足のナレーションです。

印象に残ったシーン

仲間との別れ

詳しいネタバレはしないつもりですが、戦争の物語で、主人公たちは狙撃兵。

物語の序盤、訓練校でたくさんの仲間が登場した時点で、何人かは戦争で亡くなるんだろうな、、、と思ってしまいます。

そして実際に訪れるその場面。

悲しくも、印象に残ります。

幼馴染との再会と

セラフィマが子供の頃、共に同じイワノフスカヤ村に生まれ育った幼馴染のミハイル。

村の人達に、セラフィマとミハイルは将来結婚するのでは?と言われていたくらい仲が良かった二人が、戦時下で再会し、、、、。

二人の関係は壮絶な展開を迎えます。

宿敵イェーガーとの最後の戦い

本作のラスボスとも言えるドイツ兵、イェーガーとの最後の戦いのシーン、その行方もクライマックスに相応しいものでした。

終わり方も良い

以前の読書感想で、壮大な物語ほど終わり方が難しい、ということを書きましたが、本作はクライマックスから物語のエンディングも無理を感じず、納得できるものでした。

まとめ

ものすごく面白い小説でした!

戦争という、これまで普通に暮らしていた人々が突然人殺しになるという異常な状況を、非常に丁寧に描いています。

先が気になって読むのが止まらないのですが、物語が進むほど、終わりも近づくわけで、
先が気になるけど終わってほしくない、、、!

と思わせられたくらい満足感の高い作品です。

気になった方はぜひ読んでみてください!

満足度

98点/100点満点中

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て

逢坂 冬馬
2,048円(05/04 21:29時点)
発売日: 2021/11/17
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関連書籍

著者が、この作品を書く動機になったと仰っており、作中にも登場するこちらの本も気になっているので今度読んでみたいと思います。

戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ
1,540円(05/04 04:21時点)
発売日: 2016/02/16
Amazonの情報を掲載しています

漫画にもなっています。

戦争は女の顔をしていない 1 (単行本コミックス)

戦争は女の顔をしていない 1 (単行本コミックス)

戦争は女の顔をしていない 1 (単行本コミックス)

小梅 けいと
1,078円(05/03 23:43時点)
発売日: 2020/01/27
Amazonの情報を掲載しています

[読書感想]「汝、星のごとく」凪良 ゆう|閉鎖的な人生を打破しようと足掻く、二人の創作者の物語

凪良 ゆうさんの小説「汝、星のごとく」をAudibleで読みました。
感想をご紹介します。

あらすじ

その愛は、あまりにも切ない。
正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。
本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作。
ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。

Amazon.co.jp: 汝、星のごとく 電子書籍: 凪良ゆう: Kindleストア

エグいバクマン

主人公の一人、櫂は漫画原作者として成功して島を出て東京で暮らします。
その過程で都会やビジネス、出会う人やお金によって変わっていきます。
昔人気だった、漫画家を描いた少年漫画「バクマン」をよりリアルに、救いようがない感じにした作品だと思いました。

バクマン。 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

バクマン。 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

大場つぐみ, 小畑健
460円(05/04 12:26時点)
発売日: 2009/01/05
Amazonの情報を掲載しています

暗い描写が長く続く

二人の主人公、特に暁海の方にはひたすら悲惨な展開が訪れます。
その展開が長いので、真綿でじわじわと首を絞められる感じで、途中は読んでいてかなり重い気持ちになりました

登場人物にヘイトが集まったところでバチが当たる展開

本作はどんな登場人物をも、善としても悪としても描いていないので、良いことが続き、調子に乗っていたキャラクターに対して読者がだんだん嫌な印象になってきたところで天罰のように落とす展開が入ります。

サブキャラに共感

主人公2人と先生は物語上バフがかかってる印象があり、結構ファンタジック(ご都合主義?)とも言える出来事が起こります。
それよりも、暁海と櫂の親や、櫂の相棒の漫画家、編集の人や暁海の刺繍の先生(瞳子さん)などには、わりとリアリティがある感じで、成功や苦難が訪れるので、私はサブキャラクターの方により共感をしました。

物語の終わり方の難しさ

途中まで、衝撃的な展開の連続でかなり物語の風呂敷を広げていくので「この話はどうやって終わるのだろうか?」と不安になるのですが、後半になるにつれて、良い意味でも悪い意味でも物語が収束していくので、最後はうまくまとめた、という印象になりました。
何が正解か、は作者が決めれば良いと思うのですが、物語の終わり方って難しいと感じました。
ですが、「汝、星のごとく」という本作のタイトルを最後に回収するシーンがあるのですが、そこは非常に良くて、鳥肌が立ちました

一番印象に残ったシーン

本作で一番印象に残ったのは、暁海が閉鎖的な島の生活の中で刺繍と出会い、雑誌に掲載されていたパリのメゾンに想いを馳せるシーンです。
私の頭の中に、その情景が浮かんで、アート(作品制作)によって閉鎖的な自分の人生が変わり、世界と繋がっていくような、非常にドラマチックな描写でした。

まとめ

この感想を書いていて思ったのですが、本作は二人の主人公の人生や愛憎を描きながらも、ものづくり「クリエイティブ」について描いているのかもと思いました。
櫂を支える二人の編集者もそれぞれ矜持があってとても魅力的です。
重い物語ですが、創作活動によって世界を広げる、「クリエイティブ」の力を感じさせられました。

満足度

83点/100点満点中

長い物語なので、読後の満足感はすごいです。

汝、星のごとく

汝、星のごとく

凪良ゆう
1,705円(05/04 09:56時点)
発売日: 2022/08/04
Amazonの情報を掲載しています

Header: Rene TittmannによるPixabayからの画像

[読書感想]「サクラサク、サクラチル」辻堂ゆめ(著)|受験、虐待、毒親、ネグレクト…シリアスな人生に抗う2人の高校生を丁寧に描いた青春ミステリー

辻堂ゆめさんの小説「サクラサク、サクラチル」をAudibleで聴きました。

あらすじ

「絶対に東大合格しなきゃ許さない」――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。

Audible版『サクラサク、サクラチル 』 | 辻堂 ゆめ

面白かった点

受験や、毒親、虐待、ネグレクトなどシリアスなテーマを扱っていますが、読後の印象は爽やかで、素敵な青春の物語です。

ボリュームも長すぎず、短すぎず、ちょうど良い感じでした。

高志と星さんが計画する親への〈復讐計画〉が何なのか。また、高志の東大受験の行末や星さんの家庭で起こる事件など、基本のストーリーはシンプルですが、起きる展開が起伏に富んでいて、一気に聴き終えてしまいました。

主人公、高志と星さんの心の距離感、近づきすぎず、離れすぎず、という感覚も絶妙で、物語としての面白さはありつつご都合主義に見えないバランス感も上手いと思いました。

惜しかった点

惜しかった、というわけではないですが、主人公の高志や星さんが受ける虐待の描写が結構リアルで、Audibleだとナレーターさんの上手さも相まって、衝撃度が強いので、読み進めるのが辛い気持ちになる方もいるかもしれません。

まとめ

とにかく、結末の印象が良く、「良い小説を読んだなぁ」と満足感が高かったです。

青春の物語で、気軽に読める小説を探している方にオススメできる作品です。
ドラマやアニメ化したら映えそうな作品だと思いました。

満足度

83点/100点満点中

書籍版

サクラサク、サクラチル Kindle版

サクラサク、サクラチル

サクラサク、サクラチル

辻堂ゆめ
1,722円(05/04 04:21時点)
発売日: 2023/07/26
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